【10】ハグを邪魔されてーカミングアウトー

 

 

「まずはミミさん、ここに座ってください」

 

「そこに?」

 

チャンミンは、太ももをポンポンと叩いた。

 

「前向き?後ろ向き?」

 

ミミはクスクス笑って言った。

 

「今日は前向きでお願いします」

 

ミミはチャンミンの膝にまたがると、彼の両肩に手をのせた。

 

(えっち過ぎて、照れます)

 

耳も首も真っ赤になったチャンミンは、ミミの腰を支える。

 

「ずっとこうしたかったです」

 

「チャンミン...」

 

ミミはチャンミンの丸い後頭部の髪をすく。

 

(言動も見た目も幼くて。

礼儀正しくて、ちょっとえっちで。

大きな体をしてるのに、照れ屋で。

私の可愛い、可愛い彼氏)

 

ミミの胸はきゅっとして、とにかくチャンミンのことが愛おしくてたまらなくなる。

 

「話って?」

 

「僕の話を聞いたら、

ミミさん、幻滅しちゃうかも、です」

 

「幻滅?」

 

「はい、引いちゃうかも、です」

 

「聞くのが、怖いんだけど」

 

(何だろう?

まさか、『僕もバツイチです』とか、『結婚してるんです』...とか?

『子供がいるんです』とか...!?)

 

チャンミンの言葉を待つミミの口の中が、からからになってくる。

 

「あのですね」

 

チャンミンは、こほんと咳ばらいをする。

 

「そんなに怖い顔をしないでください」

 

「ねえ、チャンミン?

今じゃなくちゃいけないの?」

 

「はい、そうです。

えーっと、僕はですね、僕は...」

 

「チャンミンが...どうしたの?」

 

「爆弾発言をしますよ」

 

(バクダンハツゲン!?)

 

「......」

 

「僕は...」

 

チャンミンは、いったん言葉を切ると、うつむいていた顔を上げた。

 

 

「...『経験』がないんです」

 

「経験?」

 

「はい、そうです」

 

「え...」

 

 

「僕は...ど...う...てい、なんです...」

 

 

チャンミンの声は、消え入りそうだ。

 

 

「サクランボなんです...。

言葉の使い方、合ってますよね?」

 

 

「......」

 

 

(どうしよう...!

ミミさんが考え込んでる)

 

 

「...という訳で、

ミミさんが、僕にとっての『初めての女』になるんです」

 

「......」

 

黙ってしまったミミを、チャンミンは泣き出しそうな顔で見つめている。

 

 

(いつも大胆なことばかり言うから、

てっきり『済』だと思ってたけど、

正真正銘の『新品』だったんだ...)

 

 

「幻滅...しましたか?」

 

「......」

 

 

「かっこ悪いですよね」

 

「......」

 

 

「気持ち悪いですよね」

 

「......」

 

 

「ミミさん、何か言ってください...」

 

「やだなぁ、チャンミン!」

 

ミミはチャンミンの胸をドンと突いた。

 

そのはずみで、チャンミンはベッドに仰向けで倒れてしまう。

 

「!」

 

(ミミさん...いきなり、押し倒しますか!)

 

「可愛い!」

 

仰向けになったチャンミンに飛びつくと、すりすりと頬ずりした。

 

「可愛いんだから!」

 

ミミのリアクションに驚いたチャンミンは、ミミにされるがままだ。

 

「ミ、ミミさん!」

 

「言いたいことって、このこと?」

 

「はい、そうです

一世一代のカミングアウトでした」

 

「ぎゅー」

 

「ミミさん、苦しいです。

話はまだ途中です!」

 

チャンミンは、しがみつくミミの肩を押して、真下からミミを真っ直ぐ見上げた。

 

「だからですね、

ここからが本題ですよ。

 

...うまく出来ないかもしれないってことです」

 

 

「そんなこと...気にしなくていいのに...」

 

 

(チャンミンの目が潤んでる。

勇気がたくさん必要だったんだね。

私が引いちゃうかもって、不安でたまらなかったんだね)

 

「気にしますよ!

ですので...そのぉ...、

ミミさんの経験で...リードして欲しいんです」

 

 

「は?」

 

(困ったな。

私だって、そんなに経験があるわけじゃないのに)

 

 

「このことを、最初に耳に入れておこうと思ったわけです」

 

「うん、わかったよ」

 

 

ミミはチャンミンに身を伏せようとすると、

 

「それから、あともうひとつ」

 

再び、チャンミンに引きはがされる。

 

「まだあるの?」

 

「はい、もうひとつあるんです。

 

コトを成す上で、たいへん重要なことです」

 

 

チャンミンは人差し指をピンと立てた。

 

「大げさねぇ」

 

 

「実は...装着テストを未だしていないんです」

 

「『装着テスト』?」

 

「はい」

 

チャンミンはポケットに入れた箱を取り出して、ミミの前で振ってみせる。

 

「これです」

 

「!」

 

「うまくいかなかったら、

そこはその...ミミさんの経験を活かして、手伝っていただきたくて...」

 

「......」

 

(なんなの、この子は!

そんなことまで、赤裸々に言っちゃうわけ!?

天然にもほどがあるんですけど!?)

 

固まってしまったミミの表情を見て、チャンミンはしゅんとしてしまう。

 

「駄目です...よね?」

 

ミミは満面の笑みで、首を振った。

 

(この子ったら、

なんて可愛くて、面白い子なんだろう)

 

チャンミンは、ホッと胸をなでおろしたのであった。

 

 

 

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