(15)恋人たちのゆーふぉりあ

 

 

~ユノ~

 

閉じた入口から目を離せずにいる俺の様子を、チャンミンはじっと見つめていたが、起き上がると、俺の腕を引っ張った。

 

「チャンミン?」

 

壁にもたれるよう促され、その通りにした俺の前に、チャンミンはすっぽり収まるように腰を下ろした。

 

俺は大股広げたチャンミンを後ろから抱える格好となった。

 

なるほど...。

 

まともにそこを目にして、怖気付く俺を気遣ったのだろう。

 

チャンミンの方も、俺の手の動きを見守ることができて恐怖が和らぐのだろう。

 

チャンミンは邪魔になるものを、両手ですくいあげている。

 

「チャンミン、ケツを持ち上げられる?

この姿勢はやりづらい」

 

「うん」

 

チャンミンは腰を前にずらし、両膝を抱えてそこを露わにした。

 

チューブの中身を、肘まで垂れるほどたっぷりと指にからめとった。

 

その指で巾着の口の周りを芋虫のように這わせた。

 

未経験の俺には、そこがほぐれているんだかいないんだか分からない。

 

チャンミンはくすぐったいらしく、腰をもぞもぞさせている。

 

「入った!」

 

数日前とは比べものにならないほどあっさりと、俺の中指は飲み込まれた。

 

チャンミンは後ろを振り向き、俺と目を合わせるとこくん、と頷いた。

 

「すごいな...特訓したんだ?」

 

「...うん」

 

チャンミンの健気さに、じんとしてしまう。

 

突っ込んだ指を中でぐるりと回転させてみたら、チャンミンは「うぐぐ」と呻いた。

 

「どう?」

 

「う...ん。

分かんない」

 

「自分でやってみてどうだった?」

 

「ユノのが入るサイズに広げることで精いっぱい。

気持ちいいと思えるには、まだまだ」

 

指先の感触に神経を研ぎ澄ませた。

 

温かくぬるぬるとした粘膜が吸いついてくる。

 

女の子の中よりも柔らかくはない。

 

俺の指の付け根をきゅうきゅう締め付ける入口は狭いけれど、中は広い。

 

俺なりに仕入れたハウツー通りに、中を探ってみた。

 

「ここは?」

 

「...んっ...。

...変っ...な感じ」

 

「ここは?」

 

「んふっ...ぞくっとした」

 

360度、順に小刻みに壁を刺激し、チャンミンの反応をみているのだ。

 

緊張しているらしいチャンミンの背中は強張っており、自ら膝を抱える腕も筋張っていた。

 

俺の方も全身が熱い。

 

チャンミンのものがどうなっているかは、腹と太ももにサンドされていて確かめられない。

 

「2本目...いってみる?」

 

「うん、いってみよう」

 

先日、小道具を取り寄せてはしゃいでいた俺たちの会話を思い出した。

 

「実験みたいに楽しもう」って。

 

今の状況こそまさしく『実験』だ。

 

チャンミンの反応を確かめながら、俺は彼の中をまさぐる。

 

チャンミンは、俺の指がもたらす感触に『気持ちいい』を見つけようとしている。

 

入口の縁を傷つけないよう、中指を追加した。

 

「...入った...!」

 

「きつくない?」

 

「う...ん、大丈夫」

 

「きつかったら教えて?」

 

「うん」

 

チャンミンの熱い肌と俺の汗が交じり合って、半径1メートルが熱帯のように蒸していた。

 

「動かすぞ?」

 

さっきと同じように、中を探っていこうとした時...。

 

「ユノ...」

 

「うそっ!

