Lesson2ー僕とユノの習い事ー

 

突然の訪問者にフリーズする全裸の男2人。

 

チャンミンはユノの下から抜けだすと、猛ダッシュで玄関からユノのスニーカーを取って引き返してきた。

 

(タマちゃんに、僕とユノがいちゃこらしてたのをバレるわけにはいかない!)

 

「チャンミーン!

うんこ中か?」

 

「タ、タマちゃん!

ちょっと待ってて!」

 

玄関ドアに向かって声をかけると、ポカンとしているユノにベッド下に散らばった服を押しつけた。

 

「ユノ!

窓から外へ出て!」

 

「はぁ?」

 

「ユノ!」

 

「なんで俺が逃げなくちゃいけないんだよ!?」

 

チャンミンの部屋は1階だが、窓の外は人通りが少ないとはいえ道路に面している。

 

ぐいぐいと背中を押すチャンミンに、声を殺して怒鳴りつける。

 

「俺はお前の『間男』じゃない!」

 

ユノは、「恋人なんだぞ」と心の中で叫ぶ。

 

「タマちゃんは知らないんだよ。

僕とユノがその...できてるって」

 

「俺のダチだって、誰一人チャンミンとのことなんか知らないんだぞ?」

 

「タマちゃんに知られたら面倒なことになるんだからぁ!」

 

「チャンミーン!

アイスを買ってきたんだ。

溶けるから早くしろ!」

 

鋭いノックの音。

 

「わ、わかった!」と返事をしたチャンミンは、もたもたとショーツを履くユノに無理やりスニーカーを持たせた。

 

「おい!

パンツが履けないじゃないか!」

 

「早く!

ユノ!」

 

慌てているせいでなかなかショーツに足を通せずにいるユノに、しびれをきらしたチャンミンは、

 

「こっち!

この中にいて!」

 

全裸のユノの手を引っ張って押し入れの中に押し込むと、ぴしゃっと力いっぱい戸を閉めた。

 

「おい!」

 

ガタガタと戸を揺らすユノに「我慢しててね」となだめるように声をかけ、チャンミンは下着を探す。

 

(パンツ...パンツ...僕のパンツはどこだ?)

 

「あった!」

 

拾い上げたショーツは赤いラインの入ったもので、ユノのもの。

 

(ま、いっか)

 

ショーツを履き勢いよくスウェットパンツを引きあげると、玄関に走っていきガチャリと鍵を外した。

 

「お待たせ...はあはあ」

 

ドアの向こうには、チャンミンの唯一の友人タマちゃんが、不貞腐れた表情で立っていた。

 

 


 

 

一方、真っ暗な押し入れに押し込められたユノ。

 

(チャンミンの馬鹿野郎!

『間男』扱いしやがって!

俺はチャンミンの『恋人』なんだぞ!

タマちゃんとやらを追い返せばいいのに!

この際、カミングアウトすればいいのに!

チャンミンは俺たちの関係を、恥ずかしいと思っているんだ)

 

ユノは膝の上に組んだ腕に顔を埋めた。

 

(男友達が遊びに来てるって、普通にしていればいいものを。

俺を押し入れに隠すなんて...)

 

チャンミンの慌てふためく姿に、少しばかり傷ついていたユノだった。

 

(こそこそする関係なんて、やっぱり御免だ!

チャンミンには悪いが、俺はここを出てやるからな)

 

押し入れを飛び出すことに決めたユノは、手探りでショーツを探すが...ない。

 

チャンミンが押しつけたものは、Tシャツが...2枚。

 

ボトムスは...ない。

 

(ノーパンかよ...勘弁してくれよ...)

 

 


 

 

「アイス、ありがとう。

食べようっか?」

 

床にあぐらをかいたタマちゃんは鼻をくんくんさせながら、コーン茶をグラスに注ぐチャンミンの背中に視線を移す。

 

(こんなにいい男なのに、ちょっと前まで『童貞』だったんだよなぁ。

残念ながらチャンミンは、私のタイプじゃないから全然そそられないんだよなぁ)

 

「あんたさ、いい身体を見せつけたいのは分かるけど...服着なよ」

 

そう指摘されてチャンミンは、顔を赤くする。

 

「う、うん」

 

見回してTシャツを探すチャンミン。

 

(ユノのだ!)

 

くしゃりと落ちているダメージ・デニムをさりげなく拾い上げた。

 

(僕のTシャツは...どこだ?)

 

チャンミンは時間を巻き戻して、Tシャツの在り処を探る。

 

(中華料理屋から戻った時には、僕らはすっかり燃え上がっていて、ドアを開けるなりディープキスが始まって...。

 

キスしながら互いのジッパーを下げて...ユノのおちんちんは元気いっぱいで...僕のも痛いくらい勃っていて...。

 

ユノのおちんちんを咥えようとしたらよろけて、僕は仰向けに転んじゃって...そしたらユノが覆いかぶさってきて...。

 

スウェットパンツをあっという間に脱がされたら、僕のパンツがぐちょぐちょに濡れてるのがバレて、ユノに『チャンミンはエッチだなぁ』って笑われて...。

 

じゅっとパンツ越しに吸われて、僕は魚みたいに跳ねちゃって...『チャンミンの味がする』って言われて、恥ずかしくって...。

 

ユノはTシャツを脱いで...赤いTシャツ、僕もTシャツを脱いで...黒いTシャツ...。

 

2枚まとめて部屋の方に投げたんだった...さっきユノに2枚とも渡したんだ、きっと!

