(10)僕を食べてください(BL)

 

 

~揺さぶられて~

 

 

「ちょっと待って」

 

寄せた僕の唇を押しのけて、ユノは立ち上がるとケーブルドラムの上に置いた白い水筒の中身を飲んだ。

 

「水筒を買ってくれてありがとう。

便利だね、蓋が閉められるからこぼれないし。

冷たいものがいつでも飲めるし」

 

マットレスに腰を下ろした僕の元まで戻ってくると、点けっぱなしだった懐中電灯のスイッチを切った。

 

僕らは暗闇に包み込まれた。

 

 

 

 

 

僕の耳にふぅっと息が吹きかけられた。

 

「は...ぁ...」

 

僕の耳たぶが軽く咥えられ、耳の穴に舌が差し込まれた。

 

「あ...」

 

ぞわっと鳥肌がたった。

 

ユノの頬を両手で挟んで、唇を重ねた。

 

ユノの顎まで覆ってしまうほど大口を開けてできた空間で、互いの舌を絡めた。

 

唇を離して、ユノの舌を頬張り吸う。

 

僕の唇の間から舌を抜いたユノは、

 

「チャンミン...どこでそんないやらしいキスを覚えたんだ?」

 

と言って、今度は僕の舌を咥えこんだ。

 

「ん...ふ...」

 

ユノを押し倒そうとしたら、「待て」と僕を制した。

 

衣擦れの音から、ユノは着ているものを脱いだようだった。

 

僕も慌てて服を脱ぐ。

 

あまりに暗すぎて、互いの身体は見えない。

 

横たわったユノの上に、僕は覆いかぶさる。

 

片肘で上半身を支えながら、ユノの身体の凹凸を把握しながら、手の平で撫ぜた。

 

初めてユノの生肌に直接触れた。

 

体毛もなく、滑らかな触感に感動した。

 

手の平を押し返す筋肉の弾力と、固く頑丈そうな腰骨に僕の体内が沸騰してきた。

 

見えないからこそ、感覚が研ぎ澄まされる。

 

ひんやりとしたユノの肌と興奮で火照った僕の肌が重なった。

 

ユノの両腕が僕の脇から背中へまわされ、お尻を撫ぜ上げたりきつくつかんだりし、ぞくぞくと気持ちがいい。

 

ユノの首筋に唇をつけ、軽く吸い付いた。

 

僕もユノのお尻をすくいあげるようにして揉んだり、指を離してふるっと拡がる感触を楽しんだ。

 

唇を付けたまま、鎖骨をたどってユノの胸先を口に含む。

 

これも初めてだ。

 

舌触りで、その形と硬さを感じた。

 

前歯で軽く、ほんの軽く噛んでみたら、ピクリとユノの身体が震えて、それが嬉しくて、興奮を誘った。

 

ユノの太ももに僕のものが擦れて、あふれ出る先走りが潤滑剤となって、ますます気持ちがいい。

 

「あっ...」

 

僕のものがユノの手で柔く握られ、ゆるゆるとしごかれた。

 

「あ...ぁ...」

 

恥ずかしげもなく漏らす自分の喘ぎ声に、興奮した。

 

ユノを愛撫する余裕が、全くなくなってしまった僕。

 

もう、待てない。

 

ユノの下へ手を伸ばし、はっと驚くほど硬く硬く成長したものを握った。

 

「挿れて?」

 

脈打つそれはあまりに大きくて、これが僕の中を貫くのかと想像すると、恐怖と期待の狭間で...とてもドキドキする。

 

直後、ユノの上になっていた僕は、くるりとひっくり返されて仰向けにさせられた。

 

「膝を抱えて」

 

「え...?」

 

「膝を押さえているんだ」

 

ユノに促されて、両膝を胸に引き寄せた格好にさせられる。

 

恥ずかしすぎる体位なのに、お尻を突き出して「ここに挿れて欲しい」と懇願できた僕だったから、躊躇なく全てをさらけ出せるのだ。

 

「...うん...いい感じだ。

チャンミン...お前はとことんいやらしい男だなぁ。

この柔らかさ...普通じゃあり得ないよ」

 

ユノの指が、僕のナイーブな箇所を突いた。

 

「...んんっ」

 

「穴なんか...ひくひくしてるぞ?」

 

指先で円を描く。

 

「...ん...だって...」

 

「挿れられる為にある穴だなぁ」

 

そうだよ、早く挿れて欲しい。

 

「ああっ、あぁぁっ!」

 

ぷすりと堅い何かが差し込まれ、冷たい何かが僕の中に注入された。

 

「何っ?

何...!?」

 

流れ込む冷たい何かで腹底が満たされた。

 

「冷たかった?

ローションだ。

じきに温まるよ」

 

「...っ!?」

 

「穴を閉じてろ。

こぼれるだろう!」

 

「...だって...無理...!」

 

カランと音をたてて転がった物を目にしてしまい、僕はぞっとした。

 

嘘だろ...あの中身を全部、僕の中に入れてしまったんだ。

 

「垂れてるだろうが!

