(34)奥さま手帖-3月-

 

<3月某日>

 

H回数:2,027回(正常位でフィニッシュ)

晴れ。

ユノ、休日。

3月も間もなく終わり。

どことなく物足りない、心に隙間がある感じ。

何かを忘れているかのような、もどかしい感じ。

その理由が分からない。

春という季節がいけないのだろうか。

 

 

9:00

雪どけ後、濡れて地面にへばりついた枯れ草と落ち葉を掃除する。

(僕らは小さな中庭のある、小さな家に住んでいる)

 

ユノはホームセンターへ出かけている。

(中庭にタイル張りの流し台がある。

夏はここでスイカや缶ジュースを冷やしている。

ヒビが入り、タイルがはがれかけている箇所があり、

修繕するための資材を買うためだ)

 

ぽかぽかと温かい縁側で日記帳を広げる。

お湯を沸かして、ユノの帰りを待つ。

 

庭木の根元の土がぽこりと盛り上がっている。

何だろう?と、沓脱石の上にあるつっかけを履いて、中庭に下りた。

土を除けてみると、下に早緑の瑞々しいものがのぞいていた。

これは、球根植物の芽だ。

昨年の春には無かったもので、球根を植え付けた覚えがないから、これはユノの仕業だと思う。

僕を驚かせるつもりだったんだろうな。

 

「春だねぇ...」

知らず知らずのうちに、言葉が漏れていた。

 

 

10:30

ユノ帰宅。

ユノ、鈴カステラを買ってきてくれる。

スーパーマーケットの店先に、販売車が来ていたのだそう。

 

ユノから突然、びっくりするような提案があった。

この家を買いたい、のだそう。

転勤の多いユノに合わせて、あちこち転々と住まいを変えてきた。

そろそろ、ひとつの所で腰を据えたいのだそう。

僕は住まいがどこになろうと、仕事ができるが、ユノの場合は、会社の命令に従わないといけない。

 

「会社は?

転勤しろ、と言われたらどうするの?」

配偶者として当然の質問を投げかけたら、ユノは

「辞める」と答えた。

 

「辞める!?」

次の仕事は見つかるのか?

長く勤めてきた会社を辞めるとは勿体ない。

家を買うお金が必要なのに、無職になるわけにはいかないでしょう?

生活費はどうするの?

ユノにぶつけたい言葉がいっぱい浮かんできたけれど、僕はぐっと飲み込んだ。

 

ユノに甘えっぱなしの自分に気づいたのだ。

僕の頑張り時だと。

もっと売れるBL小説を書けばいいんだ!

鈴カステラは喉に詰まりやすいから、冷たい牛乳で流し込むように食べるのがおススメだ。

 

 

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