~揺さぶられて~
「ちょっと待って」
寄せた僕の唇を押しのけて、ユノは立ち上がるとケーブルドラムの上に置いた白い水筒の中身を飲んだ。
「水筒を買ってくれてありがとう。
便利だね、蓋が閉められるからこぼれないし。
冷たいものがいつでも飲めるし」
マットレスに腰を下ろした僕の元まで戻ってくると、点けっぱなしだった懐中電灯のスイッチを切った。
僕らは暗闇に包み込まれた。
・
僕の耳にふぅっと息が吹きかけられた。
「は...ぁ...」
僕の耳たぶが軽く咥えられ、耳の穴に舌が差し込まれた。
「あ...」
ぞわっと鳥肌がたった。
ユノの頬を両手で挟んで、唇を重ねた。
ユノの顎まで覆ってしまうほど大口を開けてできた空間で、互いの舌を絡めた。
唇を離して、ユノの舌を頬張り吸う。
僕の唇の間から舌を抜いたユノは、
「チャンミン...どこでそんないやらしいキスを覚えたんだ?」
と言って、今度は僕の舌を咥えこんだ。
「ん...ふ...」
ユノを押し倒そうとしたら、「待て」と僕を制した。
衣擦れの音から、ユノは着ているものを脱いだようだった。
僕も慌てて服を脱ぐ。
あまりに暗すぎて、互いの身体は見えない。
横たわったユノの上に、僕は覆いかぶさる。
片肘で上半身を支えながら、ユノの身体の凹凸を把握しながら、手の平で撫ぜた。
初めてユノの生肌に直接触れた。
体毛もなく、滑らかな触感に感動した。
手の平を押し返す筋肉の弾力と、固く頑丈そうな腰骨に僕の体内が沸騰してきた。
見えないからこそ、感覚が研ぎ澄まされる。
ひんやりとしたユノの肌と興奮で火照った僕の肌が重なった。
ユノの両腕が僕の脇から背中へまわされ、お尻を撫ぜ上げたりきつくつかんだりし、ぞくぞくと気持ちがいい。
ユノの首筋に唇をつけ、軽く吸い付いた。
僕もユノのお尻をすくいあげるようにして揉んだり、指を離してふるっと拡がる感触を楽しんだ。
唇を付けたまま、鎖骨をたどってユノの胸先を口に含む。
これも初めてだ。
舌触りで、その形と硬さを感じた。
前歯で軽く、ほんの軽く噛んでみたら、ピクリとユノの身体が震えて、それが嬉しくて、興奮を誘った。
ユノの太ももに僕のものが擦れて、あふれ出る先走りが潤滑剤となって、ますます気持ちがいい。
「あっ...」
僕のものがユノの手で柔く握られ、ゆるゆるとしごかれた。
「あ...ぁ...」
恥ずかしげもなく漏らす自分の喘ぎ声に、興奮した。
ユノを愛撫する余裕が、全くなくなってしまった僕。
もう、待てない。
ユノの下へ手を伸ばし、はっと驚くほど硬く硬く成長したものを握った。
「挿れて?」
脈打つそれはあまりに大きくて、これが僕の中を貫くのかと想像すると、恐怖と期待の狭間で...とてもドキドキする。
直後、ユノの上になっていた僕は、くるりとひっくり返されて仰向けにさせられた。
「膝を抱えて」
「え...?」
「膝を押さえているんだ」
ユノに促されて、両膝を胸に引き寄せた格好にさせられる。
恥ずかしすぎる体位なのに、お尻を突き出して「ここに挿れて欲しい」と懇願できた僕だったから、躊躇なく全てをさらけ出せるのだ。
「...うん...いい感じだ。
チャンミン...お前はとことんいやらしい男だなぁ。
この柔らかさ...普通じゃあり得ないよ」
ユノの指が、僕のナイーブな箇所を突いた。
「...んんっ」
「穴なんか...ひくひくしてるぞ?」
指先で円を描く。
「...ん...だって...」
「挿れられる為にある穴だなぁ」
そうだよ、早く挿れて欲しい。
「ああっ、あぁぁっ!」
ぷすりと堅い何かが差し込まれ、冷たい何かが僕の中に注入された。
「何っ?
何...!?」
流れ込む冷たい何かで腹底が満たされた。
「冷たかった?
ローションだ。
じきに温まるよ」
「...っ!?」
「穴を閉じてろ。
こぼれるだろう!」
「...だって...無理...!」
カランと音をたてて転がった物を目にしてしまい、僕はぞっとした。
嘘だろ...あの中身を全部、僕の中に入れてしまったんだ。
「垂れてるだろうが!
