(42)奥さま手帖(5月)

 

~旦那さん手帖~

<5月某日>

 

寝坊した。

 

(奥さんは隣でスヤスヤと眠っている。

私のパジャマを握っているところが愛しい。

その可愛さに奥さんの頭をかき抱いたら、頭をはたかれた。

就寝中にウザかったらしい)

 

起こしてくれなかった奥さんを責めたらいけない。

チャンミンは只今、執筆の鬼になっているからだ。

 

1.玄関前に生き倒れになった青年を、家の中に入れてやる。

2.入浴、食事等お世話してやる。

3.エッチしちゃう。

4.棲みついちゃう。

5.いっぱいエッチしちゃう。

6.喧嘩しちゃう。

7.彼は家出しちゃう。

8.彼の存在の大きさに、主人公は気づかされる。

9.必死で探す。

10.見つかる。

11.想いを確認し合う。

12.エッチしちゃう。

 

ストーリーの大筋はこんな感じの小説だ。

 

未だゾーンに突入はしていないから、人間らしい生活を保てている。

 

食事のメニューが雑になってきているのは、完成が間近ということか。

 

今朝は私が用意する。

 

【朝食】

・明太子のっけご飯

お隣さん(旦那の不倫疑惑で実家に帰りっぱなしの娘さんがいる)からのいただきもの

 

【弁当】

明太子と卵のチャーハン

(外食してもいいが、家を買うために節約中のため、弁当持参が基本)

チャンミンの分も用意しておく。

 

出社

 

 

業務の切れ間に、ひと休憩することにする。

コーヒーを飲みながら、スマホゲームに高じる。

(××さんの内祝いに貰ったドリップコーヒーセット)

 

総務部の××さんが係長に昇進するらしい噂話がきこえてくる。

昇進したいかと問われれば、NOと答えにくい。

これまでの頑張りを評価されたい。

しかし、私は人生において大切にしたいもののうち、仕事の比重が低い方かもしれない。

ヤル気がない、男らしくない、と言われたこともある。

男らしいとは何だろう?と、問いたくなるが、深く追求しないことにした。

私たちの心のどこかで、人目を気にしている事柄があり、それとは男同士の婚姻である。

 

物珍しさからの冷やかしはあったし、耳をすませば聞こえるコソコソ声で、無神経な言葉を吐かれたこともある。

20代の頃はムキになって反論していたが、30代も半ばになると私もチャンミンも落ち着いてきた。

私たちにはやりたいこと、気を配りたいことが他にある。

ようやく定住したい地と巡り合ったのだ。

昇進、イコール転勤の可能性が極めて高くなる我が会社。

昇進したくないからと、手を抜くことは絶対にしたくないけれど、

永遠に主任クラスでいたいのが本音なのだ。

 

 

19:00 帰宅

 

家の中、真っ暗。

強盗に入られて、頭を強打されたチャンミン像が浮かんだ。

チャンミン、昼寝のつもりがガン寝になってしまっただけのようだ。

寝室のベッドに横になったら、そりゃガン寝になってしまうだろう。

 

「むにゃむにゃ。

おかえり、ゆの」

 

寝ぼけまなこの奥さんのなんと可愛いことよ。

 

 

【夕食】

・冷凍うどんのペペロンチーノ

・油揚げを炙ったもの

チャンミンがちゃちゃっと作ってくれる。

「うまいうまい」と褒めると、にこにこ笑ってやっぱり可愛い。

 

「仕事は順調?」

 

チャンミン

「うん」

 

ご機嫌だ。

 

「どれくらい進んだ?」

 

チャンミン

「1ページ」

 

「は?

たったの1ページ!?

それっぽっち!?

数日かかって、1ページ!?」

と言ってはいけない。

 

ゾーンに突入しかけのチャンミンはガラスのハートになっている。

(普段もガラスのハートだが)

 

チャンミン

「最初の一文が決まらなくて、ずっと悩んでいたんだ。

それから、拾われたイケメンの髪色を黒にするか茶色にするか迷っていたんだ」

 

「それは、大事なところだね」

 

【就寝前】

気分転換だと、アニメ映画を共に観る。

(14歳の少年少女がロボットに乗って戦うやつ)

 

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