【旦那さん手帖】
<12月某日>
休日。
今年の冬は暖冬か?
12月になるのに未だ雪が降らない。
7:45起床。
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【朝食】
・塩昆布とマヨネーズトースト
・コーヒー
一週間のまとめ番組を見て、世の中の出来事をおさらいする。
・
【午前中】
チャンミン、バラの剪定をする。
(このバラの鉢は、一昨年の誕生日プレゼントに贈ったものだ)
私は縁側に座って、その様子を眺めていた。
チャンミンに
「背中がチリチリするから見ないで」と言われてしまう。
「ユノの眼力は周りの人を妊娠させるんだから」と、意味不明なことを言う。
・
チャンミン、次回作のアイデアが思い浮かばないと頭をかきむしっている。
「これ茶彌子や。
私のカバンの中に入りなさい。
散歩に行くよ」
チャンミンを散歩に誘う。
こういう時は、リラックスして会話を交わしていると、何かしらアイデアが下りてくるものなのだ。
・
私
「BLの人気のジャンルって何なんだ?」
チャンミン
「芸能界ものかなぁ」
私
「チャンミンのデビュー作がそうだったよね」
チャンミン
「そうそう。
小説の中で、アイドルと恋をする夢を叶えたんだよね~」
私
「他には?」
チャンミン
「会社員もの」
私
「これも最近書いてたね~。
酔いつぶれたユンホさんを、同僚チャンミンがラブホで襲うっていうやつだろ?」
チャンミン
「そうそう。
昼間はスーツ姿でびしぃっとしているのに、脱いだら凄いんだ。
上司が受けで部下が攻め。
オラオラになったり、甘ちゃんになったり。
他には王道もので、先生と生徒もの」
私
「『恥辱の学生服』がそうだったね。
あれはエロかった。
先生が攻めで生徒が受け」
チャンミン
「エネマグラをどこかで試してみないと!
それから...先輩と後輩もの」
ユノ
「王子様と召使、とかは?
身分の差があるやつ」
チャンミン
「それいいね~!
召使の方が攻めなんだよね」
ユノ
「男くさい世界が舞台なのもいいんじゃないの?
暴走族とか任侠とか?」
チャンミン
「男の汗と血の匂いがぷんぷんするね~。
抗争中の敵方と愛し合っちゃうんだよね~。
他には、獣ものやオメガバースというジャンルもあるよ。
書いたことないなぁ」
私
「挑戦してみたら?
獣...?
オメガバース...?」
チャンミン
「獣はお相手がそもそも人間じゃないの。
オオカミとかさ。
オメガバースについては、
海外発祥の創作の特殊設定のことだよ。
正式名称は“alpha/beta/omega dynamics”
海外ドラマ『スーパーナチュラル』の二次創作が発端と言われているんだ。
特定の創作の設定をコピーしたものではなく、誰でも使えるオリジナルな設定であったため、BLでも出産表現をしたいBLファンを中心に流行したんだって。
おおまかな設定は以下のとおり。
・人類には男性、女性のほかにα、Ω、βの3種の性が存在。
・α性:人類の中のエリート性。能力が高く、カリスマを持ち合わせることが多い。
・β性:いわゆる普通の人々。人口の大半を占めβ同士で結婚することが多い。
・Ω性:出産に特化した性と呼ばれる。
相手がαであれば男性でも女性でも妊娠出産が可能。
3か月に一度、1週間程度の発情期があり、その間は種を残すこと以外のことが考えられなくなる。
発情期間中は、フリーのα、βを誘うフェロモンを放つ。
この一定期間仕事ができない、フェロモンで人を誘うという特性のため社会の中では冷遇されている場合が多い。
抑制剤を使って、発情を抑えることもできるが、たいてい抑えきれなくてトラブルになる。
特定のαと番(つがい)になることによって、フェロモンが変質。番のαしか誘わなくなる。
発情のせいで自分の意思に反して快楽に溺れてしまったり、特権階級αに劣等感を持ったり、βと結ばれない恋をしてしまったりなど、Ωを中心としたさまざまな葛藤を描けることが大きな魅力。
特定の経典があるわけではないから、作品ごとに細かなマイナールールがあるんだ」
「へえぇぇ」と、驚くしかない。
・
【17:00】
チャンミンに誘われた。
一週間か10日ぶり。
・
今年のクリスマスはどう過ごしたいか尋ねてみた。
これといっていいアイデアが湧かないらしい。
「プレゼントにエネマグラはどう?」と尋ねたら、
「ぜってぇぇに、嫌だ」だってさ。
冗談で言ったのに、本気でムッとしている。
「もし僕が、アレをコントロールするベルトをユノに贈ったらどう?」と質問された。
「どんな反応を見せたらいいか分からない」と答えた。