(35)TIME

 

 

 

~チャンミン~

 

 

 

目を開けると、シヅクと目が合った。

​シヅクのこげ茶色の瞳に映る僕と目が合う。

(わっ!)

彼女のうなじから手を離して、身を引いた。

​(僕は...何をしたんだ?)

絶対に、シヅクは「馬鹿野郎!」って怒鳴るに違いない。

(もしかしたら、平手打ちを食らうかもしれない)

​固唾をのんで、シヅクを見守った。

(あれ...?)

口を両手で覆ったシヅクは、パタンとソファの背もたれに倒れた。

「......」

​シヅクは、そのまま身動きしない。

「......」

「...シヅク?」

​シヅクは、ソファの背もたれに頭をもたせかけて、天井をあおいだ格好のままだ。

「ごめん」

不安になった僕はシヅクの横に座って謝った。

​「ホントに、ごめん」

シヅクの瞳がキョロリと動いて、僕と目が合う。

「えっと...そんなつもりはなくて...」

​へどもどする僕。

(やっぱり、殴られるかもしれない)

「シヅ...ク...?」

ソファの上に膝立ちをして、シヅクを見下ろした。

「チャンミン」

「う、うん!」

(怒ってるよな......ん?)

まだ口を覆ったままのシヅクの瞳が三日月の形になった。

「チャンミン!」

「うわっ!」

名前が呼ばれた直後、僕の頭はシヅクの腕にタックルされていた。

​「ちょっ...!」

僕の首に巻かれたシヅクの腕は力強いけど、シヅクは女性だから、僕が本気を出せば、これくらいはねのけられる。

「また、僕を絞め殺すつもりか?」

「......」

髪をぐちゃぐちゃにされた。

「ストップ!」

​僕の頭は、シヅクの脇に挟まれているわけで、

僕の頬に押し付けられているものを

どうしても意識してしまう。

(参ったなぁ...)

「ストップ......って、わっ!」

いきなりパッと解放された僕は、反動でソファから転げ落ちてしまった。

「ったいなぁ!」

​「おい、チャンミン君!」

見上げると、シヅクは腕を組んで、仁王立ちしている。

​「なんだよ?」

​ふくれて答える。

シヅクに振り回されっぱなしの僕。

​「ごめん、とはどういうことだよ!」

​「えっ?」

 

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