Lesson8-僕とユノの習い事-

 

ユノのぎらついた視線にロックオンされたチャンミンは、身動きできずにいた。

 

社交術に長けているユノの涼し気な目元は、感情の読み取りにくいポーカーフェイスなものだ。

 

真っ先に感情が顕われてしまうチャンミンのものとは、性格が真逆だった。

 

不安定に揺れていた自身の焦点が、ユノの漆黒の瞳に捕らえられて、あっという間に恋に落ちた。

 

だから、チャンミンには分かる。

 

今のユノの瞳に、欲望の炎がめらめらとしていることを。

 

(...どうにかされちゃうのかな...)

 

逃げ出したい気持ちが3分の1、襲われたい気持ちが3分の1、ユノとどろどろにまみれあいたい気持ちが3分の1。

 

「チャンミン...いやらしい...」

 

股間を隠していたチャンミンの手が払いのけられた。

 

抵抗もせず両腕を脇に落としたチャンミンに、ユノはくすりと笑う。

 

チャンミンが何を期待しているのか、手を取るように分かったから。

 

ユノは視線だけで、チャンミンの身体のパーツをスキャンしていく。

 

(ガチな顔をしちゃって...可愛いんだから)

 

「チャンミン...」

 

指をそっとチャンミンの唇に触れる。

 

上気した肌は熱を帯びていて、うっすらと開いた唇からは、浅くて速い呼吸音が。

 

ねじ込まなくてもユノの指は、チャンミンの口内に迎い入れられた。

 

チャンミンの熱い舌が人差し指に絡みつくが、ユノはすっと指を引いてしまった。

 

あごから喉元、鎖骨へと...チャンミンの喉仏がこくりと上下した...視線を移す。

 

「チャンミン...裸で長靴履いちゃって...どこへ出かけるつもりだった?」

 

「サイズが合うかどうか...試着しただけだよ...!」

 

ユノの焦点が、左胸の乳首に合っている。

 

(視線だけで...むずむずする...)

 

「ホントに、それだけ?」

 

(...舐めて欲しい...おっぱいを舐めて欲しい)

 

チャンミンの乳頭が小さく尖ってきた様子に、ユノは満足する。

 

「びんびんじゃん、チャンミン。

やらしいなぁ」

 

「そんなこと、ないっ...」

 

(舐めてやるもんか)

 

歯を当てたくなるのを、ユノは堪える。

 

「どうして服を着なかったわけさ?」

 

「着ようとしてたよ。

でも、ユノが長靴を履いて欲しい、って言うから...」

 

「へぇ」

 

ユノの焦点が下へと移動していくのにあわせて、チャンミンの下腹が波打った。

 

「へそ毛がすごいな...」

 

そう言ってユノは、ふっと息を吹きかける。

 

「ひゃん」

 

「剃っても、いい?」

 

「は!?」

 

「いやがる女子も多いらしいよ、毛深い男って」

 

「え!」

 

「胸毛はないくせに、へそ毛はもじゃもじゃだなんて、アンバランスじゃん。

剃ってつるつるにしようぜ」

 

「嫌だ。

女子にどう思われるかなんて、僕には関係ないもん」

 

そう答えつつも、下腹が泡で覆われ、ユノによって剃刀の刃が当てられる光景を思い浮かべると、妙に興奮してしまうチャンミンだった。

 

「なんで?」

 

「女の子なんてっ...興味、ないから」

 

「本当か?」

 

「そうだよ!」

 

(興味があるのは、ユノだけなんだから!)

 

「チャンミンの部屋にAVのDVDあったじゃん」

 

「嘘!?」

 

「嘘。

なかった」

 

「もー!

びっくりするじゃないか!

僕んちにはプレイヤーがないんだから、観られるわけないんだからな!」

 

「じゃあ、肴は何使ってるの?」

 

「......」

 

「教えろよ」

 

「言えない」

 

「『男色の歴史』か?」

 

「馬鹿ぁ!

違うよ!」

 

「じゃあ、何?」

 

「...ユノ」

 

「え!?

マジで?」

 

「悪いか」

 

「俺とやってるとこ想像して抜いてたわけ?」

 

「...うん」

 

「俺に挿れられて?」

 

「......」

 

「がんがんに突かれてるとこを?」

 

「......」

 

「そうなのか?」

 

「......」

 

「まさか...俺を『受け身』にしてたんじゃないだろうな!?」

 

「...正解」

 

「信じらんねーよ!」

 

「だって、受け身の気持ちなんて想像できないよ。

お尻をいじってみたけど、どこがいいのか分かんなかったし...」

 

「はしたないチャンミンに、お仕置きをしてやんないとな」

 

そう言ったユノは、中断していた視姦を再開する。

 

毛筋を辿って下っていくと、大本命の箇所に到達した。

 

チャンミンの黒々とした茂みの中で屹立するものが、ぴくぴくと上下に揺れている。

 

先端から透明な粘液が溢れ出て、今にも床に垂れ落ちそうだ。

 

満足そうに微笑んだユノは、やおら立ち上がった。

 

「ユノ...?」

 

身体をいじられることなく、あっさりと解放されてチャンミンは拍子抜けしてしまう。

 

ユノは大股で窓まで近づくと、勢いよくカーテンを開けた。

 

そして、チャンミンを振り返るとにやりと笑った。

 

「!!!」

 

煌々と明るい室内で、全裸で突っ立っている自分の姿が窓ガラスに映し出されている。

 

「チャンミン...いやらしいなぁ。

素っ裸だよ?

