7.テセ

 

(やっと、ララにキスできた!)

テセは、真っ赤になった顔をララに見せたくなくて、ララを残して立ち去ってしまった。

彼なりに、勇気を振り絞った行動だった。

(あんな事故現場を目撃してきた後に、

全くふさわしくない行為だったかもしれないが、

もう待てなかった)

テセは、この「要塞」の中では1、2を争うハンサムさと、がっちりとしたスタイルにプラスして、根の優しさと、気配りの細やかさもあって、女性たちに人気のある人物だ。

2年前に、ララと同じ部署に配属されて以来、テセは、彼女の天真爛漫なところや、仕事中の生真面目な表情と、パッと花開いたかのような笑顔のまぶしさとのギャップにやられてしまった。

(おっちょこちょいで、危なっかしい点も、彼女をほっとけない)

まずは友人から。

テセは少しずつ、ゆっくりと、ララとの距離をちぢめていって、ようやく、異性として意識し合う関係性まで、たどり着いたところだった。

(...ところで、あのパイロットは、助かったんだろうか?)

治療が行われているでだろう中央棟の方を、テセは窓越しに見やった。

(若かったな...彼は...)​

 


エレベーターホールに残されて私は、

気持ちをしゃんとさせるためにも、「はぁ」と深く息を吐く。

(テセと...キスしたのね...私)

意外にも、冷静な自分がいる。

​全然、ロマンチックな気分じゃなかった。

それどころじゃなかったから。

あの瀕死の青年のことで、頭がいっぱいだった。

平穏な毎日、簡単に予測がつく毎日。

この「要塞」の中は、とても安全で、豊かで、平和だ。​

死からほど遠い世界。

そんな日々に退屈しきっていて、ついテセに愚痴を言ってしまっていたところの、この事件だ。

あんなに大怪我をしている人間なんて、初めて見た。

あんなにたくさんの血液を見たのも、初めてだ。

わずかに開いた口元が理知的だった。

(しっかり顔を見てみたい!)

私は、自室で顔を洗って煤を落とすと、再びエレベーターホールに戻り、

3階まで上がって、中央棟に繋がる渡り廊下を走った。

医療エリアは2階。

多分入れないだろうけど、​私は、あの人が無事なのかどうか、確かめたい。

不謹慎だけど、

あの人の顔をしっかり見てみたい​。

​気になって仕方ない自分が、不思議だ。

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