締まりの悪い尻だな!」
バチンとお尻を叩かれた。
その熱さと痛みに声をあげそうになるのを、歯を食いしばってこらえた。
直後、快感の電流が背筋を駆けのぼる。
叩かれて気持ちがいいだなんて、僕は変態だ。
「...んっ...」
漏れださないよう、必死で入り口に力を込めた。
力を抜くととろりと溢れてしまい、ユノにお尻を叩かれた。
ユノの両膝で僕の腰が持ち上げられた。
「ご希望のものをあげるよ」
緊張と期待でバクバクする心臓、上ずった呼吸を整えるため、深呼吸した。
「んん...っ、あっ、ああぁぁぁ!」
ずぶずぶとめりこむものに、未知の感覚に僕は怯えた。
「きつっ...!」
ユノの舌打ち。
めりめりと音がしそうだった。
ユノの低い唸り声。
「...大丈夫か?」
「うんっ...うん...だ、いじょうぶ...」
僕は大きく息を吸って吐いた。
根元まで沈めて、ユノはそこで動きを止め、もう一度「大丈夫か?」と僕に尋ねた。
「チャンミン、触ってみて、ここ」
膝を抱えたままの僕の片手をとって、ユノに誘導された箇所を触れてみる。
「...すごい」
「チャンミンの中に全部入ってるよ。
分かる?」
ユノの固く平らな下腹部と柔らかな毛、その下の太い根元が僕の中に埋められている。
「すごいね、チャンミンのここは。
俺のを突っ込まれてるんだよ」
僕の入口はユノのもので目一杯押し広げられていて、こんなに大きなものが刺さっているなんて...。
「動かすぞ」
「...うんっ」
僕の膝裏をつかみ、腰を前後に揺らし始めた。
ぐっぐと突かれる度に、腹底が押し上げられて苦しい。
くちゃくちゃとねばついた音が、静寂の場内に響く。
目がきかない暗闇で、ユノの荒々しい呼吸と僕のため息、マットレスの軋む音が、過敏な僕の聴覚を刺激する。
音だけで感じてしまう。
苦しい...苦しいけど、熱くて気持ちがいい。
滑らかに絡みつくユノの固さを味わい尽くそうと、感触に集中する。
美しいこの人を取り込む幸せを、穢され征服される悦びを味わい尽くす。
違和感と圧迫感が、快感に変わる瞬間をキャッチする。
「あっ...あっ...あっ、あっ...」
ぐりぐりと睾丸の裏側を刺激されて、僕はのけぞった。
なんだ、これ...やばい...。
気持ちいい。
ユノの首にしがみつく。
マットレスのスプリングの弾みを利用して、ユノはリズミカルに腰を振る。
「はぁ...はぁ...」
ユノが放つ甘ったるい香りを胸いっぱいに吸い込んだら、快感は増して頭の中が真っ白になった。
突き刺される角度を変えたくて、ユノの腰にぶらさがる。
「どう?」
「...っうん...いいっ...いい...すごく!」
「いい子だ」
尻の割れ目から垂れ落ちるものは、僕の中で温められたローションだ。
ユノのものが出入りする度、たらりたらりと溢れ出る感覚も、僕の欲を煽った。
「チャンミン...いい、いいよ。
お前の中は...最高だ」
ユノの低く、上ずった声。
たまらなくなって、ユノの頭を引き寄せて口づける。
「あっ...!」
先を握られ僕の背がびくりと震えた。
僕の内ももを濡らすものをなすりつけ、輪にした指でくびれの部分ばかり刺激される。
「はぅっ...」
のけぞる僕を、強靭なユノの腕で封じられる。
穴奥の刺激に、先端の刺激が加わって、快感を逃すコントロールがきかなくなってきた。
「...やっ...ダメっ...」
ユノは唇から離すと、僕の乳首に吸い付いた。
「くっ...駄目、駄目だって!
イっちゃうから...離せっ!」
ユノを押しのけようと腕をつっぱったが、彼の力は凄まじい。
「怖い...怖いっ!」
3方向から攻められて、強すぎる快感に足元をすくわれて足場を失い、どうにかなってしまいそうな恐怖に襲われた。
「怖い...怖い...やっ...やめてっ...もう!」
僕の懇願を完全に無視したユノは、顎をつかみ、歯を食いしばる僕の口をぴったりと覆った。
息継ぎが出来ず顎を緩めた隙に、ユノの舌が侵入してきた。
ユノの舌を追いかける余裕もなくて、なぶられるがままでいた。
ずるりとユノの口内に舌が引きずり込まれたかと思うと、甘噛みされる。
(噛まれる!)と覚悟したら、案の定、ユノの歯が瞬間的に食い込んで、パッと口の中いっぱいに血の味が広がった。
どちらが流した血か分からないくらい、口内を混ぜあう行為で、僕の下半身へ流れ込む血流が増したようだ。
ぐっと睾丸がせりあがってきたのが分かった。
「も...うっ、駄目...駄目!」
限界が近づいてきた。
「イっちゃうイっちゃうイっちゃう!」
まぶたの裏に赤い光が瞬く。
「いい...チャンミン...いいよ...」
ユノの首にかじりついていられる余裕を失った。
射精まで、あと少し。
ユノの腰のスライドが激しくなった。
がくがくと揺さぶられた...玩具のように、がくがくと。
ユノの腰を抱えた足首に力がこもる。
股間の筋肉が収縮した。
「イくっ...イくっ...くっ......!」
ふるふるっと腰が震えた。
そして、僕の上にユノの身体が崩れ落ちた。
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