しかも、なぜか長靴だけ履いてんの」

 

「っ!」

 

チャンミンは両手で股間を覆い隠す。

 

手の平を、たっぷりと分泌された粘液が濡らす。

 

(なんて恥ずかしいんだ!)

 

「駄目だって、ちんちん隠したら」

 

「だって...恥ずかしい...」

 

(恥ずかしくてたまらないのに、どうして僕のモノはますます元気になるんだ?)

 

チャンミンは勃起したものをつかんで、下方へ曲げる。

 

「触ってあげないよ」

 

「それは...ヤダ」

 

「じゃあ、その手を離して」

 

「......」

 

手を離すと、抵抗を失ったチャンミンのペニスがバネのように正面を向いた。

 

「触って欲しい?」

 

「...うん」

 

「何を触って欲しい?」

 

「僕の...あそこを...」

 

「......」

 

「僕のっ...おちんちんを」

 

「よく言えたね。

正直が一番だぞ」

 

ユノに褒められ、頭を撫ぜられ、チャンミンの心は幸福感で満たされる。

 

(なんだろ...こんな気分)

 

ユノはチャンミンの背後に回り、彼の肩にあごを乗せて耳元で囁く。

 

「チャンミン、気付いてる?

外から丸見えなんだよ?」

 

「あ!」

 

「おーっと、ちんちんを隠すなって。

大丈夫だって、向かいはどっかの事務所だから、誰もいないよ」

 

ユノの住むマンションの真横にはビルが建っており、ユノの部屋の正面は設計事務所が入居している。

 

「でもさ、誰かが残業してるかもね」

 

「電気点いてないし...」

 

「従業員の誰かがさ、忘れ物をとりに戻ってくるかもしれないじゃん。

あ、警備員さんが巡回にくるかもね。

でさ、ふと外を見たら、ふるちん男が立ってるの。

で、長靴だけ履いてるの」

 

「...っ...」

 

ユノに煽られているうち、チャンミンは妄想の世界に沈んでいく。

 

「びっくり仰天だねぇ。

でもさ、そのふるちん男があまりにもいい男でさ」

 

ユノはチャンミンの顎を撫ぜ、もう片方の手を下腹を撫ぜ、指先でへそをくすぐる。

 

「っん...」

 

「それに、めちゃくちゃ勃起させてんの...こんな風に」

 

チャンミンの脇腹を撫ぜ上げ、撫ぜおろす度、チャンミンの肌が痙攣する。

 

「しかもさ、ふるちん男は、もう一人の男に後ろから突かれてるわけ。

ガンガンに突かれてるんだ。

裸の男はもう、よだれ出して、イっちゃってる顔をしてるんだ。

 

おーっと、チャンミン!

ちんちんを触ったら駄目だ」

 

ユノの語る妄想図に引き込まれていくうちに、チャンミンの手は自然と股間に伸びていたのだった。

 

「警備員のおじさんも興奮してきてさ。

ふるちん男と目が合うのさ。

ふるちん男...チャンミンは、おじさんに見られていると知って、興奮すんの」

 

「あ...はぁ...はぁ...」

 

チャンミンの呼吸が早くなってきた。

 

「チャンミンのちんちんはもっとデカくなっちゃって、自分でしごき出すんだ。

後ろからは、俺にパンパン突かれてて、ケツの中は気持ちいいし、前も気持ちいいしで、ひーひー言ってんの」

 

チャンミンを煽っているユノの股間も、欲望で熱くなってきていた。

 

「脚はガクガクでさ、声なんか出まくりなんだ。

 

『ユノ!もっと激しく!』って。

『ユノ!イイよー』って。

納期が迫ってて泊まり込みの社員が(疲れ果てて仮眠してたっていう設定だ)起き出してきてさ。

守衛さんに気付いて、『どうしたんですか?』って質問してさ、

守衛さんの指さす方を見たら、隣のマンションでエッチの真っ最中。

 

チャンミンは窓におでこくっつけて、その時には自ら腰を振ってんの。

 

『おい、あれを見ろよ』ってその社員さんは仲間を呼ぶんだ(ほかにも泊まり込みの社員がいたっていう設定だ)

 

