義弟(14)R18

 

~チャンミン16歳~

 

 

義兄さんを誘うようなことをしたくせに、その後の展開を知らない僕だった。

 

世間一般的に言って、16歳で童貞なのが普通なのか遅いのか、分からない。

 

級友の中には、「相手は2こ年上の、高校生。あれはすごいよ」と、未経験の奴らに自慢をしていた。

 

我先にと、「俺も」「俺も」と経験談を始める奴もいて、「どこまで本当のことやら...嘘ばっかりのくせに」と、馬鹿馬鹿しいと思っていた。

 

僕こそ、そのクチだったから。

 

33歳の義兄さんと対等に張り合うには、ヒヨコのままでいるわけにはいかないんだ。

 

未経験は即バレてしまうし、もの凄くカッコ悪いことだ。

 

義兄さんは、姉さんとヤッているんでしょう?

 

僕も、Mとデキてるんだよ。

 

そう思わせたくてMに接近した。

 

鋭いMのことだから、僕の魂胆なんて見抜いていただろうけど、それを指摘しない賢明さがMにはあった。

 

 


 

 

Mを奥の席につかせ、僕は手前に座る。

 

「チャンミン。

ユノさん、じゃない?」

 

案の定、Mは義兄さんを見つけて、彼に手を振ろうとしたから、その手をつかんでとどまらせる。

 

「しっ!

知らんぷりしてて」

 

「どうして?」

 

「いいから!」

 

「やれやれ。

チャンミンの恋心は複雑ねぇ」

 

「うるさいなぁ。

そういうMちゃんこそ、どうなの?」

 

「彼氏と別れた」

 

「...そっか」

 

「だから、私の方はオッケーよ。

今夜でいいの?」

 

「うん」

 

「チャンミンったら、余程お腹が空いていたのねぇ」

 

サンドイッチと添えられたポテトチップスを平らげ、アイスコーヒーを飲み干す僕を、頬杖をついたMは呆れたように言う。

 

「夕飯を食べ損ねてたから」

 

昼間の出来事が刺激的過ぎて、食欲がなかったんだ。

 

それに、数メートルの距離があっても、僕の後ろに義兄さんがいる。

 

遅れてきた義兄さんの連れの声が大きくて、断片的に聞こえてくる内容からすると、仕事の打ち合わせか何か。

 

夜遅くに、アトリエを離れても義兄さんには仕事があって、大人でカッコいいと思った。

 

両親からの小遣いと、義兄さんから貰うモデル料で、価格設定の高いこのカフェに来ている僕はダサいと思った。

 

悔しくて僕は、義兄さんに見せつけるように、必要以上に身を乗り出してMに接近した。

 

そんな僕の狙いも、やっぱりMにはお見通しだろうけど。

 

僕ら2人は、義兄さんに片想いをしている同志なのだ。

 

 

 

 

「行きましょうか?」

 

席を立つMを追う。

 

腰までの長さのコートから、Mの形のよい生足が伸びている。

 

Mを裸にする光景を想像した。

 

上手くできるかは自信がないけど、きっとMがリードしてくれるはずだ。

 

 


 

 

Mはテキパキと手慣れた風に部屋を選ぶと、僕と腕を組んでエレベーターに乗り込んだ。

 

僕の肩あたりにMの頭のてっぺんが来ている。

 

この2、3か月で背が伸びて、あともう少しで義兄さんに追いつきそうで、嬉しかった。

 

「年下で、それも高校生となんて、初めてかも。

あ、チャンミンはまだ中学生か!」

 

「...もう卒業したよ。

ところで、Mちゃんは、初めてはいつだったの?」

 

「うーんと、17歳くらい」

 

エレベーターのパネルの階数ランプをぼーっと眺めていた。

 

「相手は?」

 

「バイト先の先輩...27歳だったけな、フリーター」

 

「ふぅん。

別れたって言ってたけど、Mちゃんは彼氏がいたのに義兄さんのことが好きだったんだ?」

 

「私はね、同時進行派なの。

あ、この階だよ」

 

僕らは腕を組んだまま、エレベーターを降りた。

 

タバコのすえた匂いがしみついているが、想像していたより清潔そうでシンプルな内装だった。

 

「同時進行って、二股とか三股ってこと?」

 

「一般的な目でみたらそうなるけど、私にしてみたら、そうじゃないんだなぁ」

 

