~チャンミン16歳~
自宅前で降ろされた僕はまるで、義兄さんに捨てられたかのような気分だった。
自室で上着を脱ぎかけたところで、それをまた羽織り、スニーカーを引っかけて外へ飛び出した。
嘘をつき慣れていないから、「友達んとこに泊まってくる」のひと言が不自然に震えていないか、緊張した。
愛想は悪いが生活態度は真面目な息子は、両親には信用されていた。
だから、僕の言葉に疑いを挟むことなく、「あらあら、忙しいわねぇ」と母親は呆れただけだった。
これから行く旨の電話を入れ、向かった先はこれまで3度通ったMのアパート。
僕を出迎えたMは、お風呂上りのようで、上気した頬と石鹸のいい香りをさせていた。
「急に...ごめん...」
ぼそりとつぶやく僕に、Mは「いいから」と言って、僕を仰向けに押し倒した。
・
一向に射精の時が訪れず、僕は焦って遮二無二に腰を動かすだけだった。
「今日はここまでにしよう」
Mはそう言って、僕の下から抜け出した。
よほど情けない顔をしていたんだろう。
「チャンミン、変だよ。
何があったの?」
Mの口調が優しくて、こみ上げてきたものを見せたくなくて、僕は俯いて腿に置いた両手を握りしめた。
「...別に..」
「やだな...泣いてるじゃないの」
「...っ...泣いてなんかっ...」
Mから顔を背けて、こぶしで両目をこすった。
義兄さんに無茶苦茶にされるはずだった熱を、Mの身体で冷まそうとした僕は最低だ。
2度も義兄さんの左手の中で達し、その度に精を吐き尽くして空っぽになったはずなのに、満たされなくて。
義兄さんは多分...僕とするのが嫌なんだ。
僕は男だし、義兄さんは結婚してるし。
僕が義兄さんの立場だったら...駄目だ、全然想像できない。
義兄さんだって興奮していたじゃないか。
あそこを固くさせてたじゃないか。
僕とエロいキスをしていたくせに、本心では、“そういう気”はなかったんだ。
必死な僕を憐れんで、僕の性欲を満たしてあげるために僕のものをしごいてくれたんだ。
勇気を振り絞ってした告白、「ずっと、義兄さんに触って欲しかった」を受けて、義兄さんは困ってしまったんだ。
車の中でのことは義兄さんのお遊びに過ぎなかったのに、本気で迫ってきた僕を可哀想だと思ったんだ...きっと。
子供にするみたいに頭を撫ぜられて、僕の心は屈辱でいっぱいだった。
...でも。
『結婚してるかどうかは関係ない』の義兄さんの言葉。
あれはどういう意味だったんだろう?
(つづく)
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