「抱いて」とねだった罪(6)R18

 

「抱いてくれ、なんて言い出すから、あの時の再現かと思ったよ」

 

「もう一回、やり直したかったんです」

 

「...なんて無神経なこと言うんだって...。

すげえ、ムカついた」

 

「ごめん」

 

「それでも...悔しいことに、お前のことが好きなんだ」

 

「僕も」

 

唇同士を合わせたままの会話。

 

ユノの膝にまたがったまま、僕はユノの下唇をやわく咥える。

 

ユノの下唇は紅くふっくらとしていて、美味しそうなんだ。

 

僕は両手でユノの顎とうなじを支えて、顔の向きを何度も変えてユノの唇を味わい尽くす。

 

舌を入れるキスなんて、2回目。

 

S君との時は下半身だけを攻められた暴力で、キスなんてなかった。

 

よかった、唇を奪われなくてよかった。

 

ユノは僕にされるがままに、唇も口内も僕にゆだねている。

 

ユノの中に舌を差し込んだとたんに、勢いよく絡められて、僕は負けじとそれに応える。

 

やり方なんて全然分からないけど、少しでも身体の深い部分でユノと絡み合いたくて、僕は必死だった。

 

ぴちゃぴちゃとした粘着音と、粘膜同士の生々しい感触に僕の股間が重ったるくなってきた。

 

「...あっ!」

 

ユノの片手が僕のニットの下に忍び込み、広げた指で僕の生肌を撫で上げた。

 

 

何かを探していたユノの指は、それを見つけると爪先でひっかいた。

 

「...うんっ...」

 

びくりと身体が跳ねて後ろに傾いてしまった僕の腰を、ユノのもう片方の手で支えられた。

 

僕はひとりでする時、前を刺激しながら自分で自分の乳首をいじって慰めていたから...敏感だから...気持ち良過ぎる。

 

「...っあ...あ...ダメ」

 

僕のニットは顎下までたくし上げられ、吸い上げられたり、舌先で転がされたり。

 

5ミリにも満たない1点から、くすぐったい痺れが股間に向かって間断なく走るのだ。

 

キスどころじゃなくなった僕は、ユノの頭を抱きしめた。

 

「邪魔だ...」

 

僕のニットは脱がされ、裸の胸を丸ごと見られてしまって、急に恥ずかしくなった。

 

「僕は...男だけど、ユノは平気なの?」

 

「はっ。

今さら何言ってるんだよ?

俺んとこを見てみろよ?」

 

ユノの股間も、スリムなパンツを高く押し上げていて、この光景だけで僕は感じ入ってしまった。

 

「あっ!」

 

僕の腰を抱いたユノの腕に力がこもり、あっと思う間もなくひっくり返されて、ベッドの上に仰向けになった。

 

深いキスが再開して、僕らの口のまわりは唾液でべたべただ。

 

「ふ...んんっ...」

 

僕のベルトもボタンも、ユノは片手で器用に外してしまった。

 

脱がせやすいよう、僕も両脚を動かしてユノをアシストする。

 

暖房がよく効いていない肌寒い部屋での下着姿。

 

興奮で火照った僕は全然平気で、逆に暑いくらいだった。

 

さすがに慣れているなぁ、とキスをしながら僕は、女慣れしたユノに抱かれようとしている自分の立場に興奮した。

 

僕は根っからの、男の人に抱かれたがる男なんだと実感した。

 

ユノのもので、僕の中を貫かれる感覚を想像して興奮した。

 

ユノのパーカーを脱がせたら、色白の肌に不釣り合いなほど筋肉が盛り上がった胸が飛び込んできて、僕の喉が鳴る。

 

沢山の女の子たちが、この身体に夢中になってしまった気持ちがよく分かる。

 

ストレートだったユノが、男の僕を抱く羽目になってゴメン、と心の中で謝っていた。

 

だからつい、固く膨らんだ箇所に及んだユノの手を制してしまった。

 

女の子にはないはずのものが、僕には付いている。

 

今の僕は、素面だ。

 

「抱いてください」なんて威勢のいいことを言っていたのに、僕の全部がむき出しになる直前に怖気づいてしまった。

 

「ばーか。

俺はチャンミンがいいの。

チャンミンの身体もすごく...すごくそそるよ」

 

僕の心中なんてお見通しだと言わんばかりに、ユノは笑って言った。

 

そして、僕の手がゆるんだ隙に最後の1枚をはぎとられてしまった。

 

「ほんとに?」

 

「ああ。

俺の服も脱がせてくれよ」

 

僕の上になったユノのボトムスを、震える手で引き下ろした。

 

「あ...」

 

見下ろすと、僕のペニスとユノのペニスは触れ合わんばかりに天を向いていて、2本とも先を濡らしている。

 

朝の日の光の元、僕のもののユノのものも、色も形も全部、血管のひとつひとつ、毛の1本1本全部、露わになっている。

 

僕らは互いを欲している。

 

「あぅっ...!」

 

僕のペニスが、ユノの大きな手で包み込まれて、上下にしごかれ始めた。

 

「あ...あっ...ダメ...あっ」

 

強烈な快感が、下半身から胸に向かって一気に駆け巡る。

 

自分以外の手で与えられる、コントロール不能の快楽に、こすり上げられる度に声が出てしまうのだ。

 

「...僕のはっ、いいからっ...早く、早く挿れてっ!」

 

僕ばかり気持ちよくなるわけにはいかないと、指を伸ばしてユノのペニスを握りしめた。

 

僕の手の中のそれは、当然だけど僕のものとはサイズも形も違っていて、男らしさを見せつけられてぞくぞくする。

 

僕を欲しがっている証拠。

 

これから僕を満たしてくれるもの。

 

「はやく!

