10.しなやかな腕

 

~ララ~

 

本来の仕事が休みの日、初めて昼間のシフトにつかせてもらって、私はご機嫌だった。

このお手伝いも、今日を含めてあと3日だ。

「今度こそ、目を覚ましているかも!」という期待大でワクワクだ。

「清拭の手順を教えて下さい」と頼み込んで、看護助手(本職の)にくっついて、

こうして私は、彼の治療室にいるのだった。

(なんだ、寝ているじゃない)

がっかりしている私をよそに、

「さあ、始めるわね」

小声で看護助手のナミさんは、彼にかけられていた毛布をそっとめくって、上半身をあらわにした。

(まぶしい、まぶし過ぎる!)

しなやかな身体を白いシーツの上に横たえて、不規則な息遣い彼は、とても、とてもセクシーだった。

「こればっかりは、ロボットに任せられないからねぇ」

​ナミさんは、蒸しタオルをちょうどよい温度まで冷まして、力なくだらんとした彼の腕を手に取る。

手の甲から順に、下から上へ脇へ向かって、手際よくタオルを滑らす。

「寝たきりだから、こうやって身体を拭いてあげることも、多少でも身体を動かしてあげられるし、褥瘡(じょくそう)も予防できるのよ」

私は、ナミさんの手業と手順を頭に叩き込みつつ、彼に見惚れていた。

テセの発達した筋肉で太い腕と比べて、ほっそりしているけど、その腕は筋肉がしっかりついていてしなやかだった。

拭くタオルが冷めたら、温かいタオルに交換して、二の腕から脇に取り掛かる。

きれいについた筋肉に沿ってゆっくりと、優しく、丁寧に。

私の喉がごくりとなる。

「はい、もう片方はあなたがやってみて」

「は、はい!」

ナミさんは、私の背中を押してベッド脇に立たせると、タオルを手渡した。

ベッドは壁際につけた配置だったから、右腕は、眠る彼の上にかがまないと届かない。

ベッドの縁をてこにして、なるべくベッドを揺らさないよう気をつけた。

さらに、骨折していてギプスをしていて、肩も脱臼しており、分厚くバンドで固定されている。

私が拭くのは、手首から下だけ。

(ちょっと残念だけど)

優しく彼の手をとって、手の甲と手の平を、やさしく拭う。

(大きな手ね)

事故直後、焼け焦げたグローブから現われた、ほっそりと長い指を思い出す。

腕が終えたので、ナミさんは上半身を清拭を始めた。

ほっそりとしているけど、つくべきところには、きちんと筋肉がついた無駄のない身体つきだ。

(ほんとに、きれいな人)

私はますますドキドキしてしまう。

テセはもっと筋肉質で、胸は分厚くて、今ここで眠っている彼より多分、背は高いと思う。

(私ったら、何テセと比べてるのよ!)

私は、足首から下を任されていた。

(いいなぁ、私も上がよかったのに...)

突然、彼のひざ下がビクッとはねた。

「わっ!」

「こらっ!

患者さんが火傷するでしょ!」

慌てて、彼の脛(すね)からタオルを取り上げる。

「すみません」

彼に見惚れて、タオルを冷まさずにいたらしい。

(あせった~)

「しょうがない子ねぇ。

ほら、後はあなたがやってね。

目がハートになってるんだから、サービスタイムよ。

顔を拭いてあげてね、冷ましてからよ」

ナミさんは、私の背中をバンバン叩いて部屋を出て行ってしまった。

(サービスタイムだわ、ホント!)

 

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