ユノはチャンミンの尻から目が離せない。
噴き出すのを必死で堪える。
(ぷぷーっ!
チャンミン!
可愛いことしてくれるなって!
...しかし...指摘しづらいな)
ユノは、「シャワーを浴びた方が早いかな」と内腿に垂れたローションを拭くチャンミンを眺めていた。
(赤面するチャンミンを見てみたい。
さぞかし、可愛い反応を見せてくれるだろう。
『ユノ!ひどいよ!』と、滅茶苦茶怒るだろうけどな)
「タマがぬるぬるする!」
袋を持ち上げて股間を覗き込んでいたチャンミンは、無言でいるユノに気付いて、
「...ん?
ユノ、どうしたの?」
緩む顔を必死で真顔に保とうとしていたユノだった。
(チャンミンをこのまま放置しているのは、可哀想だ)
「チャンミン...すまん。
もう一回、ワンコちゃんになってくれ」
「えー!
今日はこれくらいでいいよ。
指も挿ったことだし、一歩前進したよね」
「いや、そうじゃない」
そう言って、ユノはチャンミンの背を押して四つん這いにさせる。
「ヤダなぁ。
気持ちよくもなんともないんだから。
1本だけにしてよね」
拒否しながらも、結局はユノの言いなりになるチャンミンに、愛おしい想いが溢れそうになるが、今は可笑しくて仕方ないのだ。
「チャンミン。
ケツの穴は大丈夫か?」
「う...ん。
まだ違和感はあるけど。
何かが入ったままな感じがするんだ」
「ケツを触ってみ」
ユノはチャンミンの手首をつかんで、尻の方へ導いてやる。
「!!!!」
「ぷぷーっ!」
噴き出すのを堪えるのも限界だった。
「何これ!
何かがはみ出してる!」
チャンミンは跳ね起きた。
恐る恐る尻をまさぐるとやはり...柔らかい何かが指先に触れる。
「嘘...!?
やだぁ!!
お尻から何かが出ちゃった?」
唇を噛みしめて、助けを乞うようにユノを見る目は潤んでいる。
(脱腸!?)
その思いつきに、チャンミンはささーっと青ざめた。
ユノは深刻そうに顔をこわばらせるチャンミンの肩を抱いて、耳元で囁いた。
「ごめんな、チャンミン。
これ...コンドームだよ」
「えええーーー!!」
「チャンミンが蹴りを入れただろ?
その時に、指が抜けちゃってさ」
「酷い!
酷いよぉ!」
チャンミンはユノを突き飛ばした。
そして、手探りでコンドームを引っ張るが、伸びるばかりで簡単には抜けてくれない。
「っうん...」
引っ張るたび、ぞくぞくと慣れない感覚が肛門から走って、力をこめられない。
「やっ...抜けない...。
ユノぉ、これ、ヤダ...取ってよ!」
後ろを振り向くチャンミンの目から、ぽろぽろと涙が溢れてきた。
「お願い...」
「俺にケツを任せてくれるか?」
チャンミンは勢いよく頷く。
仕方がないな、と大きく息を吐くと、ユノはチャンミンを再び四つん這いにさせた。
「どれどれ」
ユノは突き出されたチャンミンの尻の前に、あぐらをかく。
「リラックスして、ケツの力を抜けよ?」
「うん...」
チャンミンはずずっと鼻をすすり、こくこくと頷いた。
(お尻の穴の力を抜くって、どうやればいいんだろ)
緊張を解くように、ゆっくりと深呼吸をした。
「ひーふー、ひーふー」
(そういえば...冬に牛の出産実習があるんだっけ。
チャンミンのケツからぶら下がるゴム...羊膜に見えてしまうぜ。
...ってことを言ったら...。
止めとこう、どれだけチャンミンが怒るか予想がつかない)
チャンミンはがっくりと項垂れて、両手はシーツを固く握りしめている。
チャンミンの肛門からぶら下がる件のモノを摘まむ。
「んっ...」
そして、ツンツンと軽く引っ張ってみる。
「あぅっ...あぅっ...!」
ユノが与える刺激に、どうしても声が漏れてしまう。
背筋がぞくぞくとするのだ。
(挿れるより...出す方が...なんだか、たまらない...)
「あん...」
引っ張る度漏らすチャンミンの声が、ユノの耳には甘い響きに聞こえる。
「んっ...」
ユノは、チャンミンをあっさりと解放するつもりなんてなかった。
「おかしいなぁ...抜けないぞ。
どうするチャンミン。
こりゃあ、病院行きだぞ」
「えええぇぇぇぇ!?」
チャンミンをからかいたい気持ちが抑えられないユノだった。
「そんなぁ...恥ずかしすぎる!
ホントに抜けないの?」
チャンミンの脳裏に、処置室の固いベッドの上で横になって、尻をさらす姿が浮かんだ。
(...最悪だ...!)
