18.待機時間-My Destiny-

 

ララとテセの仕事場は地下にあり、天井まで達する大型のスーパーコンピュータが鎮座している。

このスーパーコンピュータの存在が、この「要塞」が要塞たらしめる理由で、総勢20名のスタッフが、24時間体制で維持管理にあたっている。

ララとテセは、昼間の担当で、午前7時に深夜担当のスタッフと交代する。

「お疲れ様です」

「おーっす」

大型モニター前にいたスケさんは、無精ひげとボサボサ頭がトレードマークの30代男性。

「おかしい動きがあるから、アラームに気を付けててよ」

スケさんに代わってシートに座るテセは、

「おかしい動きって、どういうことです?」

と、スケさんに問う。

「アタックしようとした形跡がある」

頭をかきむしるスケさんは、大あくびをしながら、問題の画像を呼び出してテセに見せる。

「おかしいのは、侵入しようとする動きが、正々堂々だということだ」

「ネットワークを遮断したんですか?」

「ああ。今日いっぱい様子を見て、場合によってはクローズドするかもしれない」

「そうですね...スケさんは当然、出動でしょうね」

スケさんは、センター一の管理官である。

「そうなるだろうね。今のうちにシャワーを浴びてくるよ」

​スケさんが退勤していくと、テセとララ、その他のスタッフは集合させられ、リーダーから先ほどスケさんが話していた内容を伝えられる。

「...という訳で、本日の11時00分からこのセンターをクローズドすることになった。

該当者は以上の3名のみ。

他のものは待機。

解散」

メンバーから外されたテセとララは、センターを出て、荷物を受け取るとカフェテリアへ向かった。

​「久しぶりよね、こんなこと」

ララとテセは、飲み物を持ってテーブルにつく。

カフェテリアは全面ガラス張りで、降り注ぐ日光が明るい開放的な空間だ。

非番や休憩中のスタッフが、思いのままに過ごしている。

「半年ぶりくらいかな。休みになって、僕らはラッキーだよ」

​「そうね。でも、外出できないから、何して過ごそうかなぁ」

ララは頬杖をつく。

(チャンミンの顔を見にいって来ようかなぁ。

許されるかなぁ。

あの日以来、2週間?3週間も会っていない...。

シイラに頼み込んでみようかなぁ)

ぼんやりと考えていると、テセはララの飲み物を取り上げる。

「ちょっと、テセ、お代わりもらってこればいいじゃない!」

「お前は飲むのが遅いの!氷が溶けちゃってるじゃん」

テセは飲み干すと、空いたカップをダストボックスめがけて投げる。

カップがきれいな放物線を描いて、ボックス内に着地するのを遠巻きに眺めていた女性スタッフたちが、手を叩く。

テセは、非常にルックスがいい青年なため、「要塞」の女性たちから人気が高かった。

そのため、一緒に行動することの多いララは、嫉妬まじりの視線を感じることも多い。

​(こういう状況って、本当に面倒)

彼女たちの視線に構わず、テセはララを誘う。

テセは、ララに恋心を抱いているため、彼女たちについて、全く無関心だったのだ。

 

「ジムに行こう!」

「いいわね!」

(テセって、ほぼ完ぺきに近い人だなぁ)

 

枯れ草色のテセの髪を見上げながら、ララは思う。

(テセはカッコいいし優しい。

テセが私に気があるのは、よく分かっている。

そろそろはっきりさせようとした矢先、

私はチャンミンに出会って、

そんな気持ちもなくなってしまった。

いつまでも、曖昧にしてたら、テセに悪い)

​一旦、部屋に戻って、スポーツウェアに着替えながら、ララは思うのであった。

 

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