私は高校教諭、30代独身、腐男子である。
私の受け持ちのクラスで、非常に美味しそうな男子2名を新学期早々、ロックオンした。
すかしたちょいワル男子がユノ氏、真面目が取り柄のむっつりスケベ(と、私はみた)男子のチャンミン氏。
二人のルックスはすこぶるよくて、絵になるのだ。
・
「え~、では。
この家系図の中で、A´とB´の子供、A´´の3世代前の親にあたるBの血液型は何だ?」
カリカリとノートを擦る鉛筆の音を聞きながら、私は教室を見渡していた。
「先生!」
生徒の1人、C君が挙手をした。
(生物の成績学年1位)
「どこか間違いがあったか?」
私は慌ててプリント用紙を見なおした。
先日のように、オメガバースに引っ張られるようなことは書いていないはずだ。
「今の問題とか教科書にあるAとBのカップルって、絶対に♂と♀ですよね。
これって、繁殖の面から見たカップルってことっすよね?
俺ずっと思ってたんすけど、カップルの定義ってなんでもありっすよね?
今の問題の家系図には10組のカップルが書かれてますけど、10組中10組、繁殖に適した組み合わせになるとは限らないっすよね?
精神的な繋がりもあると思うんすよね。
LOVEっす。
あは、俺の言ってること意味わかんないすよね?」
「C君...」
BLでは、気になる男子が出来た主人公は大抵、
「俺はあいつが男だから好きになったのではない。
あいつだから好きになったのだ」
と、自分に言い聞かせるものなのだ。
C君はガタン、と椅子を鳴らし勢いよく立ち上がった。
「先生っ...俺っ。
先生のこと...好きっす」
(なんですと!?)
「俺のこと...イヤっすか?
俺...先生とA×Bの関係になりたいっす!」
「!!!!!」
生徒(♂)から教師(♂)への片想い。
(生徒役が攻め、教師役が受け。
逢瀬の場所は保健室、または○○準備室)
公開告白!
ざわつく教室。
待て待て待て待て待て!
私は男子高校生同士のBLを、覗き見するのが三度の飯より好きなだけで、
私自身がBLしたいわけじゃないんだ!
「...先生?」
「先生!」
「先生!」
私を呼ぶ声にハッと、意識が戻った。
C君からの質問も公開告白も夢の話、どうやら私はうたたねをしていたらしい。
安堵した。
目覚めのベッドの中で読んだBLコミックの影響を受けたのだろう。
(新任教師と根暗系男子とのちょいエロ恋物語)
・
生徒たちが2問目の問題に取りかかっている間、BL妄想ウォッチングを再開させた。
ユノ氏はプリント用紙の裏に絵を描いて遊んでいる。
(...ん?)
チャンミン氏が背中を丸め 片手で下腹をさすっている。
右手に握ったシャープペンシルは動いていない。
(腹が痛いのか)
顔色が悪いようにも見える。
(そうか!!)
もしかして...。
もしかして...。
君たち!!
中出しはいけない!!
ユノ氏が放ったものを、チャンミン氏のアソコは何リットルも受け止めたんだ!
そりゃあ腹が痛くなっても仕方ない。
ホントはナマでやるのもよくないんだが、欲情に流されてつい、ってことはあると思う。
それとも...!?
腸内洗浄のやりすぎか!?
隣のユノ氏は、チャンミン氏の異変に気付いたらしい。
チャンミン氏は相当具合が悪いらしく、机に側頭部をくっつけている。
「ユノ君!」
突如、名前を呼ばれ、ユノ氏の背筋がシャキッと伸びた。
(悪ぶっていても、こういうところでいい子で素直なのがバレるんだよなぁ)
「チャンミン君を保健室に連れていってくれないか?」
ユノ氏はこくんと頷いた。
そして...。
ユノ氏は軽々と、チャンミン氏をお姫様抱っこしたのだ。
教室中、しんと静まり返った。
気を利かせた生徒の1人が、教室のドアを開け閉めしてやった。
顔がにやけてしまうのを必死で堪えた。
保健室...。
図らずも、保健室ネタを仕込んでしまった。
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