2.屋上の恋人未満-My Destiny-

 

日が暮れようとしていた。

 

屋上から眺める景色は、白っぽく乾燥している。

どこまでも平坦な土地で、地平線近くに木々、遠くに山が見える。

見渡す限りでは、今、自分たちがいる建物の他には、人工物はない。

ときおり強く吹きつける風が、ララのおくれ毛を乱した。

ララは、ボーイフレンドの肩に頭を預け、

​コンクリートの床に、膝を抱えて座っていた。

「ねぇ、テセ。

​仕事辞めたいな...」

テセの肩はたくましくて、

ララの頭も体重も、頼もしく受け止めてくれる。

「嫌なこと、あったのか?」

「うーん、嫌なことはないんだけど、

退屈、というか、

毎日、同じことの繰り返し、っていうか...」

ララは、頭をさらにテセの肩に押し付ける。

「はぁ...」

「ため息つくなって」

テセは、ララの頭をぐしゃぐしゃとなでる。

「あ~、もう!

せっかくセットしたのに、ぐちゃぐちゃになったじゃない」

ララはふくれて、テセを睨む。

テセは、意志の強そうな真っすぐな眉、

濃い藍色の瞳と、枯れ草色の髪、

たくましい肉体を持ったハンサムな男性だ。

数年一緒にいるうち、

単なる同僚だった関係から、

お互い異性として意識するようになって、

恋人未満な関係性に発展しかけている段階だった。

​テセは、優しい声で、

「何もないのが、平和の証拠だよ。

ハプニング続きもたまんないだろ?」

「そうだけど...。

昨日も明日も、1年前も今日も、

​区別がつかないくらい、変わりばえがしないんだもん」

「だからって仕事辞めたりしたら、

ここにいられなくなるぞ?」

「そう・・・だよね」

ララは、ヘアクリップを外して、ぐるぐるにまとめていた髪をほどいた。

ララの肩と背中は、ウェーブがかった長い髪で覆われた。

「セットするのが大変なのよ、私の髪は!」

テセは、ララの髪からふわっと流れた甘い香りにひかれるように、

そっと、ララの方へ顔を寄せた。

10センチまでに接近した、テセの彫りの深い顔。

「!」

ララは、一瞬、驚きの表情を見せたが、

(そろそろ、1ステップ進んでもいい頃ね...)

まぶたを閉じて、

テセのキスを受け入れようとした...。