 

んでもって、ベッドまでたどり着かないうちに、エッチが始まっちゃって(未挿入のやつ)。

 

僕の先走りがすごくって、『ローションなんていらないな』って、ユノがおちんちんを2本まとめてしごいて...はぁ...気持ちよかった...)

 

「ぐふふふ」

 

「チャンミン!

笑い方がキモい!」

 

「ごめん。

...ん?」

 

ベッドと壁の隙間に黒いものを発見したチャンミンは、乱れ切ったシーツのしわを伸ばすフリをして手繰り寄せた。

 

(これは...僕のパンツ!)

 

チャンミンは反射的に押し入れの戸を見る。

 

(ユノのパンツは僕が履いてるし...。

ってことは、押し入れの中のユノはフルチンじゃないか!

ごめん、ユノ!)

 

手の中の下着を、さっとタオルケットの中に隠した。

 

(押し入れの中にTシャツの着替えがあるけど、戸を開けたらユノが転がり出てくるし...)

 

「暑いからさ、このままでいるよ」

 

「ふぅん...、ま、いいけどさ」

 

溶けかかったバニラアイスを美味しそうに舐めているタマちゃんに、チャンミンは問う。

 

「で?」

 

「『で?』って、何が『で?』だよ。

私が来て迷惑だったのか?」

 

タマちゃんはムッとしている。

 

「そういう意味じゃなくて

何の用事なのかなぁ、って」

 

(タマちゃんが突然やってくるのは今に始まったことじゃないけど、今日は大迷惑なんだよ)

 

(あーーーー!)

 

タマちゃんが座った後ろに潤滑ローションのピンクのボトルが目に入り、すかさずチャンミンは足を繰り出してベッド下に蹴り飛ばす。

 

(危なかったー)

 

「チャンミン...正直に言え。

私に隠し事をしようたって、100年早いんだ」

 

「隠し事って...何のこと?」

 

すいと目を反らすチャンミンに、タマちゃんは飛び掛かって首を絞める真似をした。

 

「苦しいぃ!」

 

「この部屋、臭いんだよ!」

 

タマちゃんはくんくんと鼻を鳴らし、ぐるりと部屋を見渡す。

 

「そりゃあ男の部屋だもの、臭いのは仕方ないさ」

 

「男くさいのとは違う...栗の花のような匂い...これは...」

 

(どきぃ)

 

タマちゃんはチャンミンの首から手を離すと、口元をにやりと歪ませた。

 

「チャンミンの乳首...腫れてない?

真っ赤だよ」

 

「ええぇっ!!!」

 

チャンミンは手をクロスさせて、両胸の先端を隠す。

 

(ユノの馬鹿馬鹿!

僕が乳首好きだって知ってて、しつこく攻めるからぁ!)

 

タマちゃんはすっくと立ちあがった。

 

「帰る!」

 

「ええっ!?」

 

「エッチの最中だったんだろ?

邪魔したな」

 

「ち、違っ!」

 

チャンミンの恋人が隠れているのだろうと予想したタマちゃんは、浴室に向かって声をかけた。

 

「私はチャンミンの友達に過ぎないからな!

デブ専だから、こーんな細っこい男は好みじゃないわけ。

ってことで、安心しておくれ」

 

「......」

 

「チャンミンよ...やりたい盛りなんだな。

ゴミ箱、ティッシュでいっぱいじゃないか」

 

「!」

 

「それに...」

 

タマちゃんはチャンミンを手招きすると、耳元で囁いた。

 

「そのうち道具でも使う勢いだな。

覚えたてのくせに、ローションなんか使っちゃって...。

しかも...あれ、アナル用だろ?」

 

(!!!!!!)

 

タマちゃんはニヤニヤ顔で、首まで真っ赤になったチャンミンの肩をポンポンと叩いた。

 

「じゃあな」

 

 


 

タマちゃんの姿が消えるまで、玄関ドアから顔を出して見届けたチャンミンは、猛スピードで部屋の中に引き返す。

 

(ユノを早く出してあげないと!)

 

押し入れの向こうは、しーんとしている。

 

「ユノ!!!」

 

押し入れの戸を開けようとしたが、びくともしない。

 

(そうだった!

この戸は閉めたら最後、開けられないんだった!)

 

ガタガタと揺すってみるが、びくともしない。

 

ユノの方も、とっかかりが何もないべニア板製のドアの内側からは何も出来ない。

 

(どうしよう!)

 

取っ手にかけた指が真っ白になるまで渾身の力を振り絞って引いてみるが、数センチも開いてくれない。

 

「ここから出られないのか!?」

 

「だ、大丈夫。

僕がなんとかするから!」

 

「チャンミンがなんとか出来るのかよ...大いに疑わしい」と、押し入れの暗闇に閉じ込められたユノは思う。

 

(それにしても...暑い!)

