義弟(58)R18

 

~ユノ34歳~

 

 

「昨夜のこと...覚えてるか?」

 

「ゆうべのこと...」

 

「チャンミンが大事だって。

安心して欲しい、って。

そう言っただろう?」

 

太ももに乗ったチャンミンの頭を見下ろした。

 

子供らしいラインを描いた頬はしっとりと吸い付く若い肌、耳朶の産毛、かいた汗で濡れた襟足の髪。

 

「俺はチャンミンを大事に思っている。

怒っているように見えるのは、チャンミンを怒っているんじゃないんだ。

当たり前だけど、チャンミンを酷い目に遭わせたX氏に怒っている。

それから...気付いてやれなかった自分に怒っている」

 

「義兄さんは悪くありません。

僕が馬鹿だっただけなんです」

 

「チャンミン、お願いがあるんだ」

 

「!」

 

俺の言葉に、チャンミンは勢いよく俺の膝から頭を起こした。

 

「お願いって...怖いことじゃないでしょうね?」

 

「チャンミン...お前のことだから、十分自分を責めてきたんだろう?

俺からのお願いはね、グズグズと自分を責めないこと」

 

「そんなっ...出来ませんよ」

 

膝を抱えて座ったチャンミンは、シーツにこびりついた自身の精液のシミを爪先でこすっている。

 

小さな子供が、いじけて地面にいたずら書きをするみたいな姿だった。

 

「Xさんとのことを気に病んだり、俺に嫌われるんじゃないかって怖がる必要はない。

俺は変わらず、チャンミンのことが大事だ。

チャンミンのために俺は何をしてやれるか、考えるからな」

 

「義兄さん...」

 

「それから!」

 

人差し指の背でチャンミンの顎に触れた。

 

「チャンミンは二度とX氏さんに会ったらいけない。

後のことは俺に任せるんだ」

 

膝頭に顎を乗せたチャンミンは、拗ねたように上目遣いで俺を見る。

 

「写真のことをXさんに問い詰めたり、親に言ったり警察に行ったり...そういうのはよしてください」

 

「しないよ。

コトは荒立てない」

 

チャンミンに言われずとも、そのいずれもが藪蛇になりかねない。

 

「おいで」

 

両腕を広げると、チャンミンは俺の胸に突進してきた。

 

「...義兄さん、ごめんなさい」

 

「もう謝るな。

チャンミンが今まで黙っていたのは、俺に嫌われるんじゃないか、って怖かったんだろう?」

 

俺の腕の中で、チャンミンは何度もうなずいた。

 

「怖かった...。

黙っていればいいんだ、ってずっと思ってました。

...でも、Xさんと別れられなくて...苦しくなってきて...っ...うっ...。

義兄さんは優しいし、っ...」

 

「俺は優しくなんかないよ。

チャンミンが大事なだけだ。

内容がどんなものであれ、何でも俺に打ち明けられない遠慮があったんだろう?

そういう空気を作ってしまっていた俺が悪いんだ」

 

俺はそう言って、チャンミンの背を撫ぜた。

 

10代らしい濃い体臭がふわっと香ってきて、その若さに切なくなった。

 

 

 


 

 

~チャンミン17歳~

 

 

身体を動かすと、僕が放ったものがふわりと青臭く香った。

 

義兄さんに荒々しく、かつ念入りに愛されて、僕は3度も達してしまった。

 

僕の身体を自在に操る、義兄さんの逞しい腕や腰に感じた。

 

ぱんぱんに膨らんだ義兄さんのもので、僕の奥が埋められ突かれたことに感じた。

 

僕の身体で、義兄さんには気持ちよくなってもらいたい。

 

悪いことをしでかした僕は、義兄さんに全身を差し出したんだ。

 

滅茶苦茶に抱かれることで、僕はとても悪いことをして、義兄さんを怒らせたという実感を得たかった。

 

気だるい身体で義兄さんの太ももに頭を乗せて、彼の熱い肌を片頬に感じていた。

 

義兄さんは...イッてくれなかった。

 

僕の身体に感じてくれなかった。

 

悔しくて悲しいけれど、義兄さんは怒りが強すぎて、それでイケなかったんだ、きっとそうだ、と思うことで自分を納得させた。

 

義兄さんの肌を間近に見ながら、彼の体毛を指先で撫ぜながら、彼の話を聞いた。

 

「...っつ」

 

義兄さんの親指がすっと伸びてきて、僕の下唇に触れたのだ。

 

「唇...切ってる」

 

かさぶたができたそこは、どうりで下唇が熱をもってひりひりしていたはずだ。

 

「転んだときにぶつけたんだな...。

ちょっと腫れてるな。

何か薬を、フロントで貰ってこよう」

 

「やっ!」

 

身を起こした義兄さんの脚にしがみついた。

 

「ここにいて下さい。

痛くありません」

 

「でも...」

 

「わかった。

ここにいるよ」

 

義兄さんは僕の頭を下ろすと、僕の隣に横たわった。

 

すかさず僕は義兄さんにすり寄って、肩と鎖骨の間のくぼみに頭を乗せた。

 

仰向けで寝ても、義兄さんの両胸は盛り上がっていてとても逞しい。

 

ついさっきまで、抱き合っていたのに、身体を離すととても遠い存在に見えてくる。

 

憧れの人が触れ合えるすぐそばにいて、胸が高ぶるし、腰の奥がうずうずするのだ。

 

初めて見た時から、義兄さんは憧れだったんだ。

 

理想の姿そのままの義兄さんに嫉妬心を覚えるほどで、出逢ったばかりの頃の僕は生意気な態度で接していた。

 

キスしても、素肌で抱き合っても、義兄さんと深いところで繋がっても、何回経っても僕の心は、初めてみたいにときめいている。

 

僕にとって義兄さんは、永遠の憧れの人なんだ、きっと。

 

つい1年前までは女の人の裸に欲情していた自分が信じられない。

 

Mとヤッていた自分も信じられない。

 

学校の同級生たちも教諭たちも、まさか僕が男の人と...それも姉さんの夫と不倫をしているなんて、想像できないだろう。

 

僕と義兄さんの関係は、普通じゃないのだ。

 

特別なんだ。

 

 

(つづく)

 

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