「疲れた...」
シヅクは、ブーツを脱ぎ捨て、ソファに倒れ込む。
格納ベッドを出す時間も惜しいくらい、ヘトヘトだった。
(明日で終わる、あと一日だ!)
会議の日程は2日間だったが、シヅクは準備委員会のメンバーだったため、設営準備も含めて、3日間缶詰状態だ。
(テレビ会議で済むのに、どうしてわざわざ一同を集める必要があるわけさ。
ったく、時間とエネルギーの無駄だとしか思えない)
「おしっ!酒だ、酒のも!」
シヅクは勢いをつけて起き上がって、備え付けの冷蔵庫からビールを取り出した。
「ん?」
リストバンドが振動する。
ディスプレイを見る。
(知らん番号...無視だ無視!)
ビールをガブリと飲む。
(......)
ビールをゴクゴクとあおる。
(......)
ビールを飲み干す。
(しつこい、しつこいぞ)
通話ボタンをタップして、不機嫌さを前面に出して応答する。
「あんた、どちらさんだぁ?」
『あの...』
(男か)
「もしもーし!」
『......』
(ん...?)
嫌な予感がするシヅク。
「おい!どちらさんか?って聞いてるのよ」
(もしや...)
『僕です』
(はぁ?)
シヅクの嫌な予感は、膨らむ。
「僕って誰だよ!」
(こいつ...変態野郎だ!
はぁはぁ言って、いやらしいこと言うんだ)
シヅクは、ビールの缶を握りつぶす。
「おい!どちらさんか?って聞いてるのよ、こっちは」
『あの...』
相手の息づかいが聞こえてくる。
(こいつ、興奮してやがる!...変態野郎確定だ!)
「僕って誰だぁ?さっさと名乗れ!」
『チャンミンです』
(え...えええぇぇぇぇ!!)
シヅクの手から、ビールの缶が転げ落ちた。
チャンミンとは共通の話題なんてないから、会話が続かないったら。
私が一方的に、会議のバカバカしさや、肉まんの食べ過ぎで腹が痛いとか、
どうでもいいことばかり喋ってしまった。
チャンミンは、いちいち相槌をついてくれた。
チャンミンが何の用事で、電話をしてきたのかは分からないけど、
普段の彼を知ってるから、
ウブで「僕ちゃん」な彼だから、
さぞ勇気を振り絞っただろうなぁ、って
チャンミンと話しながら、思った。
温かな気持ちになった。
彼との距離が近くなって、たったの数日なのに、
無表情で無口な彼の変化が、微笑ましく思った。
不意打ちの電話は、嬉しかった。
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