(20)19歳-初夜-

 

 

素直に従うチャンミンが可愛かった。

 

露わになったチャンミンのそこに、俺は人差し指を押し当てた。

 

チャンミンの腰が小さく痙攣した。

 

事前に手順を頭に入れてきたはずなのに、本物を前にして怖気づきそうになったけれど、それをチャンミンに悟られたら、盛り上がりかけた空気を消してしまう。

 

「あ...れ?」

 

俺の人差し指はつるりと何の抵抗なく飲み込まれた。

 

「......」

 

チャンミンは呻きもせず、枕に顔を埋めていた。

 

両耳が真っ赤に染まっている。

 

入口の締め付けはキツく、抜こうとする指に吸い付いてくる。

 

(こういうものなのか?)

 

背中を小刻みに震わすチャンミンに、この疑問点を問いただしたらきっと、彼は羞恥心のあまり毛布にもぐり込んでしまうかもしれない。

 

もしくは、バスルームに閉じこもってしまうか...。

 

けれども、遠慮するよりも勝ったのは俺の好奇心。

 

「もしかして...。

もしかしての話だけど...。

ここ、触ったことあるの?」

 

「......」

 

チャンミンの背中の震えがぴたっと止まった。

 

もし自分だったら...と、その感触を自分に置き換えて想像してみたことがあった。

 

幼少期高熱を出した俺は、チャンミンに座薬を入れてもらったことが何度かあった。

 

あの時の異物感といったら...。

 

挿入してもすぐに放出してしまう俺の入り口に、チャンミンは苦労していたっけ

 

その記憶を持ち出さなくとも、クローゼットから覗き見した叔父たちの行為から、初めてはスムーズにいかないことを俺は知っていた。

 

「触ってた?

指...入れたことある?」

 

「......」

 

チャンミンは未だ、枕に突っ伏したままだ。

 

体温で溶けたクリームがチャンミンの谷間を垂れ落ちている。

 

「そうだったんだ」と、ますますチャンミンのことが愛おしくなってきた。

 

「ねえ。

恥ずかしいことじゃないよ。

俺は...嬉しいよ」

 

俺はチャンミンを抱き起した。

 

チャンミンは抵抗せず、俺の肩に頭をもたせかけた。

 

チャンミンには人間と同様の欲があり、また来たるべく日に備えて準備をしようとしたのだろう。

 

どうしてその指が後ろにまで伸ばされたのだろう?

 

情報源はどこ?

 

チャンミンは極めて限られた世界で生きている。

 

彼の知識源は主に屋敷の図書室やラジオ、新聞のみ。

 

俗物的な書物の侵入を許さない父によって、それらも厳しく制限されている。

 

せいぜい、使用人たちが持ち込んだ雑誌が考えられるけれど、それは女性との絡みを扱ったもの。

 

「ユノ」

 

チャンミンは口を開いた。

 

「人間とは異性同士で惹かれあい、カップリングするものです。

男性と女性がどう繋がり合い、子孫を作るのか...僕だって知っています。

快楽が目的の繋がり合いは相手がいればいいのですが、そうもいかないときにアンドロイドの出番になります。

でも、今はその話をしたいのではありません」

 

自分は性奴ではない、とチャンミンは言いたいのだ。

 

俺は「うん、分かってる」と答えた。

 

「僕は女性を見ても、何とも思いません。

男性を見ても、何とも思いません。

僕には異性も同性もありません」

 

「?」

 

「僕には、『ユノ』か『ユノ以外』か。

それだけしかありません」

 

俺か俺以外か...か。

 

チャンミンはもたれかかっていた俺の肩から半身を起こした。

 

両脚を片側に崩した、いつものチャンミンの座り方をしている。

 

俺はチャンミンの両脚の間のもの...小さくしぼんでいる...から、目を反らした。

 

「ユノ...あなたを見たり想ったりした時だけ、僕は普通じゃなくなります。

ユノとキスを沢山するようになった頃から特に。

僕には“そういう欲”は存在しないと思っていました。

でも、そうじゃなかった。

僕は工場で生まれたアンドロイドですから、自分の性能はある程度把握しているつもりだったのですけどね。

僕に知らせていない秘密が、僕の身体にまだまだありそうです」

 

「...チャンミン」

 

「僕は...ユノを受け入れたい。

男性とか女性とか関係なく、ユノを受け入れるための存在になりたい。

ユノをこの中で...」

 

チャンミンは下腹を撫ぜた。

 

「この中でユノを感じたいのです」

 

ゴツゴツした肩から伸びる、筋張った長い腕、狭い骨盤と、確かに男性の身体なのに、やはりチャンミンは優しい身体をしていた。

 

艶めかしく俺の目に映っている。

 

「ユノは男性。

僕はユノを受け入れたい。

だから僕は、お...ちんちんは、触ったことがないのです」

 

射精したことがない、と話していたのは本当のことだった。

 

「いきたくてもいけない状態だったわけか...。

よく我慢できたね」

 

「いつか、ユノと一緒になれた時に...と、夢見てました」

 

「僕にはユノしかいないから、ユノと愛し合う

僕の身体はユノの為に存在している。

ユノを受け入れたい。

けれども、僕は男性の身体をしています。

ユノを受け入れたい。

僕はどうすればいいのか...受け入れられる場所といえばもう、ここしかあり得なくて...。

努力したのです」

 

チャンミンは枕を引き寄せると、膝ごとそれを抱きしめた。

 

枕の陰から、チャンミンの上目遣いが覗いていた。

 

興奮と照れで目は潤み、目尻が赤く染まっていた。

 

「チャンミン...」

 

チャンミンは、俺とセックスをするためにはどうすればいいのか、真剣に悩んでいたのだ。

 

外部から得た知識に従ったのではなく。

 

「チャンミンは...お前は可愛いね」

 

思わず「可愛い」と、チャンミンの頭を撫ぜた。

 

「可愛い」と言われるのが大好きなチャンミンは、くすぐったそうに笑った。

 

「ですので...」

 

チャンミンはそう言うと、俺のものを握った。

 

チャンミンらしからぬ、大胆な行動だ。

 

「んっ...!」

 

俺のものは、この会話中も衰えず張り裂けそうなままだった。

 

昨夜まではイヤイヤと、服を脱がされるのも恥ずかしがっていたのに、この変貌ぶりに俺はついていけない。

 

「僕は用意ができています」

 

チャンミンは仰向けに横たわると、両膝を胸に引き寄せそこを露わにした。

 

さらに、俺の根元をつかみ、自身の口に押し当てるんだ。

 

そのてきぱきとした行動にムードの欠片もない。

 

「ちょっ、待て!」

 

「早く...早く」

 

「ゴム付けないと...」

 

俺はチャンミンの尻たぶを掴み、左右に押し広げた谷間にあるそこに、ゴムを装着した先端を押し付けた。

 

望んでいたことが今まさに実現しようとしている時なのに、チャンミンに急かされたことで、何が何だか、頭が真っ白になってしまった。

 

 

先を入れただけで、意識がぶっ飛びそうだった。

 

締め付けが凄かった。

 

抜きさしを繰り返しながら、根元まで挿入で来た時には、全身汗が噴き出ていた。

 

チャンミンも顔を背けて、唇を噛んでいた。

 

「ユノ...?」

 

一向に腰を動かそうとしない俺に焦れたのだ。

 

チャンミンは背後にいる俺を振り向き、「早く?」と目で訴えていた。

 

「動かしたら...持たない...かも」

 

 

(つづく)

 

 

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