「...尻尾...?」
「うん。
ウサちゃんの尻尾。
チャンミン、付けてみて」
「これ...どうやって、付けるの?」
「あー、それはね。
おしゃぶりみたいになってるとこを、チャンミンのお口に刺すの」
「こう?」
(ヤベーーーーーー!
天然過ぎるのも程がある!)
「頼むからボケないでくれ!
ホントにしゃぶってどうするんだよ!?
赤ちゃんじゃないんだから!
お口ってのは下の穴のことだよ!」
「アソコに!?」
「バニーちゃんになってー!」
「僕はね、ユノにお仕置きする側なの!
ユノを悦ばせてどうすんのさ?」
「...誕生日」
「へ?」
「俺の誕生日...」
「ああっ!!」
「ほ~ら、やっぱり!
忘れてただろう!?
浮気に夢中になってて、俺の誕生日忘れてただろう!?
『ユノ、バースデープレゼント何がいいですか?』って、毎年尋ねてきてたくせに。
俺は待ってたんだぞ?
一時休戦して、祝うものだろうが!」
「そう言うユノこそ、僕の誕生日をすっぽかしたじゃないか!」
「...うっ」
「おあいこということで、この件はお互い忘れましょう」
「いいや!
チャンミンの方が罪深い」
「僕が何をしたって言うのさ!」
「...バレンタイン」
「あああ!」
「チャンミンからのバレンタインプレゼント、楽しみに待ってたのになぁ」
「ゲームの途中に、誕生日だのバレンタインだのイベントが目白押しなんだもの。
その都度、中断してたらゲームにならないでしょう?」
「...確かに...」
「さっきの質問。
結局、今日ってなんの日なの?」
「チャンミン...本気で言ってるの?
3月14日と言えば、アレしかないだろう?」
「...ホワイトデー」
「正解。
ウサちゃん尻尾はホワイトデーのプレゼント。
...愛するチャンミンの為に、もらってもいないバレンタインプレゼントのお返しだ」
「よりによって...これ?」
「うん。
凄くいいらしいよ。
凸凹がすごいだろう?
でさ、SMの衣裳は誕生日プレゼントだ」
大人な小道具を貰ってしまったチャンミンは、ここは喜ぶべきなのか両眉を下げて困惑の様子だ。
「こいつらを使って、アツアツな夜を過ごそうぜ。
2人分の誕生日とバレンタインデーとホワイトデー、まとめて楽しもう」
「ユノ...誕生日プレゼントあげられずにゴメンね。
それから、バレンタインプレゼントもあげられずにゴメンね」
「俺はチャンミンには『あまあま』だから、許してあげるよ。
...あのさ。
ずっと万歳してて肩が痛い。
いい加減外してくれよ?」
「ごめん!」
チャンミンは鍵を使ってユノの手首を解放してやる。
「ふぅ」
凝った肩をぐるぐる回しているユノの背後に回ったチャンミンは、彼の首にタックルした。
「わっ!」
「ちょろいな...」
チャンミンはユノの片手首を捉えると、ぎりりとねじり上げて、外したばかりの手錠をカシャンと嵌めた。
「チャっ...!」
「ちょろいんですよ、チョンユンホ!」
そう言い放ったチャンミンは、ユノの両腕を背中に回して、もう片手首に手錠を嵌めようとした...したのだが。
全力で抵抗するユノは、それを許してくれない。
「僕のお仕置きはっ...まだ...終わって...ない!
ユノ!
お願いだから、じっとしててよ!」
「だーかーら!
俺がチャンミンにお仕置きされる言われはないの!」
「ないけど...ないけど!
やられっぱなしは面白くない!」
ユノの腰を両脚で抱え込み、後ろ手のユノの手首を押さえつけながらの作業は難を極め...。
「あっ!」
カシャンという音に、チャンミンは自身の手首に目を剥いた。
「どうした?」
腰に巻き付いたチャンミンの両脚から力が抜け、ユノは後ろを振り返った。
ユノの左手とチャンミンの左手がひとつの手錠で繋がっている。
「チャンミン...『そういう』プレイでもするつもりなのか?
