17.ジョギング-My Destiny-

 

​スポーティなウエアに身を包んだララは、友人のアキとテセとの3人で荒野を走っていた。

運動不足解消の為、休日になると3人でよくジョギングをする。

よく晴れていて日差しは眩しく、地平線がくっきりと見える。

要塞の周囲を5周廻った後、1km先のオアシス目指して走る。

「まだ調べることがあるのかな」

テセがあごをしゃくった先は、墜落現場。

大きなバギーカーが停められ、側で数人の職員たちが、地面にはいつくばって何やら調査中の様子。

あの事故からすでに一か月が経とうとしていた。

​事故機は調査のために部品の一つまで片付けられ、あとに残るのは数十メートルにわたる軌跡のみ。

「ねぇ、知ってた?」

アキがその場駆け足をしながら言う。

「あの飛行機ね、3人乗りだったんだって。

1人は、あの彼でしょ。

もう一人は遺体で発見」

ララは、黒いシートに覆われて運び出された担架を思い出す。

​「じゃあ、3人目はどこにいったんだ?」

「それがね、いないのよ、どこにも」

「機体ごと燃えてしまったってことは?」

「もしそうだったとしたら、うちのチームがとっくに見つけているって」

アキは、化学分析チームに所属している。

「3人乗りだったとしても、もともと2人しか乗っていなかったこともあるんじゃないの?」

​ララは、人差し指を唇にあてたチャンミンの姿を思い出しながら、アキに問う。

「3人目はちゃんと乗ってました」

「どうして断言できるの?」

​「3人目の射出座席が、発射されていたからよ」

「射出座席は回収できたの」

「ええ」

アキは声を落とした。

「でもね、シートはもぬけの空。

シートベルトは、ナイフのような物で切られていたわ」

​再び3人は、墜落現場を横目に見ながら走り出す。

白いスーツを着た調査隊員たちが、通り過ぎるララたちを見ている。

「ねぇ!あれ、所長じゃない?」

「ほんとだ!」

​うなじの辺りでひとつにまとめた、金色の長い髪。

すらりとした身体にぴったりと合ったスーツ。

透けるように白い肌に、大きなサングラスをしている。

要塞の所長は、ぞっとするほどの美貌の持ち主だ。

要塞はひとつの会社であり、ひとつの自治区でもあり、所長と言えば、最高権力者を意味する。

​濃色のサングラスのせいで、誰を見ているのかまでは分からないが、ララたちを見ているのは確かだ。

所長は、脇に立つ職員の一人に耳打ちをしている。

「怖いわね、怒られる前に先を急ごう」

テセはダッシュする。

ララとアキも、テセを追いかける。

走り去る3人の後姿を、所長はじっと見つめていたことに、彼らは気づかなかった。


​荒野の中にポツンとあるそのオアシスは、木立に囲われ、職員の誰かが持ち込んだベンチもある憩いの場所だ。

全速力で走ってきたので、3人とも流れ落ちる汗をタオルで拭きながら、水筒をあおった。

「暑いー」

​柔らかな下草の上に寝転がる。

空は雲ひとつない。

「ねぇ」

アキが口を開いた。

「クレ君に聞いたんだけど、あんた、例の人といろいろ喋ったんだってね?」

​クレ君とは、テセの後輩のことで、看護師のシイラの恋人だ。

「そ、そんな、ほんのちょこっとだけよ、挨拶程度」

ララは、ドキリとしつつも否定する。

「ほんとに~?」

アキは目を細める。

「めちゃめちゃ盛り上がったって話よ」

「だって、あの人、イヤホン無しだったのよ。会話なんて無理よ」

​「へー、余程信用ならん奴だと、上の者が判断したんだろうね。

こちらの会話をきかれたくないってさ」

​テセは起き上がって、水筒の残りを飲む。

​「ちょっと!ゴミだらけよ、テセったら」

彼の後頭部や背中に付いた草を、ララはとってあげる。

その様子を見てアキは、ニヤニヤしながら言う。

「あんたたち...まだデキてないの?」

「ちょっと、アキ!」

ララはアキを睨む。

不意をつかれ咳き込んだテセは、口元をぬぐいながら、

「残念ながらまだだよ。彼女はガードが固いんだ」

「あんたたちを見てるこっちとしては、イライラしてるんだから」

​アキは、膝の上で顔を伏せるララの背中を小突く。

「ただでさえテセはモテるのよ、ララ、愛想つかされたらどうすんの?」

「もー、やめてよアキったら」

「お互い初めて同士じゃあるまいに、さっさとくっついちゃえ!」

「アキ!ララが困ってるじゃないか」

​「相変わらず、テセはララには優しいのねぇ」

​アキは、腕をテセのそれに絡める。

​「ララがいらないなら、私がテセをとっちゃおうっかなー」

「やめろって!お前には彼氏がいるじゃないか!」

テセはアキの腕を振り払う。

​「馬鹿ね、冗談よ。

​テセの方も、ボヤボヤしてたらいけないわよ。

飛行機の彼ったら、超絶カッコいいらしいじゃない」

「そうなのか、ララ!?」

テセは勢いよくララの方を振り向く。

「...うーん、そうかも...」

​ララは、顔を伏せたまま答える。

​「テセの闘志に火がついたわね...あら!もうこんな時間よ!」

時刻は16:30。

あと30分で要塞の門が閉まってしまう。

「かなりギリギリだわね」

「急ごう!」

​3人は、要塞に向かって走り出した。

 

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