僕は、耳に装着してあるイヤホンの位置を、何度も直した。
ふうとひと息ついてから、リストバンドを操作する。
僕は、シヅクに電話をかけようとしていたのだ。
電話番号は、ミーナに教えてもらった。
「なんでまた、どうして?」と、ミーナは理由を知りたがって、「どうしちゃったの~」としつこくて、参った。
呼び出し音が鳴っている。
ドキドキと鼓動が早い。
手の平は汗ばんでいる。
(いい年した大人なのに)
呼び出し音が鳴っている。
(出ない...)
ごくっと唾を飲み込んだ。
(まだ出ない...)
イヤホンから聞こえる、呼び出し音に集中する。
(......)
これ以上呼び出したら、しつこくて執拗に思われるかもしれない。
終了ボタンを押そうとしたら、
『あんたは、どちらさんだぁ?』
シヅクの声。
ただ、怒っているような、尖った声だ。
心の準備ができていなくて、うまく言葉が出てこない。
「あの...」
『もしもーし!』
(もしかして、電話したらマズいタイミングだったかな)
『おい!どちらさんか?って聞いてるのよ、こっちは』
苛立っているシヅクの声。
「僕です」
『僕って誰だぁ?
さっさと名乗れ!』
(そっか、シズクは僕の番号知らないんだった!)
すっとひと息ついて、僕は言う。
「チャンミンです」
「......」
沈黙。
固唾をのんで、待つ。
『どうした、どうしちゃったの、チャンミン?』
「......」
(ミーナと同じ台詞を言わなくても!)
ムッとした僕。
電話をしたことを後悔してきた。
『ねぇ、チャンミン?』
シヅクの声のトーンが、優しくなった。
『電話をもらえて嬉しいよ』
「...シヅク!」[maxbutton id=”1″ ]