締まりの悪い尻だな!」

 

バチンとお尻を叩かれた。

 

その熱さと痛みに声をあげそうになるのを、歯を食いしばってこらえた。

 

直後、快感の電流が背筋を駆けのぼる。

 

叩かれて気持ちがいいだなんて、僕は変態だ。

 

「...んっ...」

 

漏れださないよう、必死で入り口に力を込めた。

 

力を抜くととろりと溢れてしまい、ユノにお尻を叩かれた。

 

ユノの両膝で僕の腰が持ち上げられた。

 

「ご希望のものをあげるよ」

 

緊張と期待でバクバクする心臓、上ずった呼吸を整えるため、深呼吸した。

 

「んん...っ、あっ、ああぁぁぁ!」

 

ずぶずぶとめりこむものに、未知の感覚に僕は怯えた。

 

「きつっ...!」

 

ユノの舌打ち。

 

めりめりと音がしそうだった。

 

ユノの低い唸り声。

 

「...大丈夫か?」

 

「うんっ...うん...だ、いじょうぶ...」

 

僕は大きく息を吸って吐いた。

 

根元まで沈めて、ユノはそこで動きを止め、もう一度「大丈夫か?」と僕に尋ねた。

 

「チャンミン、触ってみて、ここ」

 

膝を抱えたままの僕の片手をとって、ユノに誘導された箇所を触れてみる。

 

「...すごい」

 

「チャンミンの中に全部入ってるよ。

分かる?」

 

ユノの固く平らな下腹部と柔らかな毛、その下の太い根元が僕の中に埋められている。

 

「すごいね、チャンミンのここは。

俺のを突っ込まれてるんだよ」

 

僕の入口はユノのもので目一杯押し広げられていて、こんなに大きなものが刺さっているなんて...。

 

「動かすぞ」

 

「...うんっ」

 

僕の膝裏をつかみ、腰を前後に揺らし始めた。

 

ぐっぐと突かれる度に、腹底が押し上げられて苦しい。

 

くちゃくちゃとねばついた音が、静寂の場内に響く。

 

目がきかない暗闇で、ユノの荒々しい呼吸と僕のため息、マットレスの軋む音が、過敏な僕の聴覚を刺激する。

 

音だけで感じてしまう。

 

苦しい...苦しいけど、熱くて気持ちがいい。

 

滑らかに絡みつくユノの固さを味わい尽くそうと、感触に集中する。

 

美しいこの人を取り込む幸せを、穢され征服される悦びを味わい尽くす。

 

違和感と圧迫感が、快感に変わる瞬間をキャッチする。

 

「あっ...あっ...あっ、あっ...」

 

ぐりぐりと睾丸の裏側を刺激されて、僕はのけぞった。

 

なんだ、これ...やばい...。

 

気持ちいい。

 

ユノの首にしがみつく。

 

マットレスのスプリングの弾みを利用して、ユノはリズミカルに腰を振る。

 

「はぁ...はぁ...」

 

ユノが放つ甘ったるい香りを胸いっぱいに吸い込んだら、快感は増して頭の中が真っ白になった。

 

突き刺される角度を変えたくて、ユノの腰にぶらさがる。

 

「どう?」

 

「...っうん...いいっ...いい...すごく!」

 

「いい子だ」

 

尻の割れ目から垂れ落ちるものは、僕の中で温められたローションだ。

 

ユノのものが出入りする度、たらりたらりと溢れ出る感覚も、僕の欲を煽った。

 

「チャンミン...いい、いいよ。

お前の中は...最高だ」

 

ユノの低く、上ずった声。

 

たまらなくなって、ユノの頭を引き寄せて口づける。

 

「あっ...!」

 

先を握られ僕の背がびくりと震えた。

 

僕の内ももを濡らすものをなすりつけ、輪にした指でくびれの部分ばかり刺激される。

 

「はぅっ...」

 

のけぞる僕を、強靭なユノの腕で封じられる。

 

穴奥の刺激に、先端の刺激が加わって、快感を逃すコントロールがきかなくなってきた。

 

「...やっ...ダメっ...」

 

ユノは唇から離すと、僕の乳首に吸い付いた。

 

「くっ...駄目、駄目だって!

イっちゃうから...離せっ!」

 

ユノを押しのけようと腕をつっぱったが、彼の力は凄まじい。

 

「怖い...怖いっ!」

 

3方向から攻められて、強すぎる快感に足元をすくわれて足場を失い、どうにかなってしまいそうな恐怖に襲われた。

 

「怖い...怖い...やっ...やめてっ...もう!」

 

僕の懇願を完全に無視したユノは、顎をつかみ、歯を食いしばる僕の口をぴったりと覆った。

 

息継ぎが出来ず顎を緩めた隙に、ユノの舌が侵入してきた。

 

ユノの舌を追いかける余裕もなくて、なぶられるがままでいた。

 

ずるりとユノの口内に舌が引きずり込まれたかと思うと、甘噛みされる。

 

(噛まれる!)と覚悟したら、案の定、ユノの歯が瞬間的に食い込んで、パッと口の中いっぱいに血の味が広がった。

 

どちらが流した血か分からないくらい、口内を混ぜあう行為で、僕の下半身へ流れ込む血流が増したようだ。

 

ぐっと睾丸がせりあがってきたのが分かった。

 

「も...うっ、駄目...駄目!」

 

限界が近づいてきた。

 

「イっちゃうイっちゃうイっちゃう!」

 

まぶたの裏に赤い光が瞬く。

 

「いい...チャンミン...いいよ...」

 

ユノの首にかじりついていられる余裕を失った。

 

射精まで、あと少し。

 

ユノの腰のスライドが激しくなった。

 

がくがくと揺さぶられた...玩具のように、がくがくと。

 

ユノの腰を抱えた足首に力がこもる。

 

股間の筋肉が収縮した。

 

「イくっ...イくっ...くっ......!」

 

ふるふるっと腰が震えた。

 

そして、僕の上にユノの身体が崩れ落ちた。

 

 

 

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