【16】ハグを邪魔されてー可愛いお尻ー

 

 

「ひゃぁっ!

 

冷たいです」

 

「もう1枚、貼ろうか?」

 

「そうですねぇ、お尻の上あたりに2枚貼ってください」

 

「おっけー」

 

うつ伏せになったチャンミンは、ミミに湿布を貼ってもらっていた。

 

下げたパンツから、お尻が少しだけ見えている。

 

(小さなお尻...可愛い)

 

と、いたずら心が湧いてきたミミは、チャンミンのお尻の割れ目を、指でくすぐる。

 

「ひゃあっ!

くすぐったいです」

 

(いつも、私の方がからかわれているばっかりだから、たまにはね)

 

くすくす笑いながら、チャンミンのパンツを引き上げた。

 

「はい。

これくらいでいいでしょう」

 

「はぁ...。

薬効成分が染みわたるのが、よくわかります」

 

「仰向けで寝られる?

座布団をあてがってあげようか?」

 

「はい、お願いします。

それにしても、幸せですねぇ。

3日目にして、やっとでミミさんの隣で寝られます」

 

四つん這いでしか移動できないチャンミンは、今夜は広間で就寝することになってしまった。

 

チャンミンを案じたミミは、自室から布団を運んできて、チャンミンの隣に敷いた。

 

「疲れたでしょ?

お疲れ様」

 

ミミはチャンミンの頭を撫ぜると、常夜灯を残して照明を消した。

 

明日片付ければよいとのことで、広間のテーブルにはラップをかけられた大皿料理が並んだままだ。

 

「何か欲しいものがあったら、言ってね。

『ミミさんが欲しい』とかの冗談は、駄目よ」

 

「分かってますってば」

 

チャンミンは、布団から手を出して、ミミの手を握る。

 

「ミミさん、ごめんなさい」

 

「何が?」

 

チャンミンの謝罪の言葉は、「迷惑をかけてごめんなさい」という意味だととらえたミミは、

 

「謝らなくていいよ。

重労働をお願いした私こそ、ごめんね」

 

と、あやすように繋いだ手を揺すった。

 

「違います。

僕が、ごめんなさいと言ったのは、

今夜はミミさんを抱けないことです。

腰を動かせないんですよね。

上下運動が無理なんです。

あれ、前後運動かな?」

 

「はぁ?」

 

「今夜もミミを抱くんだ」と息巻いていたチャンミンだが、腰に走る激痛にさすがに無理だと諦めた。

 

(残念無念。

泣きそうです)

 

「無理に決まってるじゃないの!」

 

「ミミさんは、我慢できるんですか?」

 

「出来るわよ」

 

「どうしてですか?

僕はめちゃくちゃ我慢してるんです。

苦しいくらい。

女の人って、ムラムラしないんですか?」

 

ミミはため息をついた。

 

(そうだよね、この子は若いから)

 

ミミはチャンミンの方へ、寝返りをうった。

 

チャンミンはミミの方をじっと見つめていた。

 

眉根を寄せて切なそうな表情で、ミミはドキッとする。

 

「女の人だってもちろん、ムラムラすることはあるけど、いいムードにならなければ、わりと平常だよ。

これは、私の場合だし、男の人がどれくらいムラムラするのかは分かんないけどね」

 

「そういうものなんですか、ふうん...」

 

チャンミンはしばらく、天井でぽつんと光る黄色い常夜灯を見上げていたが、口を開いた。

 

「ミミさん...。

何か、お話しましょう。

ゆっくり話もできなかったし」

 

「そうねぇ。

何を話そっか?」

 

「ミミさんの子供の頃の夢ってなんでしたか?」

 

「なんだろねぇ。

いろんなものになりたかったなぁ。

卒業文集を開くとね、毎年なりたいものが違ってて可笑しいの。

チャンミンは?」

 

「内緒です。

秘密を抱えた男って、ミステリアスでしょ?」

 

「ケチ」

 

チャンミンは、ふふふと笑う。

 

「ミミさんは、どれくらいの期間結婚していたんですか?