「どういう意味?」

 

「私ね、一人だけ、は怖いの。

全身全霊こめて、その人を好きになるでしょ。

もし、フラれるか何かしたら、全部を失くしてしまうでしょ?」

 

「それって...ズルくない?」

 

「やっぱり、そうよねぇ。

これは表向きの理由。

ホントの理由は、他にあるの」

 

全てが物珍しくて、僕はキョロキョロしていた。

 

ベッドヘッドのティッシュケースの隣に置かれたコンドームに、ぎょっとしてしまう。

 

実物を見るのは初めてだった。

 

「ホントの理由って?」

 

Mの方を振り返って、僕はもっとぎょっとしてしまった。

 

ブラジャーだけになったMが、スカートのホックを外していた。

 

手足は華奢なのに、濃いピンク色のブラジャーに包まれた乳房はふっくらと大きい。

 

「私って欲張りだから、いろんな人と繋がりたいの。

彼氏がいたのに、ユノさんが好きなのもそう」

 

Mの足元に、パサリとスカートが落ちる。

 

濃いピンク色の小さなショーツのⅤゾーンに、目が釘付けになる。

 

なだらかな丘に釘付けになった。

 

「ユノさんは結婚しているから、気を遣わないとね。

でも、『妻がいる画家』って、ドキドキする」

 

Mはベッドカバーをはがすと、シーツの間に下着姿を滑り込ませた。

 

「年下の男子と一度ヤッてみたかったんだよね」

 

思いきりのよい行動にあっけにとられていたら、Mは僕の手をひいた。

 

「チャンミンも早く脱いで。

それとも、私が脱がせてあげようか?」

 

シーツから抜け出たMは、僕の背後に回ってのしかかるように僕に腕を回した。

 

Mの胸のふくらみを背中で受けとめて、その柔らかさを感じて腹底がぞわりとした。

 

Mに見つめられる中、僕はパーカーとパンツを脱いだ。

 

義兄さんの前では堂々と全裸をさらせるのに、Mの前だと猛烈に恥ずかしかった、何故か。

 

あばらの浮いた胸や、細すぎる脚...といった自分の身体が不格好に思われて仕方がなかったんだ、何故か。

 

もつれ震える指でMのブラジャーのホックを外し、下着は各々で脱いだ。

 

ここまで来てようやく、僕らは唇を合わせた。

 

誰かとキスをするのも初めてだったし、女の子の裸をナマで見るのも初めてだった。

 

緊張のせいか僕のペニスは萎れたままで、焦ってしごく。

 

「手を離して。

私がやってあげる」

 

横座りしたMは、くたりとした僕のペニスを小さな白い手で握ると、ゆるゆると上下させ始めた。

 

「...っ...」

 

僕のものではない手で...それも女の子の手で...しごかれる様を、僕は黙って見下ろす。

 

「...っ...あ...」

 

覆っていた皮を、Mはじわりと剥いてゆき、亀頭が露わになった。

 

「可愛い...」

 

たまらず、かすれ声を漏らすと、Mは僕を見上げてにっこりと笑った。

 

Mの手の中で徐々に膨らんでいき、亀頭の先端から透明な雫がぷくりと浮いた。

 

その雫をペニス全体に塗り広げて、Mの手の動きが早くなる。

 

もし。

 

柔らかそうなこの手が、義兄さんの手だったら...。

 

大きな義兄さんの手だから、きっと...僕のものはすっぽり収まってしまうだろう。

 

絵の中の女性の肌を、緻密に描く義兄さんの手。

 

きっと、その手を巧みにうごめかせて、僕を絶頂まで導いてくれるだろう。

 

そんな妄想をしたら、Mの手の中でぐっと膨張したのがよく分かった。

 

ぎちぎちに硬く、天を向いたのを確認して、Mは仰向けに横たわった。

 

僕は吸い寄せられるように、Mの上に覆いかぶさる。

 

温かい肌同士がさらさらとこすれ合うのが、気持ちがいい。

 

そっか...だからみんな、裸で抱きあうのか、と。

 

ふうふうと息が荒い。

 

女の子に最も敏感な部分をいじられたことに興奮したのか。

 

それとも、義兄さんから与えられる行為の妄想に興奮したのか。

 

どちらなんだろう。

 

Mは僕の手を取り、自身の両腿の間に触れさせた。

 

「......」

 