 

ユノは額を伝う汗を、手の甲で拭った。

 

冬用布団が背中に密着していて、余計に暑苦しい。

 

柱や框のひずみが上下から戸をぎっちりと押さえ込んでいる。

 

「チャンミン!

早く俺を出せって!」

 

(どうしよう!)

 

ユノが中から戸を叩く音に、チャンミンは焦るばかりだ。

 

「暑い!

ミイラになっちまう!」

 

チャンミンは部屋の中を行ったり来たりしていたが、開かずの扉と化した戸を開けるいいアイデアが全く浮かんでこないのだ。

 

一方のユノは、上はTシャツ、身につけられる物のない下はむき出しだ。

 

わずか1センチほど開いた隙間から、光が差し込んでいる。

 

チャンミンの下着を借りようと探ってみたが、衣裳ケースはあれど戸がつっかえて引き出せないのだ。

 

(なんて恥ずかしい恰好をしているんだ、俺は。

このままチャンミンちの押し入れの住人になっちまうのか!?)

 

「ん?」

 

隙間から細長いものが差し込まれた。

 

「お茶だよ。

脱水症状おこしちゃうから」

 

「......」

 

ユノは無言でストローをくわえて、外でチャンミンが持つグラスの中身を飲んだ。

 

(こういうところは気がきくんだよなぁ)

 

「えーっとね、おしっこはここでしてね」

 

隙間から渡されたのはビニール袋。

 

「ふざけんな!?」

 

ユノはチャンミンを怒鳴りつける。

 

「俺の世話はいいから、早くなんとかしてくれ!」

 

「大きな声を出さないでよ。

ますますパニックになっちゃうじゃないか」

 

「パニック状態なのは、俺の方!

そんなことより、パンツを寄こせ!」

 

「んー、それは出来ない」

 

「なんで?」

 

「ユノのパンツ、今僕が履いてるから」

 

「はぁ?」

 

「それに僕のパンツはその...濡れてるし」

 

「じゃあ、チャンミンが脱げばいいじゃん。

俺のパンツを返してくれ!」

 

「...わかった」

 

ユノは戸の隙間から黒い布切れを受け取ると、極狭の空間と折りたたまれた長い脚に苦労しながら身につけた。

 

「俺はもう待てない。

そこをどいていろよ!」

 

「え...ユノ...何するの?」

 

「ぶち破る」

 

ユノは戸に向かって座りなおし、胸に付くほど膝を引き寄せた。

 

床についた両手を踏ん張ると、勢いよくキックを繰り出した。

 

バリっと鈍い音がして、薄いべニア板にひびが入った。

 

「やった...!」

 

膝を引き寄せ、次は両端の桟を目がけてかかとで蹴る。

 

「あと少し」

 

「ユノ、頑張れ!」

 

桟が折れたことで、万力のように挟まれていた戸がガタついてきた。

 

チャンミンは上下に戸を揺すりながら引くと、ごろりとユノが手前に転がり出てきた。

 

「ユノ!」

 

駆け寄ったチャンミンは、ユノの肩を抱く。

 

「ゴメン...ユノ...ゴメンね」

 

「......」

 

むくりと起き上がったユノは、片膝を立てた姿勢でチャンミンに応えず俯いている。

 

(怒ってる...!

...でも、当然か。

タマちゃんを追い返せばよかったのに、部屋に入れようとしたのは僕だ。

それだけじゃなく、ユノを隠そうとした。

ユノに酷いことをしてしまった)

 

チャンミンは正座をした腿の上の両手をぎゅっと握った。

 

「チャンミン」

 

「はい...」

 

「許して欲しい?」

 

「はい...ごめんなさい」

 

「俺の言うこと、何でもきくか?」

 

「...はい」

 

目を真っ赤にしてすがるように見つめるチャンミンに、ユノはあっさり許したくなったが。

 

(うるうるさせちゃって。

可愛いんだよなぁ、こういうところが。

すまん、チャンミン...お前の顔を見てると意地悪がしたくなる)

 

 

「アナルを捧げるのは、チャンミンに決定!」

 

「えええーー!!」

 

「俺をこんな目に合わせたんだぞ?」

 

「う...」

 

「それに...チャンミン、また裸になっちゃって」

 

「わっ!」

 

チャンミンは両手で股間を隠す。

 

それもそのはず、ユノに下着を返すためスウェットパンツもショーツも脱いだチャンミンは当然、全裸なわけで。

 

「誘ってるとしか思えないよ」

 

「これは!

パンツを返さなくっちゃって...。

Tシャツはユノに渡しちゃったし...」

 

「チャンミンったら、また股間を濡らしちゃってさ。

返してもらった俺のパンツ、チャンミンの我慢汁でべたべたなわけ(嘘だけど)」

 

「......」

 

「俺はモーレツに、怒ってるわけ」

 

「です...よね」

 

首まで真っ赤になったチャンミンを、ユノは勢いよく押し倒した。

 

「観念しろよ?」

 

「...はい」

 

床についたユノの両手の間で、チャンミンはこくりと頷いたのであった。

 

 

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