(11)奥さま手帖

 

<11月某日>

~〆切まであと3日の続き~

 

 

夜中の2時に、執筆中のチャンミンの様子を見る。

 

腹が減っているようなら、夜食にラーメンでも作ってやろうと思った。

 

ところが、がっつり居眠りしている。

 

原稿を進行具合を確認すると、ページ数からして3分の1辺りか。

 

叩き起こさなくても大丈夫そうだ。

(新婚当時、寝かしておいたら〆切に間に合わなくなって、「なぜ起こしてくれなかったんだ!」と、度叱られたことがあったのだ)

 

『恥辱の学生服』を最初から書き直すと話していた。

 

ざっと読んでみて、唸ってしまう。

 

なるほど、そうきたか。

 

設定変更でエロさが増している。

 

よしよし、頑張ってるな。

 

よだれを拭いてやる。

 

 


 

<11月某日>

~〆切まであと2日~

 

 

6:30。

目覚めたら、背中にチャンミンがひっついていた。

(結局ベッドで寝ることにしたらしい)

 

私たちは30代、徹夜は1日が限界だ。

 

チャンミンの寝顔をじっくり観察してみる。

(無精ひげの生えた口周りは手で隠す)

 

うちの奥さんは寝顔が可愛らしいのだ。

 

30半ばのおっさんが、ぎりぎり17歳の少年に見えてしまうのは、惚れた欲目であると重々承知している。

 

 

【朝食】

・雑炊

(卵3個入り)

・ホットココア

起き出してきたチャンミン、朝ご飯を食べ出す。

 

 

【チャンミンからの質問】

C

「高校生にエネマグラは早いだろうか?」

ーー早いに決まってる。

C

「17歳と59歳の恋はどう思う?」

ーー孫と祖父だな。

C

「昼休みと放課後とどちらがエロい?」

ーー放課後

C

「英語と世界史とどちらがエロい?」

ーー意味が分からない。

 

 

家事を全て済ませ、「行ってきます」と声をかける。

 

ハグを待っていたが、

今朝のチャンミンは、深い深い思索の沼に沈んでしまっている。

 

そのままそっとしておく。

 

 

【20:30】

帰りが遅くなってしまった。

 

前もって知らせておこうと電話をしたが、電源を落としているようだった。

 

 

「ただいま」と玄関ドアを開けるなり、剛速球の奥さんが飛んできた。

 

チャンミンは無言で私にしがみついている。

 

チャンミンをそのまま引きずって、台所まで行く。

 

執筆が順調だとも、行き詰っているともどちらでも取れる。

 

こういう時は余計なことは言わないのが賢明。

 

夕飯の間中、チャンミン、私の背中にひっついている。

 

コンビニ弁当はお気に召さなかったらしい。

 

「おでんもあるぞ。

卵と餅巾着とどっちがいい?

大根か?厚揚げか?」

 

そのどれもがお気に召さないらしい。

(〆切前のチャンミンはとても気難しい)

 

「頭を使う仕事なんだから、脳みそにエネルギーをあげないといけないぞ?」と言ったら、「チャーハンが食べたい」と言う。

 

チャンミンほど上手くないが、卵チャーハンを作ってやる。

 

チャンミン、調理中の私の姿を後ろから眺めている。

 

緊張する。

 

床に中身をこぼさないよう慎重に、フライパンをゆする。

 

チャーハンが完成した時、おでんが無くなっていた。

 

腹が減っていたらしい。

 

 

「風呂へ入るか?」と尋ねたら、「入らない」と返答。

 

昨夜も入っていないが、別に構わない。

 

昨日から同じジャージ姿だったから、着替えさせる。

 

チャンミン、窒息しそうな馬鹿力でハグしたのち、ぷいっと書斎へと消えてしまった。

 

洗濯物を干し、ニュース番組を見て、この日記を書いている。

 

寝る前に書斎をのぞいて、バックハグをしてやろう。

 

頑張れチャンミン。

 

おやすみ。

 

 

 

 

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