でさ、チャンミンは20人というギャラリーの前で、俺とのエッチを披露するんだ。

 

見られてると思うと、ますます興奮してさ。

『僕の恥ずかしい姿を、見ず知らずの人たちに見られてる!』って」

 

ここまで一気に話し終えると、ユノは窓ガラスに映るチャンミンと目を合わす。

 

「困ったね、チャンミン?」

 

チャンミンは顎を上げ、口は浅く開かれ、潤んだ瞳には恍惚の光をたたえている。

 

ぴくぴくと痙攣するチャンミンの先端からは、とめどなく滴り落ちている。

 

(おいおいおいおい。

チャンミンよ...俺の言葉攻めだけで、感じてるじゃないか...。

予想通り、チャンミンは羞恥プレイがお好みのようだし。

俺の妄想力も凄かったが、チャンミン+長靴の破壊力は凄かった...はあ...)

 

「...ユノっ」

 

チャンミンは上ずった声で、ユノを呼ぶ。

 

「ん?」とチャンミンを覗き込むと、ぐいっと手首をつかまれてチャンミンの尻の方へ導かれた。

 

「挿れて...」

 

「...挿れるって...指をか?」

 

「違う...ユノのモノを挿れて欲しんだ」

 

「まだ早いって。

指2本がやっとだろ?

慣れていないんだから、入らないって」

 

「入らないかどうかは、やってみないと分かんないじゃないか!」

 

チャンミンはベッドに両手を突くと、腰を突き出した。

 

(チャンミンの中の、エロのスイッチを入れてしまったか!?)

 

「だって、今日の僕、一度もイッてないし...。

気持ちよくなりたいっ!」

 

切羽詰まった言い方に、ユノは「わかったよ」と頷き、枕元に置いたままだったコンドームの箱に手を伸ばす。

 

「まだそれほど、気持ちよくないんだろ?

無理にやんなくていいんだからさ」

 

「慣れていないからだよ。

それに...ちょっとだけ、気持ちよかったんだ」

 

「マジで?」

 

「うん。

あれが気持ちいいことなのか分かんないけど、多分...気持ちよかったんだ」

 

(確かに、チャンミンは反応していたな。

今夜はここまで進展する予定じゃなかったんだけどな...。

果たして出来るのかなぁ。

あんなにぎゅうぎゅうに締め付けられたら、気持ちいいどころか痛いかもしれない...)

 

先ほどの指の感触を思い出し、ぞっとしたユノだった。

 

さらに、視線を床に転じた際、チャンミンの長靴が目に飛び込んできてしまって、その滑稽な姿にぐぐっと笑いが込みあげてきてしまうのだ。

 

(俺がウケてしまうのは、長靴を履き続けていることなんだ。

なぜ脱がない?

履いてることを忘れてるのか?

さんざん恥ずかしい思いをしたんだろ?

そっか。

チャンミンは羞恥プレイで燃える質なんだ、絶対に)

 

「挿れるぞ?」

 

しごいて十分な固さまで育てたものを、チャンミンの後ろの入り口にあてがう。

 

「っんん...」

 

根元に手を添えて、肛門周りを円を描くように亀頭を滑らせた。

 

敏感な箇所をぬるつくもので刺激されて、それだけでチャンミンから切なげな声が漏れるのだ。

 

ところが、チャンミンの扉は固く閉ざされたままで、ほんの1ミリも受け入れる様子はない。

 

「無理だ、入んねぇ」

 

「そんなっ...」

 

ユノは指先と自身の先端のサイズを見比べてみる。

 

(入る気が全然しねぇ...。

無理やりねじこめばイケるかもしれない...でも、そんなことしたらチャンミンを怪我させてしまうよなぁ)

 

「チャンミン...今日は止めておこう」

 

「なんで!?」

 

「今の俺は手っ取り早く、ぴゅーっとしたいんだ。

チャンミンもそうだろう?」

 

「...うん」

 

「焦らずにいこうぜ、って、いっつも言ってるだろ?」

 

「うん」

 

「ケツの穴にこだわってるから、流れが中断するんだ。

今はもう...」

 

ユノはチャンミンの肩をつかんでこちらを向かせ、そのままベッドに押し倒す。

 

「チャンミンと一緒にイキたい。

お前のイッてる顔が見たい」

 

「ユノ...」

 

「リアルセックスは牧場でヤろうぜ」

 

ユノは自身のものとチャンミンのものとをまとめてしごき出す。

 

「っん...」

 

ユノの唇を受け止めながら、チャンミンはこくりと頷いたが、

 

「牧場!?」

 

「そうさ。

大牧場の草むらの中でさ、何十頭ものホルスタインに見守られながら、ヤろうぜ」

 

「ヤダよ」

 

「そんときは俺も長靴履いてっから、お揃いだし、いいだろ?」

 

「むぅ...」

 

 

(僕とユノの習い事編 終わり)

 

 

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