キツい?」

 

「キス...」

 

歯を食いしばって耐え忍んでいる表情を予想していたのに、背後へ振り仰いだチャンミンときたら。

 

ぽかんと開いた口、とろんと下がった目尻をピンク色に染めていた。

 

ごくり、と喉が鳴った。

 

チャンミンに埋めた指はそのままに、もう片方で彼の顎を引き寄せ口づけた。

 

「『いい』の?」

 

「まだ分かんないけど...。

ユノのが入っていると思うと...ドキドキする」

 

「そっか...」

 

チャンミンの言う通り、それがブツじゃなく指であったとしても、好きな奴の大事なとこへの侵入を許されたと思うと、感動に値する。

 

チャンミンの肩を抱き、彼の首筋に口づけつつ、探検を再開した。

 

指を動かすごとに、チャンミンの喉仏が震える。

 

この探り合いは...なんだ?

 

一体全体、どこの誰が、本来「出す」ところに挿れようと思いついたのだろう?

 

「特訓」すると、アレが挿いるサイズになるなんて、誰が最初に試してみたんだろう?

 

「開発」すると、そこは強烈な快感を覚える場所だなんて、誰が発見したんだろう?

 

そうか...人類の飽くなき性への探求心、さらなる性感を求めて試行錯誤の末、たどり着いたココ。

 

変態心がこのプレイに行きついたんだな、うん。

 

まずい...。

 

俺の悪い癖が出てしまった。

 

つまり、今この時、自分がしている行為について熟考し始めることだ。

 

後ろ抱きにしているチャンミンに意識を戻す。

 

俺はこの男が好きだ。

 

好きな奴とは裸になって抱き合いたい。

 

恋人同士が抱き合うとはつまり...挿入を伴うものなわけで...。

 

何度も言い聞かせていること...俺たちはそれぞれ穴が1つずつ足りない。

 

凸と凸同士が繋がりたければ、1つしかない凹に入れるしかないわけで...

...そこまでしないといけないのだろうか?

 

マズい...。

 

エロい気分が消えてしまった。

 

俺は首を振って、意識を「今」「ここ」に戻した。

 

予習で得た知識通り、「この辺りかな?」とそれらしい箇所をこすった直後。

 

「ひゃぅっ...!」

 

びくんとチャンミンの身体が跳ね、その肩が俺の顎を直撃した。

 

「!」

 

チャンミンは前方へ身を投げた。

 

「え...?」

 

たった今まで中に入れていた、2本の濡れた指だけが残された。

 

打ちつけた顎の痛みよりも、その場で突っ伏した姿勢でいるチャンミンが心配だった。

 

「どうした?

痛かったのか?」

 

「...違う。

すごかった」

 

「あそこか!

正解だったんだな!」

 

「ヤバいよ、そこ。

初めてだよ...あんなの」

 

「気持ちよかった?」

 

「そうなのかな?

とにかく、ヤバイ感じ」

 

「ヤバいんだ」

 

「うん。

あれはヤバい」

 

「もうちょっとやってみるか?」

 

「う~ん...。

怖いなぁ...。

心臓がもたないかもしれない」

 

「そんなに凄いんだ」

 

「ユノもやってみる?」

 

「な、何言ってんだよ!?」

 

「冗談だよ。

ユノんとこに入れたい興味はないんだ」

 

「へえ。

不思議だよなぁ。

どっちがそっちになるってのは、相手次第なのか、そいつの素質なのか」

 

「ホント、不思議だねぇ」

 

 

...その日、俺たちは無事に果たせたかというと...延期となってしまった。

 

下準備に全エネルギーを使い果たしてしまったのだ。

 

萎えてしまった俺はその後、うんともすんとも言わなくなった。

 

焦ったチャンミンは、こすったり口に含んだりと、頑張ってくれた。

 

チャンミンから施される初めてのエフだったのに、くすぐったいばかりで復活してくれない。

 

チャンミンのものも、ぐったりとしていたからおあいこだ。

 

焦らなくていい。

 

俺たちには時間はたっぷりとある。

 

夜ならば毎晩だって、会おうと思えば会えるのだ。

 

未知なる世界への扉はあまりにも大きく、これまでドアノブに手が届かなかった。

 

今の俺たちは、そのドアノブに届いたのだ。

 

次はそれをひねるだけ。

 

 

(つづく)

 

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