6.要塞

 

ララはテセと共に、「要塞」に戻った。

 

二人が居るこの建物を、住民は「要塞」と呼んでいる。

約1キロメートルの四方を、ぐるりと連続した建造物が囲んでいる。

 

ララとテセが居た屋上はここにあたる。

 

ロ型の中には、正方形の巨大なビルがそびえており、都市が備えるべく機能が、ここに集中している。

「要塞」と呼ばれる理由は、四角く囲むロ型の建物が、まるで塀のように見えること、

入り口が一つしかないこと、その入り口が、深夜0時になると、分厚く頑丈なシャッターで閉ざされるからだ。

 

シャッターが開くのは、翌朝5時だ。

 

それまでの5時間の間、誰も侵入できないし、​同時に、居住者の誰も外出は許されない。


 

要塞に戻るバギーカーに乗りあわせていた間、ララは黙りこくっていた。

 

心配そうにテセは、何度もララの様子をうかがっていたが、

ララは、深く何かを考え込んでいるようで、じっと前を見据えているばかりだった。

(さっきの光景にショックを受けているのだろう)

テセは、ララの沈黙の理由を判断していた。

 

ララの目に、ストレッチャーに載せられた瀕死の青年が焼き付いて離れなかった。

あんなに酷い怪我をして、生きていること自体が信じられなかったし、

あんなに酷い怪我を負うこと自体が、ほとんどない世の中だ。

(きっと彼は助かるだろう。

ここには医療設備も技術も十分そろっているから)

瀕死の青年は、「要塞」に運ばれていた。


ララとテセは、居住棟のエレベーターホールにいた。

髪にも服にも、煙の臭いが染みついている。

 

これまでの沈黙を破るかのように、テセはララを見て笑う。

 

「お前、真っ黒だぞ」

 

ララもテセの顔を見て笑う。

 

「テセだって、真っ黒じゃない」

 

「何時間もあそこにいたら、仕方ないさ」

顔に付いた煤を手で払うララの様子を、テセは微笑を浮かべて見る。

手を伸ばして、そっとララの頬に触れる。

 

「ララ...」

ララは、テセの指の感触と、真面目な顔と眼差しから、数時間前の、屋上での出来事を思い出した。

​(忘れてた!そういう雰囲気だったわね、あの時は)

(こ、これは...キス...)

「あっ...」

テセは、ララの唇に自分の唇を軽く押し付けると、

​「じゃあ、おやすみ!」

立ち尽くすララを残して、テセはスタスタ立ち去ってしまった。

 

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