あ!...言いたくなかったら、いいです」

 

「うーん...」

 

(そうよね。

チャンミンは私の彼氏だもの、隠し事はよくないよね)

 

「5年...くらいかな」

 

「...長いですね」

 

(僕とミミさんは、たったの4か月と16日。

5年だなんて...全然、負けてます...)

 

「チャンミンは彼女いない歴、どれくらいだった?」

 

「えー、そこを聞きますか!?

うーんとですねぇ、2年ちょっとですかね。

ミミさんを好きになった時に、別れましたから」

 

「そっか...」

 

ミミの胸がチクりとした。

 

(そうだよね、こんなにカッコいい男の子がフリーでいるわけないよね。

若くて(当然だけど)、可愛い子だったんだろうなぁ。

やだな、ちょっと悲しくなってきた)

 

さすがに今夜は、チャンミンがミミの布団にもぐりこんでくることはなかった。

 

(この3日間で、これまでお互いに触れていなかった事を、打ち明け合って距離が縮まった気がする。

 

チャンミンの爆弾発言も、内容はともかく、恥ずかしそうに打ち明けた姿が可愛かったな。

 

きちんとしてて、ほわんとしてる子が、あそこまで獣になっちゃうとこも意外だったな)

 

「ねぇ、ミミさん。

怒らないでくださいね」

 

「聞くのが怖いんですけど?」

 

「あのですね。

僕のが、元気になってきました。

ちょっとおさまりがつかないんで...えっと。

僕の上にまたがってくれませんか?」

 

「!!!!」

 

「僕の上に乗ってミミさんが動いてくれれば、出来ます。

僕の腰は使いものになりませんが、あそこは元気ですから。

ほら、よくあるじゃないですか?

足を骨折して入院中の男の人に、セクシーな看護師さんが上に乗って...あっ!」

 

繋いでいた手が、勢いよく振り払われた。

 

「ねぇ?

あなたったら、『そんなこと』しか考えてないの!?

私とエッチすることしか、頭にないんでしょ!?」

 

「......」

 

ミミの押し殺すような低い声に、チャンミンは言葉を失う。

 

ミミの目から涙がぽろぽろとこぼれ出てきた。

 

(口を開けば、下ネタばっかり。

この子ったら、私と『ヤること』しか考えていないわけ?)

 

「なんだか...悲しいよ」

 

ミミの目に涙が光っていることに気付いて、チャンミンは慌てた。

 

「ミミさん...」

 

ミミの近くへ寄ろうとしたが、腰に激痛が走る。

 

「ごめんなさい。

ミミさん、ごめんなさい。

泣かないでください」

 

ミミはくるりと、チャンミンに背を向けてしまった。

 

「誤解しないでくださいね。

『そのこと』ばっかり考えているわけじゃないんですよ。

僕の中に、ジェラシーがあるんでしょうね。

僕はミミさんのことが大好きですけど、言葉や態度だけじゃあ伝えきれない想いがあふれているんです。

でも、それだけじゃ不足してきて、

やっぱり身体でもひとつになりたい、って思うようになってきて。

 

そう願って、当然ですよね?

だって僕らは大人の男と女なんですから。

 

ミミさんの過去に比べたら、僕なんて...って自信がないんです。

言葉や態度で、いっぱい伝える自信はあるんですよ。

 

でも、それだけじゃ不安なんです。

昔の男の人との記憶を塗り替えるには、やっぱり身体を繋げるしかないな、って思ってて。

 

あ、もちろん!