挿れて!」

 

「直ぐに出来るものじゃないだろう?」

 

「だ、大丈夫!」

 

しごく僕の手の甲に、ユノの手が重なった。

 

ユノは腰を落とし、僕のペニスとユノのペニスを重ね合わすと、まとめてしごきだした。

 

「もう触らないでっ。

イっちゃうからっ...。

ユノと繋がってから、イキたいからっ」

 

「そう言われても...」

 

ユノの片手が僕のお尻にまわり、割れ目にその指を埋めるように滑らした。

 

「ね?

大丈夫でしょ?

準備してきました」

 

僕を見下ろすユノの表情が、つかれたように熱っぽいものから、ふわりと優しいものに変わった。

 

「ヤル気満々だったわけか?」

 

「そうです」

 

「俺に断られるって思わなかったわけ?」

 

「...はい。

あっ...あ...ユノがなんと言おうと、僕はっ...。

絶対にユノを振り向かせてやるつもりでしたから」

 

ユノの眼が潤んでいた。

 

「自信たっぷりだな」

 

僕のお尻はユノの指をつるりと飲み込んだ。

 

「自信は...ありませんでしたけど...。

しつこく迫るつもりでし...あっ、ああっ!」

 

2本の指にぐるりとかき回されて、自分でもびっくりするくらい大きな声が出てしまった。

 

僕の腰は持ち上げられて宙に浮き、その隙間にユノの両膝が差し込まれる。

 

「いいのか?」

 

「うん」

 

仰向けになった僕の視界に、裸足の爪先。

 

等間隔に穴が並ぶ石膏ボードの白い天井。

 

靴下を履いた爪先。

 

天井の木目。

 

蛍光灯。

 

「...っ!!」

 

両脚をばたつかせて、ユノの腕を振り払ってしまう。

 

胸が苦しい。

 

ぶわっと全身に冷や汗が浮かぶのが、はっきりと分かった。

 

「...チャンミン...?」

 

ユノは半身を起こしてしまった僕の肩を抱いて、僕の顔を覗き込む。

 

「大丈夫か?

やめとこうか?」

 

「...いやだ!」

 

首がちぎれそうなくらい、激しく左右に振った。

 

「...でも...」

 

「嫌だ!

ユノ...お願い...抱いて、今すぐ」

 

「でも...」と渋るユノのペニスをしごいて、僕は再びユノの下に横たわった。

 

「わかった」

 

ユノは僕の唇、鼻の頭、おでこ、最後に頭のてっぺんにキスをしてくれる。

 

そして、かき抱いて僕の身体をうつ伏せにひっくり返した。

 

四つん這いの姿勢になった僕の背に、ぴったりとユノの身体が重なった。

 

「チャンミン。

俺はお前が好きだ。

『好き』じゃ足りないな...。

俺も、愛しているよ。

何度でも言うよ」

 

後ろから包み込まれるように抱きしめられて、きゅうっと幸福感が胸にせり上がってきた。

 

「俺はお前を傷つけたりしない。

お前が大事だから。

安心しろ」

 

「...ユノっ...」

 

「チャンミンの辛かったことも...何もかも、全部。

全部丸ごと。

...上書きしてやる。

安心しろ」

 

「...うんっ...」

 

マットレスについた手を握りしめた。

 

「上書きしてやるよ」

 

首の付け根を強く吸われた。

 

「あ...」

 

腰を強くひき寄せられて、これ以上はない程ぴったりと、僕とユノの身体は重なり合った。

 

「いいか?」

 

許可なんかいらないのに。

 

ユノの低くて優しい声音に、涙が溢れそうになる。

 

頷いた直後、僕の目の前で光が弾けた。

 

「ああぁっ...!」

 

僕は肩を落とし、組んだ両腕で口を塞いだ。

 

悦びの声なのか苦痛の声なのか、どちらともとれる、おかしな声をあげてしまいそうだったから。

 

僕の中が、ユノでいっぱい。

 

いっぱいで苦しい。

 

嬉しいのか、怖いのか、悲しいのか、幸せなのか...いろんな想いがいっしょくたになって、何がなんだか分からない。

 

「チャンミン、声をきかせて」

 

ユノに頬を撫ぜられて、塞いでいた腕を解く。

 

ユノでいっぱいになって、嬉しい。

 

時間をかけて腰を埋めたのち、ユノはもう一度僕に囁く。

 

「動かすよ?」と、僕に尋ねた。

 

その言い方が優しくて、まぶたの奥が熱くなった。

 

「っう...うっ...くっ...ユノっ...」

 

僕の目からぽろぽろと涙が出てきた。

 

一か月の間、ずっと我慢していた涙が一気に溢れてきた。

 

抑えていた声も止まらない。

 

最初は緩やかだった腰の動きが早まる。

 

口は開きっぱなしになって、マットレスに崩れ落ちる頃には、涙や鼻水でぐちゃぐちゃになっていた。

 

これでもかと、快感の波が次々と押し寄せる。

 

あまりにも幸福で、罰が当たりそうだった。

 

(つづく)

 

 

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