「俺に任せろって。
力いっぱい引っ張ってもいいか?」
「うん」
チャンミンはぎゅっと目をつむった。
「行くぞ?」
(この辺で勘弁してやらないと、可哀想だ)
ユノはしっかりとコンドームの端をつかむが、ローションのぬるつきで手が滑りそうだ。
「よいしょっと」
人差し指にその端を巻き付けて、先ほどより強い力で引っ張る。
「んんーっ」
ゴムに引きずられてチャンミンのピンク色の縁がのぞいて、ユノの喉はごくりと鳴る。
(男のケツの穴に興奮するなんて...俺もここまで来たか...)
「んー!」
ユノの中に再び、チャンミンをいじめたい欲が湧いてきた。
「あとちょっと...」と言いながら、十分伸びきった辺りで手を離してしまったのだ。
「あぅっ!!!」
張力をたくわえたコンドームは、チャンミンの尻をパチーンと叩く。
チャンミンはびっくり仰天、頭からマットレスに突っ伏した。
「抜けた?」
「......」
尻に手を回すと、例のものは未だぶら下がっている。
「ユノぉ、まだあるし...」
チャンミンはむくっと、両手で抱きしめた枕から顔を上げた。
くっくっくっという声に、ばっと振り向くと...。
「あー!!!」
ユノが腹を抱えて転がっている。
「チャンミン...すまん...」
チャンミンはからかわれていたことに気付いた。
「酷い!
酷いよ!
ふざけてないで...僕は真剣なんだよ?」
「アーッハッハハハ!!!」
(チャンミンが...チャンミンが可愛すぎて...苦しい)
片手を振り上げてユノを叩こうとするフリをするが、所詮フリで、ユノの両肩を持って揺さぶった。
「酷いよ!
うっうっうっ」
眉を下げたチャンミンの顔がゆがみ、丸い両目からぽろぽろと涙がこぼれ落ちてくる。
「...チャンミン...」
「ユノなんて...っ...嫌いだ!」
枕に顔を埋めて嗚咽を漏らす姿に、「やり過ぎたな」とユノは反省する。
「...覚悟を決めてきたのにっ...。
それなのに...っく...。
僕を馬鹿にするなんてっ...っ...っ...」
「ごめんな?
チャンミン、ごめん」
謝りながらチャンミンの背中をさするが、「あっちいけ!」とその手を払いのけられてしまった。
(全裸で身体を丸めて泣く男...。
尻の方に視線をやると...やめておこう...。
笑えてしまうから)
ユノはため息をつき、ポリポリと首筋をかき、天井を仰いだ。
(俺が悪い。
ちとふざけ過ぎたからな)
「こっちに来い...チャンミン」
ユノはチャンミンの両肩に手をかけると、力任せに自身の方へ引き寄せた。
「あ!」
互いの筋骨たくましい肩同士がぶつかった。
「ごめんな...」
涙と鼻水でぐしゃぐしゃのチャンミンの頭を、ガシガシと撫ぜてやる。
「お前が可愛すぎたんだ」
「......」
チャンミンは次々と溢れる涙を止めようと、ユノの肩に目頭を押しつけた。
「ごめんな、ふざけて。
...駄目だなぁ、俺」
「うっ...っ...うっ...」
「なんでも面白がっちゃってさ。
ごめんな、チャンミン」
「......」
「好きな子には意地悪しちゃうんだよなぁ。
好きな気持ちの裏返しなんだ。
チャンミン、ごめんな?」
だらんと身体の脇に落としていたチャンミンの両腕が、ユノの背中に回される。
「...許す」
「ん?」
「許す」
ぼそっとした言い方が不貞腐れた風で、ユノはふっと口元を緩めた。
「機嫌は直ったか?」
こくんとチャンミンは頷く。
「チャンミン、好きだよ」
ユノはチャンミンの頭に腕を巻き付けて、抱きかかえた。
「ユノ...苦しい...」
そして、チャンミンの尻に手を伸ばして件のものをつかむと、素早く引っ張った。
「ひゃうん!!」
突然のことで驚いたのと、未知の感覚にチャンミンの身体は大きく跳ねたが、ユノに力強く頭をタックルされていたため、ユノの胸にしがみつくしかなかった。
「ほれ。
取れたぞ」
そう言って、チャンミンの鼻先で抜けたばかりのコンドームを揺らした。
「びっくりした...。
なんだよ...簡単に取れたじゃないか!」
チャンミンの羞恥を煽るように、しつこくコンドームを揺らすユノの手を押しのけた。
「ちょっと、ユノ!
