義弟(21-1)

 

~チャンミン16歳~

 

自宅前で降ろされた僕はまるで、義兄さんに捨てられたかのような気分だった。

 

自室で上着を脱ぎかけたところで、それをまた羽織り、スニーカーを引っかけて外へ飛び出した。

 

嘘をつき慣れていないから、「友達んとこに泊まってくる」のひと言が不自然に震えていないか、緊張した。

 

愛想は悪いが生活態度は真面目な息子は、両親には信用されていた。

 

だから、僕の言葉に疑いを挟むことなく、「あらあら、忙しいわねぇ」と母親は呆れただけだった。

 

これから行く旨の電話を入れ、向かった先はこれまで3度通ったMのアパート。

 

僕を出迎えたMは、お風呂上りのようで、上気した頬と石鹸のいい香りをさせていた。

 

「急に...ごめん...」

 

ぼそりとつぶやく僕に、Mは「いいから」と言って、僕を仰向けに押し倒した。

 

 

一向に射精の時が訪れず、僕は焦って遮二無二に腰を動かすだけだった。

 

「今日はここまでにしよう」

 

Mはそう言って、僕の下から抜け出した。

 

よほど情けない顔をしていたんだろう。

 

「チャンミン、変だよ。

何があったの?」

 

Mの口調が優しくて、こみ上げてきたものを見せたくなくて、僕は俯いて腿に置いた両手を握りしめた。

 

「...別に..」

 

「やだな...泣いてるじゃないの」

 

「...っ...泣いてなんかっ...」

 

Mから顔を背けて、こぶしで両目をこすった。

 

義兄さんに無茶苦茶にされるはずだった熱を、Mの身体で冷まそうとした僕は最低だ。

 

2度も義兄さんの左手の中で達し、その度に精を吐き尽くして空っぽになったはずなのに、満たされなくて。

 

義兄さんは多分...僕とするのが嫌なんだ。

 

僕は男だし、義兄さんは結婚してるし。

 

僕が義兄さんの立場だったら...駄目だ、全然想像できない。

 

義兄さんだって興奮していたじゃないか。

 

あそこを固くさせてたじゃないか。

 

僕とエロいキスをしていたくせに、本心では、“そういう気”はなかったんだ。

 

必死な僕を憐れんで、僕の性欲を満たしてあげるために僕のものをしごいてくれたんだ。

 

勇気を振り絞ってした告白、「ずっと、義兄さんに触って欲しかった」を受けて、義兄さんは困ってしまったんだ。

 

車の中でのことは義兄さんのお遊びに過ぎなかったのに、本気で迫ってきた僕を可哀想だと思ったんだ...きっと。

 

子供にするみたいに頭を撫ぜられて、僕の心は屈辱でいっぱいだった。

 

...でも。

 

『結婚してるかどうかは関係ない』の義兄さんの言葉。

 

あれはどういう意味だったんだろう?

 

 

(つづく)

 

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