14.屋内ピクニック-TIME第1章-

 

~チャンミン~

 

 

「さあさあ、たんと召し上がれ」

シズクは、ビニル袋からどんどん取り出す。

​ダイニングテーブルじゃなくて、ここがいいとシヅクが言うから、床に座って彼女からの差し入れを食べることにした。

僕はあぐらを組んで、シヅクと対面して座る。

「ねぇ、シヅク...セレクトが妙というか、変わってるというか...」

「えっ?どこが?」

シヅクは、床の上に正座をして、グラスにスポーツドリンクを注いでいた。

​「飽きたらいかんと思って、バリエーション豊かにしてみたんよ」

ゼリー飲料レモン味、ゼリー飲料マスカット味、ゼリー飲料ライチ味、ゼリー飲料アップル味。

(おいおい)

プレーンヨーグルト、ストロベリーヨーグルト、ブルーベリーヨーグルト、アロエヨーグルト、オレンジゼリー、ピーチゼリー。

(おいおいおい)

「こいつら液体だからさ、めっちゃ重いのなんのって」

(おいおいおいおい!)

「あんたは、風邪っぴきでしょ?

冷たくてさっぱりしてて、​消化がよくて、身体への吸収がよくて、

ビタミンが摂れるっていえば、これらしかないでしょ?

シヅクさんの心遣いに、涙がでちゃうね、チャンミン?」

​さっき大泣きしていたシヅクは、真っ赤に充血した目を三日月にしてにっこり笑った。

僕はどう反応したらよいかわからなかった。

嬉しさ反面、呆れていたし、シヅクのズレっぷりや極端なとこに、どう反応したらよいかわからなかったのだ。

「......」

黙りこくっている僕の様子に、

「どうした、チャンミン?

頭が痛いのか、僕ちんは?」

シヅクは僕の肩に手を添えて、僕の顔を覗き込んだ。

(まただ。

​僕はこれに弱いみたいだ)

​さっきの涙でシヅクのアイラインはすっかり消えてしまっていて、目元がうんと幼い感じになっている。

呆れてた、なんて言ったけど、本当は、僕はじわじわと感激していた。

嬉しかった。

「私もいっただきまーす」

シヅクは、もう一つの袋から続々と食べ物を取り出し始めた。

「えっ...これ全部シヅクが食べるの?」

シヅクの体型を見、ずらり並んだ食べ物を見、絶句している僕。

「馬鹿もん!

んな訳ないだろ!

いろんな種類があって、迷ったから、全種類買ってみたまでのことよ」

最後にビールの缶が出てきた。

「おっと、あんたは飲んじゃいかんよ、風邪なんだから」

シヅクは手を伸ばす僕の手を、ピシャリと叩いた。

「痛いよ、シヅク」

僕はがっかりして、ストロベリーヨーグルトを選ぶ。

 

仕方なさそうにヨーグルトを食べる僕を見て、

​「余った分は、明日のチャンミンの朝食だ」

「えー、残り物ですか...」

「ままま、拗ねなさんな、あー、うまい!」

シヅクは、唐揚げをかじって、ビールで流し込んでと、美味しそうに消費していく。

​知らず知らず、ごくごくとビールを飲むシヅクの、白い喉から目が離せない僕。

「チャンミン」

シヅクが僕から目をそらし、ヨーグルトをすくう僕のスプーンを見つめている。

「はい」

「さっきはごめんね、その~、裸を見ちゃって」

「うっ」

僕は30分前のハプニングを思い出して、一瞬でカーっと顔が熱くなる。

今度は、真面目な表情で僕を見た。

​「でも、見てないからね!」

「最初に、見たって言ったじゃないか」

(こっぱずかしい姿を見られて...あぁ、あの時を消し去りたい)

​「だーかーらー、見たけど、見なかったことにしてやる、ってことよ」

(どうして、シヅクはケロッと涼しい顔でいられるんだよ?)

シヅクはビールを飲み終えて、ゼリー飲料のキャップを開けている。

「私に記録されたメモリを、消去してやった、って意味だよ」

​「意味わかんないよ」

「照れるな照れるな、可愛いやつだなぁ、チャンミン」

​シヅクはニヤニヤ笑っている。

「女の前で裸になるのなんて、何度もあるくせ...」

と言いかけて、シヅクはパッと手で口を押さえた。

「おっ、もうこんな時間だ!」

​シヅクはリストバンドを見て、勢いよく立ち上がると、

「そろそろ帰るね。

​ちゃんと薬飲んで、おりこうさんしてるんだぞ」

バッグを持って、玄関の方へスタスタ行ってしまう。

​その間、僕は何も言えず、(多分)真っ赤な顔をして、床に座ったままだった。

「チャンミン」

玄関へ向かう廊下の角から、シヅクは顔を出した。

「何?」

​「データがうまく消去できなくて、思い出すこともあるかも、ぐふふ」

「ちょっ、シヅク!」

わっははと笑いながら、「おやすみぃ」と言い残してシヅクは帰ってしまった。

(なんだよ、からかって)

​僕は頭を抱えて、髪をぐちゃぐちゃ混ぜる。

「はぁ...」

 

まったく、ため息ばかりついてる一日だった。

ハプニング続きで、頭がついていけないよ。

​はたと、大事なことを3つ思い出した。

その1、

シヅクにお礼を言うこと。

その2、

シヅクはどうやって、僕の部屋に入れたのか追及すること。

その3、

​シヅクから借りたマフラーを返すこと。

 

 

TIME第1章