(1)奥さま手帖-10月-

 

これは僕らの日常を綴った記録だ。

結婚祝いに妹Xから日記帳を贈られた。

「なんでもかんでも記録するの、好きでしょ?」って。

(その通りだ)

かなり値が張っただろう、布張りの表紙に、鹿の親子が刺繍された豪華な造りだった。

(300年前の西洋のどこかのお嬢さんが持っていそうな日記帳だ。

住み込みの家庭教師に片想いをしていて、その恋心を綴るのだ)

独身時代に使用していた日記帳も残り数ページになっていたことだし、新しい生活、新しい日記帳でスタートをきるのも素敵だろうなぁと思った。

隠居の身となった時、このノートを開き、旦那さんとお茶でも飲みながら、思い出話をするのも素敵だろうなぁと思った。

奥さまにあたるのは僕、旦那さんにあたるのはユノだ。

これは日記だから、小説じゃない。

退屈で面白くないだろうから、あらかじめお断りしておきます。

僕だけ目線だとフェアじゃないから、週に1度はユノにも書いてもらうことにします。

 

 

<10月某日>

雨。

H回数:1,992回

(※ユノと出会ってからの回数をカウントしている)

昨夜はナシ

(夕飯のメニューが超激辛麻婆豆腐だったから)

 

ユノ、7時45分起床。

15分で身支度して出勤する。

家を飛び出していくユノに、朝ご飯を投げる。

(目玉焼きを挟んだトーストを二つ折りして、アルミホイルで包んだもの)

ユノ、キャッチ成功。

 

【9:00】

お仕事スタート

主人公Qが理科準備室で、教諭Zに押し倒されるシーン。

カーテンは開けたままにするか悩んでいる。

誰かに覗き見された方が、話は盛り上がるから開けたままにしておく。

そうなると、理科準備室は1階設定にしなければならない。

現在の設定では3階設定。

団地の住人が「たまたま」双眼鏡をのぞいていた時に、男性教諭と男子学生の交わりを「たまたま」目撃してしまった...という設定も無理がある。

覚え書き・・・今夜、ユノに意見をもらうこと

 

【12:00】

昼食、カニチャーハン。

(ユノの弁当と同じ)

 

【13:00】

お仕事再開。

理科準備室は1階設定にする。

目撃してしまうのは、Z教諭に片想いしている女子高生にする。

紺色のスカーフのセーラー服。

ここで悩む。

現在の設定では、男子高校。

覚え書き・・・今夜、ユノに意見をもらうこと。

 

【17:00】

雨降りなので買い物に出かけない。

餡かけチャーハンにする。

(今朝作り過ぎたカニチャーハンのリメイク)

テレビ番組の罰ゲームで『餡かけ砲』というのがあるが、ぐつぐつに煮えた餡を前にゾッとした。

とろみのせいで、いつまでも冷めないのだ。

 

【19:00】

ユノ帰宅

※ゆっくり日記帳に向かえるのは夕方まで。

特にユノがいると、落ち着いて書いていられないので、夜に起こったことは翌日にまわすことにしている。