温かく、ふっくらと柔らかく、ぬるりとしていた。

 

その指を動かせなかった。

 

愛撫の仕方が分からないせいじゃない。

 

ショックだった。

 

自慰の際に、さんざん思い浮かべて欲情してきたところなのに。

 

僕とMはしばし目を合わせたままだった。

 

そうだ、コンドームを付けないと。

 

指が震えて中身が取り出せずにいると、Mの手が伸びてそれを取り上げた。

 

手際よく僕のペニスに装着してくれた。

 

ありがとう、と言う代わりにMをじっと見たら、彼女は何てことないわよ、って感じに肩をすくめた。

 

Mの身体...女の子の身体に衝撃を受けたにもかかわらず、一度火がついた男の性は止められない。

 

濡れたあそこに埋めたいより、パンパンに張り詰めたものを解放させたい。

 

Mはくすりとほほ笑むと、上になった僕の腰を挟むように、自ら足を広げた。

 

そして、僕のペニスに手を添えて、「ここよ」と言うように挿入する箇所まで導いてくれた。

 

入り口は狭く、そこを通過する際に気持ちが良すぎて、切ないうめきを上げてしまう。

 

瞬間、股底が緊張したのちに弛緩した。

 

「...っあ、ああぁ...っ」

 

 

「...チャンミン?」

 

Mの上に倒れこんでしまった僕の背中を、彼女は優しく撫ぜてくれた。

 

Mの首元で、僕ははあはあ荒い呼吸を整えた。

 

挿入5秒でイッてしまった僕を憐れむことも、からかいもしなかった。

 

「...どう?

復活した?

もう一回やろう」

 

そう言ってMは、僕の胸を押して仰向けに突き倒した。

 

横たわる僕の上に、Mはまたがる。

 

 

 

 

下から腰を打ち付けるごとに、顔をゆがませ、ふにゃふにゃとした甲高い声を上げるM。

 

妙に醒めた気持ちで、僕の動きに合わせて揺れるMを見上げていた。

 

首をのけぞり喘ぐMの姿が、僕自身に見えてきた。

 

僕のものは気持ちがいいし、喘ぐMが僕に見えてくるし、腰を振る僕自身が義兄さんみたいで。

 

こんなに気持ちいいことを、義兄さんは女の人としていたのか。

 

義兄さんに抱かれる女の人が羨ましい。

 

義兄さんの手や口やそれで、気持ちよくしてもらえる女の人が羨ましい。

 

義兄さんを受け入れられる、柔らかい穴を持つ女の人が妬ましい。

 

 

「チャンミンはユノさんとヤること、考えてたりする?」

 

僕らはめいめい、だらしない姿勢で汗だくになっていた。

 

隠しても仕方がない、「うん」と認めた。

 

「チャンミンは男の子だからねぇ。

難しいね」

 

「うん」

 

「私とどれだけヤッたって、ユノさんには近づけないわよ」

 

Mは醒めた目で僕を見る。

 

「......」

 

Mの質問の答えを、僕は持っていなかった。

 

義兄さんしか知らない身体なんて、フェアじゃないと思っていた。

 

まっさらな自分を差し出すのが癪だった。

 

義兄さんを見返したかったし、実際の行為を通して見つけたいものがあったんだ。

 

Mの裸やよがる仕草と声に興奮したことと、女の子の中は確かに、気持ちがいいと知った。

 

ハマってしまうのも、仕方がないな。

 

この日、枯れるまで精を吐き出してみたけれど、それだけなんだ。

 

何かが足りない。

 

根本的に足りていないものとは、明白だ。

 

こういうことをするのなら、僕は義兄さんとしたい。

 

Mには申し訳ないけれど、Mとの行為はスポーツみたいだった。

 

「チャンミンのおちんちんって、可愛い」

 

Mは僕のペニスを指先で持ち上げると、くるくると指でくすぐった。

 

もう僕の中は空っぽだったから、もう反応しない。

 

男の象徴を可愛いと言われたのだから、普通だったら屈辱に感じるだろう。

 

大きく太く長いと言われるのが褒め言葉なのだから。

 

でも、可愛いと言ってもらえて嬉しかったのだ。

 

おかしいだろう?

 

さらに。

 

貫かれるMが羨ましかった。

 

義兄さんに同じことをされたかった。

 

僕も女の子のようになりたい。

 

 

(つづく)

 

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