11.女神の二の腕

 

~チャンミン~

 

薄い青色の柔らかそうな軽そうな布地が、ゆらゆら揺れている。

白くなめらかで、ふっくらとした二の腕が、僕の枕もとでゆっくりと動いていた。

首をわずかに傾けるので精いっぱいの僕の視界は狭く、「そのひと」の顔を確認することができない。

うっすらと目を開けていたけれど、彼女は気づいていない。

驚かしたらいけないという思いと、このままされるがままでいたいという思いから、再び目を閉じた。

ひたい...頬...鼻...あご...が、やさしく触れられている。

温かく、とても気持ちがよい。

僕の頬に、やさしく添えているのは、「そのひと」の手。

「くっ!」

身じろぎすると、全身に鋭い痛みが走る。

それでも、どうしても「そのひと」をちゃんと見てみたい。

「そのひと」が僕に声をかけた。

聞き覚えのある声だった。

この声は、朦朧としていた時、僕の遠く、深く沈んだ意識の外から、何度も聴いていた。

ちょっと低めの、軽やかな優しい声音だ。

「彼女の顔を見てみたい...」

だけど、僕の身体は傷つき過ぎていて、頭さえ起こすことができないのがもどかしかった。

早く良くなって、この優しい二の腕の持ち主を確認したい。

薬と衰弱のせいで眠くて虚ろな意識の中、僕は願っていた。


「あの時」は、交互に切り替わる、もう駄目だという諦めと、なんとか助かりたい気持ちに混乱しつつも、手は射出座席のレバーを必死に探していた。

脱出するタイミングとしては遅すぎて、パラシュートも役に立たなかっただろうし、衝撃対応姿勢がとれなかった。

それでも、僕は、ラッキーなことに生きているらしい。

深い海底に強い力で引きずり込まれたかと思うと、急浮上して現実の音をとらえることができた。

浮上した時、​ピッピッという電子音と共に僕は彼女の声を聴く。

​まぶたを開けると、白い天井と、白くて半透明の壁(パーテーションかな)しか見えない。

手足が重くて痛くて動かせない。

徐々に僕は意識がはっきりとしてきて、僕の周囲を立ち働く人々の存在も認識できるようになったのだ。

​彼らの会話の詳細は分からなかったけど、僕の症状についてやりとりをしていたのだろう。

彼女を見てみたかった。

「そのひと」の顔は、僕のすぐ側。

ゆっくりとまぶたを開く。

まぶしくてピントが合わなくて、ぼんやりとしたシルエットが、徐々に...。

彼女が息をのんだのが分かった。

僕の頬に添えられていた手が、パッと離れる。

「......」

美しいと、僕は思った。

しばらく目を奪われて、口もきけなかった。

首にはぴったりとした細かい刺繍が施されたネックレスをしていた。

黒い髪は、ひたいの真ん中でゆったりと分けてあって、頭のてっぺんにぐるぐるとまとめてある。

髪をまとめている髪飾りがゆらゆら揺れて、きらきらしていた。

「まぁ」といった感じに丸くしていた彼女の目が、目尻が下がった弓形になる。

「目が覚めたのね!」

ふわっと花びらが開くような笑顔だった。

泣いてしまいそうだった。

それくらい、インパクトがあった。

​彼女が(何と言っているのか分からないけど)僕に話しかけている。

彼女の声を聞いて、彼女が「そのひと」だと分かって、心の底から感動した。

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