8.寝ぐせ-TIME第1章-

 

~チャンミン~

 

目覚めると、寝室の中は薄暗かった。

病院で処方された薬をきちんと服用し、ぐっすりと眠ったから、気分爽快だ。

 

抗生物質(これは風邪のため)と消炎鎮痛剤(これは頭痛のため)。

 

それから頭痛予防薬(毎日服用)の3種類。

 

僕は弾みをつけて起き上がると、乱れた毛布はそのままに、ペタペタ裸足でベッドルームを出た。

 リビングの照明は点けていなかったので、全面ガラス張りの窓から、外の景色がよく見えた。

 

僕の部屋は、35階。

 

僕は、ショーツだけ身に着けただけの格好で、窓の縁に腰掛けた。

規則正しく並ぶビル群の明かりと、眼下を走る車のライトが無数に光っている。

いつもこんな景色は目にしているのに、見ようとしていなかったに違いない。

夜景を見て、初めてきれいだと感じる自分に驚く。

 

こんなにきれいな景色を目にしても、乏しい僕のボキャブラリーじゃ、「きれい」としか表現できな自分。

僕はこれまで、余程ぼんやりと生きてきたんだと思う。

熱のせいか分からないけど、フィルターがかかったような視界が晴れてきて、目にするものや聞こえるもの、匂いや感触に敏感になったみたいだ。

敏感に反応して、僕の感情が激しく動いているのが分かる。

何だかじっとしていられない、というか...。

発見したのは、僕にも「感情」とやらがあること。

僕の「感情」を呼び覚ましたきっかけは、きっとシヅクだ。

淡々と無感情に生きてきた僕だけど、

嬉しいも、悲しいも、何もなかった僕だけど、

この感じは、全然嫌じゃない。

この点が驚きだ。

 

急に可笑しくなって、くすくす笑ってしまった。

ひとり笑いなんて、気持ち悪いぞ。

完全に日が暮れて、部屋が真っ暗なのに気づいて、ようやくライトを点けた。

​窓ガラスに、ボサボサ頭の僕が映っている。

髪を乾かさずに眠ったせいだ。

僕の髪の毛は頑固だから、手ぐしでなでつけるだけじゃ大人しくなってくれない。

もう一回、シャンプーをして、ドライヤーでセットしよう。

ちらっとシヅクの思い浮かべたのは確か。

ぼさぼさ頭の僕なんか見せられないよ。

 

​きちんとした姿を見てもらいたい。

シャワールームに向かう動線上に、脱ぎ散らかした洋服や下着が、散らばっていることに気づいた。

僕は、1枚1枚拾い集めながら、

「はぁ、全く...」とつぶやいた。

僕はどうかしてる。

ありえない、こんな僕はありえない。

 

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