14.もどかしい-My Destiny-

 

~チャンミン~

 

僕は、パーテーションの方に意識を向けていた。

あの陰から、彼女が現れるかもしれない期待でいっぱいだった。

彼女を追いたかったが、ベッドから離れられない自分の身体がもどかしい。

ベッドの角度を上げてもらえば、やっと上半身を起こせる程度。

利き手はギプスで覆われていて指だけ、脚についてはもっと絶望的だ。

彼女のことを、ララのことを想う。

月のような丸顔だった。

僕に、伝えようと一生懸命で、頬がピンクに染まっていた。

頭のてっぺんに丸められた髪から、こぼれた後れ毛が首の辺りで揺れていた。

意味が通じた時に見せた笑顔に、僕の心は完全に奪われた。

​目尻が下がった、弓形の目が可愛らしかった。

「チャンミン」と僕の名前を呼んだ、彼女の少し低めの声を思い出す。

 

「ララ...」

​彼女の名前をつぶやいてみる。


コツコツ

 

パーテーションを叩く音に、ハッとして顔を上げた。

しかし、入ってきた者たちの顔を見て、上げた頭を枕に落とす。

「失礼しますよ」

男性が三人、僕のベッド周りを囲む。

一人は、担当医師。

物腰からして要職についているだろう初老の男と、若い方は、おそらくこの男の秘書かなにかか。

初老の男は、ベッド下からスツールを引き出して座り、医師と秘書はその後ろに立つ。

「体の具合はいかがですか?」

うっすら笑いを浮かべているが、目は笑っていない。

「起き上がれるようになったようですね?」

言葉は分からないが、内容は想像できる。

「リハビリのスケジュールを組んでいるところです」

医師は手元のボードを読み上げる。

「あなたの頭はしっかりしていらっしゃる」

初老の男は、後ろの秘書に手ぶりで知らせると、秘書は持参してきたイヤホンを僕の耳に取り付ける。

初老の男は軽くうなずくと、僕の目をまっすぐに見据えて言う。

 

「私たちは、あなたの乗り物を回収しまして、調べさせていただきました。

細かな欠片まで、ピンセットでひとつひとつ」

彼は、ピンセットで拾い上げるジェスチャーまでしてみせる。

 

「しかしね、分からない、分からないんですよ」

僕は、彼の視線をまっすぐ受け止める。

「あなたの所属はどこですか?」

「......」

「何もなかったんですよ」

「......」

「怪しいものが何もないことが、なぜおかしいか分かりますか?」

「......」

 

「そろそろ...患者さんの負担になります」

 

医師は前に進み出て、年配の男に伝える。

 

「これは失礼いたしました。

傷に障ったのではなければよいのですが」

初老の男は立ち上がり、出入り口の向こうへ声をかけた

「私たちの用は済みましたよ、看護師さん」

秘書は、僕の耳からイヤホンを回収した。

「口がきけるようになったら、教えてください」

初老の男は、振り向いてそう言った。

 

 

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