僕は男ですから、スケベなこともいっぱい考えてますよ。

ミミさんを思い浮かべて、ひとりエッチしたこともありますよ」

 

 

チャンミンは、ミミの背中に向かって必死になって言葉を継ぐ。

 

 

「えーっと、つまりですね。

何が言いたいかというと、

 

ミミさんとえっちなことをしたい欲求は、

やりたい盛りばかりじゃない、ってことを分かってもらえたらなぁ、って。

 

僕の言いたいこと、ちゃんと伝わりましたか?」

 

ゆっくりとミミは、チャンミンの方へ向きを変えた。

 

(よかった、もう怖い顔はしていない)

 

 

「ホントに?」

 

「ほんとほんと」

 

ミミは手を伸ばして、チャンミンの手を握った。

 

「私のことを考えて、ひとりエッチしたって言ったわよね?

どんな破廉恥なことを、想像の中でさせてたわけ?」

 

 

「ぐふふふ。

内緒です」

 

「怖いなぁ」

 

 

「ミミさんの裸...綺麗でしたよ」

 

「ホントに?」

 

「ほんとほんと。

僕の想像通りでした」

 

「若くてピチピチした身体じゃなくて、ゴメンね」

 

 

「ミミさん!

そういうことを言わないでください!」

 

 

チャンミンの鋭い声に、ミミはビクリとする。

 

 

「ねえ、チャンミン。

私の方だって不安なんだよ。

年甲斐もなく、チャンミンみたいな若い子に夢中になって。

 

チャンミンは、カッコいい男の子だから、いっぱいモテるんだろうなって。

 

チャンミンと同じくらいの年の、可愛い子の方が、あなたには似合うんだろうなって。

 

年の差が私を苦しめているのは、そういうことなの。

 

チャンミンには分からないだろうなぁ。

 

あなたは年を重ねて、どんどん素敵になっていくのに、

 

私の方は、1年ごとに古びていくんだよ。

 

男の人と女の人との違いは、そういうことなのよ」

 

チャンミンは顔をしかめながら、じりっとミミの方へにじり寄ってきた。

 

 

「僕はまだまだですね。

 

ミミさんが、どうしてこうまで年の差にこだわるのか、正直、今の僕には理解できないんです。

ミミさんの今の話を聞いても、僕には全然分かんないんです。

 

僕は、『今の』ミミさんが好きなのに。

僕と同い年のミミさんなんて、全然魅力的じゃないです。

 

あ!

そんなことないか。

同い年のミミさんは、それはそれで素敵でしょうね...いてて」

 

チャンミンは、もっとミミの側へにじりよってきた。

 

ミミも布団から出て、チャンミンの枕元に座った。

 

 

「ミミさん」

 

ミミを見上げるチャンミンの目が潤んで光っていた。

 

「今も...

前の旦那さんのことを、思い出すこと...ありますか?」

 

布団からすっかり這い出たチャンミンは、ミミの太ももにしがみついた。

 

「思い出しますか?」

 

「やだな。

今は、チャンミンのことしか考えてないよ」

 

ミミはチャンミンの頭を撫ぜた。

 

「ホントに?」

 

「ほんとほんと」

 

チャンミンの丸い後頭部を、何度も何度も撫ぜた。

 

「よかったです」

 

(僕もちょっとだけ泣きそうでしたよ)

 

「さあ、もう寝ましょ?

明日は帰る日だからね」

 

「もうちょっと、こうしていたいです」

 

「チャンミンに膝枕してたら、私が寝れないじゃない」

 

「えー。

じゃあ、僕のお布団で寝てください」

 

「駄目。

腰が痛いんでしょ。

窮屈な状態で寝たら、よくないよ」

 

「嫌です」

 

チャンミンはミミの太ももに、ぎゅうっとしがみついた。

 

「仕方がないなぁ」

 

ミミは苦笑しながらチャンミンの隣に横になると、チャンミンの胸に頭を預けた。

 

「僕が腕枕してあげますね。

夢だったんです」

 

チャンミンは片腕でミミの頭を包み込むと、ふふふと満足そうに笑ったのだった。

 

 

 

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