恥ずかしいから、それ、捨ててよ!」
「はははっ」と笑って、ユノはそれをゴミ箱の方へ放り投げ、「おっと、外したか...まいっか」とつぶやくと、チャンミンの方を向き直った。
「チャンミン...」
左手でチャンミンの頬を包み、右手で前髪をかきあげた。
チャンミンはユノにされるがまま、顔を預けて、ユノの涼し気な眼差しに見惚れていた。
その表情は先ほどのふざけた空気はかき消え、熱っぽく色っぽい光をたたえた瞳に、チャンミンの顔が映っている。
ほんの数ミリ伏し目にした瞬間、斜めに傾けられたユノの唇がチャンミンのそれを塞ぐ。
最初は唇の柔らかさを確かめるためのキス。
触れて、押しつけて、離して...また触れて。
「嫌い、って言って...ごめん」
チャンミンはキスの隙間でつぶやく。
「いいって」
ユノは「ごめん」と紡ぐチャンミンの唇を、押しかぶせるように塞ぐ。
チャンミンもユノの下唇にしゃぶりつく。
そして、きつめに吸い付く。
「...っふ」
チャンミンの歯茎をユノの舌がなぞり、顎の力が抜けた隙にぬるりと熱いものが侵入する。
唇を離すと二人の間に透明な糸がひき、チャンミンはすかさずそれを舐めとる。
上顎をこすりあげられて、チャンミンの喉からかすれた呻きが漏れた。
「...んっ...ふっ...ん」
半開きになって潤んだチャンミンの目に、彼の長いまつ毛が繊細な影を落とす。
ユノの背中に回していた手が、彼の両頬に移された。
エアコンの効いた部屋は、寒いくらいだったが、チャンミンの手は熱く、ユノの頬も火照っている。
「っん...っん...」
首に巻き付けたユノの腕に力がこもり、チャンミンの身体の力が抜ける。
二人の身体は、ベッドに倒れこむまでの一連の流れを覚えている。
チャンミンを組み敷いたユノは、チャンミンの両膝を割った。
ユノの行為に驚いたチャンミンは、半身を起こそうとするがユノに腰骨を押さえ込まれてしまう。
「...っなに?
ユノっ...何す...?」
抗議の声を上げるチャンミンの口を、塞いでしまう。
チャンミンの膝の裏に腕を通すと、高く持ち上げた。
「ユノ!
ヤダっ...ヤダ...」
「いいから。
俺の腰を抱えて」
「えっ...?
えっ?」
「サルの赤ちゃんみたいに。
俺にしがみついて」
チャンミンは言われるがまま、ユノの腰に両脚を絡めた。
「何これ?
恥ずかしい...!」
「もっとケツを上げて」
「これ以上は...腰が痛い...」
「きついか?」
ぎくしゃくとしたチャンミンの動きを見て、
(女の子と男の身体って、造りが違うんだな。
女の子って、関節が柔らかいのかな)
と、ユノは思う。
「もしかしてっ...今から、『本番』?」
「いいや」
ふっと笑ったユノは、枕もとのボトルのキャップをくわえると、素早く開封して中身を手の平にこぼす。
互いの股間がこすれ合っている辺りに指を滑らす。
「...ひゃっ...」
そして、チャンミンの中心線に沿って指を這わせる。
目で確認はできず手探りだが「この辺り」と見当をつけた箇所に、指先を突き立てた。
「んぐっ...」
指の腹でクニクニと小刻みに揺らしながら、ユノはチャンミンの耳元で「好きだよ」と囁く。
熱い吐息がかかり、チャンミンの首筋に鳥肌がたつ。
「チャンミン...俺にキスして?」
「っん...」
真上に迫るユノの唇に、チャンミンは吸い付く。
ユノの指先の下の緊張が解けてきた。
唇を離して、チャンミンの耳たぶを咥えた。
舌で耳の凹凸をたどると、チャンミンの甘い喘ぎがこぼれる。
ユノの人差し指がつるりと飲み込まれていく。
「んんっ...」
軽く引いて、もっと深くへ指を沈めていく。
温かく、ねっとりと柔らかいもので、ユノの指はみっちりと包み込まれた。
この感触だけで、ユノの下腹部に血流が集まって、重ったるくうずくのだった。
小さく弧を描いてみると、ユノの腹の下でチャンミンの腰が小刻みに震えた。
「ひゃ...」
付け根まで入ったのを確かめると、ゆっくりと指を引き抜く。
チャンミンの腹底に、ゾクゾクとした震えが走る。
「ダメ...抜くの...ダメ...」
ユノは口を半開きにしたチャンミンの額に、唇を押し当てた。
そして、揃えた中指と薬指をチャンミンの繊細なチャンミンの入り口に当てる。
じれったくなるほどゆっくり押し広げながら、その2本をチャンミンの中に沈めていった。
「痛いか?」
「う...ううん...。
苦しい...やっ...
変な感じ...」
「やめようか?」
「やっ...」
「どっちだよ?」
「やめないで...」
こういう瞬間に、ユノの心はチャンミンにさらわれるのだった。
(つづく)
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