これじゃあ...」
その中途半端に短い鎖に、ユノは手を上げ下げしてみた。
「どうやってえっちをするんだ?」
ユノの背後にチャンミンがいる恰好で、左手同士が拘束されているのだ。
「身体を入れ替えよう。
チャンミン、一旦外そう。
鍵は?」
「う、うん...」
チャンミンは先ほど使ったばかりの鍵を、探る。
「あれ...?」
(ベッドの枕元の辺りに置いたはず...いや...ユノを驚かせようとして、ユノが暴れて)
「ない!?」
ベッドから下りてマットレスの上を丹念にあらためようとしたところ。
立ち上がったチャンミンに引っ張られて、ユノはぐらりとバランスを崩してしまった。
ユノに押される形で、チャンミンはベッドに背後から転落してしまったのだ。
「いってぇ!」
「いたっ!」
「チャンミン!
俺と繋がってるのを忘れるな!
鍵は?」
「見当たらないんだ!」
「はあ!?」
「ユノが邪魔で見えない!
ユノ、ベッドの上を見て」
「オッケー。
しゃがむぞ」
ユノとチャンミンはそろそろと腰を落とす。
枕も毛布も取っ払い、マットレスの上を子細に見るが、銀色に光る小さな鍵はない。
「ベッドの下か?」
急に四つん這いになったユノの背中に、チャンミンの身体がのしかかる。
「重い...」
「ごめん!
動きについていけないから、もっとゆっくり!」
「オッケー。
ベッドの下を覗くからな。
床に寝っ転がるぞ」
チャンミンが先に床に腰を下ろし、その上にユノは乗る。
傍から見れば、二人羽織りをしているかのような二人。
「チャンミン。
これいい幸いだって、俺にぶち込んだりするなよ」
「するか!
ふざけたこと言ってる場合じゃないよ!」
(チャンミンの乱暴な言葉遣い...萌える)
「わざわざ重なる必要はないぞ...こうすればいい」
ユノはチャンミンの上から腰を上げ、繋がった手首を軸にくるりと身体の向きを変えた。
そして、腹ばいになったユノは、ほこりまみれのベッド下に目をこらす。
「きったねぇなぁ...お!
あれ見ろよ」
仰向けになったチャンミンから、ユノの言うものは見えない。
「鍵、あった?」
「ほこりだらけで、わかんねぇ。
でもさ、行方不明になってたアレを発見したぞ。
ほら、チャンミンが身悶えして悦んでたアレだよ。
な~んだ、ベッドの下に転がってたんだ。
う...届かない」
ベッド下に目いっぱい右手を伸ばしていたユノは、到底届く距離にないことを悟って諦めた。
「チャンミン、手を洗いたい」
「うわっ!
きったないなぁ。
掃除していないユノが悪いんだからね。
...で、鍵は見つかった?」
「あるかもしれないが、分かんない。
ベッドを動かさないと駄目かもしれない」
「もお!」
「あのさ...このまま鍵が見つからなかったら、俺たちどうする?」
「ねえ、ユノ。
ここはもう、発想の転換だよ」
「こんなんじゃ、服も脱げないぞ?
シャツを切り裂くしかない」
「明日明後日とお休みでしょ?
僕とユノ、くっついて過ごせるよ?」
「そっか!」
「それに、こうすれば...」
チャンミンは繋がった手首を返し、ユノの前に回った。
「とりあえずバックは出来ることが判明した!」
「可愛いお尻だ」
ユノは革パンに包まれたチャンミンのお尻を撫ぜまわした。
「ユノ!
くすぐったい!」
「誕生日もバレンタインデーもスルーした俺たちだ。
緊縛プレイか...燃えるねぇ」
「変態」
「嫌いじゃないくせに。
チャンミンにたっぷりとお仕置きしてあげないとなぁ?」
「僕だって、ユノにお仕置きしたいんだから」
「ふん。
泣いて止めてって言っても、俺は勘弁してやらないからな」
「それは僕の台詞!
僕をあんまりイジめたら、ウサちゃんを付けてやらないよ?」
「えー、それは困る」
...そんなこんなで、2人は熱い夜を過ごしたわけですが、後日、鍵が見つかったかどうかは確認がとれていません。
(おしまい)
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