(13)俺の彼氏はオメガ君

 

~オメガは可愛い子ばかり~

 

誕生後すぐにオメガ属だと分かるケースよりも、チャンミンのようにある日突然、オメガ性が芽生えるケースの方が多い。

 

大抵の場合、外見の変化という前兆がある。

 

チャンミンもその変化に気付いていたが、それがオメガへ変属性する予兆だととらえておらず、初潮を迎えたときに「そういう意味だったのか」と合点がいったのだ。

 

 

2人が変属性してしまう少し前のこと。

 

自宅がお隣さん同士の2人は、登下校は常に一緒だ。

 

属性転換が起こる前、2人は恋人関係にはなかったが、2人の関係性を言い表すには「友人同士」は弱すぎる。

 

性的な関係を結んでいないだけの恋人関係、と言い換えてもいいだろう。

 

「付き合おう」とあらためて宣言しなくても、常に一緒にいることが当然だったからだ。

 

ユノにとってチャンミンは『チャンミン』であり、性別にこだわりはなかった。

 

(無かったけれども...)

 

 

男女問わずオメガの外見は一言でいうと、可愛いのだ。

 

(たまらない。

なぜだろう。

チャンミンが可愛らしい)

 

女性オメガはより女性的になり、護ってあげたくなる欲求をかきたてられる愛らしい小鹿感が増す。

 

さらに、オメガフェロモンがベータやアルファの性的欲求を煽る。

 

男性オメガも同様だ。

 

男性オメガは生殖器官を持つだけに、どうしても肉体的変化は女性らしさへと向かう。

 

隣を歩くチャンミンの横顔の、バサバサに長いまつ毛やふっくらとした頬、細い首のチャンミンに、ユノは見惚れてしまった。

 

(いける。

長身のボーイッシュな女子校生...くらいには見える)

 

そして、ぽろっと漏らしてしまった。

 

「お前...最近、可愛いんだけど?」

 

すかさずチャンミンは「気にしてるんだから、そーゆうこと言うな!」と、怖い目つきでユノ睨みつけた。

 

「へぇ...自覚はあるんだ?」

 

ユノはポカスカと叩いてくるチャンミンの手を、楽々ひねり上げた。

 

「うっ...そんなこと...ないよ...でも...」

 

「でも?」

 

「......」

 

「でも」の続きが聞きたかったが、チャンミンの語尾は消え行ったままだ。

チャンミンには自覚があった。

(体毛が薄くなり、喉仏も引っ込んだような気がする。

それだけじゃなくて...ユノには絶対に言えないこと。

アソコも小さくなってきたような...。

どうしよう!!

僕の中から『男らしさ』が薄まっていっているのだろうか!?)

 

ところが、その原因が何なのかわからなかった。

 

(ユノに相談した方がいいかな?

駄目だダメだ!

すごく心配して深入りしてくるか、面白がってゲラゲラ笑ってからかうか、どっちも嫌だ)

 

ユノは青ざめたり赤くなっているチャンミンを、何の口出しもせず黙って見ていた。

 

無理に聞き出そうとしたら、チャンミンは意固地になって口をつぐんでしまうことをユノは知っていたからだ。

 

(ま、いっか)

 

チャンミンは暗い表情になってしまっている。

 

ユノはチャンミンの首に腕を巻きつけて言った。

 

「何か食ってから帰ろうぜ!」

 

 

話は戻って、ここは診察室。

 

初ヒートを迎えたチャンミンは、生殖器官の発達具合を確認するため内診を受けることになった。

 

裸どころか、ナイーブな箇所まで観察されると知って、チャンミンは青ざめた。

 

「全部脱いだら、これを着てください」と、チャンミンに手渡されたのは、なんとも心細い化繊の布きれだった。

 

中央に開いた穴に頭を通し、脇腹を紐で結ぶデザインになっている。

 

風がふけばひらひらと、大事な部分がチラ見えしてしまいそうだ。

 

「......」

 

それを摘まみあげたチャンミンの表情は、渋く歪んだ。

 

医師も看護師も気を遣って席をたったが、どうせこの後すみずみまで内診されるのだ。

 

(仕方がない)

 

チャンミンはため息をひとつつくと、ネクタイを外し、シャツを脱ぎ始めた。

 

ユノはチャンミンが心配でたまらず診察室に居残ったが、どうにも落ち着かない。

 

「検査着ってのは、どこも一緒だなぁ」

 

ユノは患者用の丸椅子に腰掛け、スマートフォンを操作し出した。

 

着替えるチャンミンを眺めていたいのが本心だった。

 

まじまじと眺める前では脱ぎにくかろうという配慮もあったし、大好きな人の裸はドキドキする。

 

チャンミンも同様だった。

 

すみずみまで蛍光灯で照らされた、ロマンティックムードゼロの場。

 

『裸になるのはユノの前でだけ!』と言ってしまったが、いざここで衣服を脱ぎ捨てることに抵抗ある。

 

「...っ」

 

下着のゴムにかかったチャンミンの手が止まった。

 

(これを脱いだらナプキンを見られてしまう。

とめどなく溢れるオメガの果汁を受け止めるナプキンを!

恥ずかしい!!)

 

ユノは、ベルトを外そうとするチャンミンの手が止まったことに気付いた。

 

「やっぱ、席を外そうか?」と椅子から立ち上がろうとした。

 

「やだっ!」

 

「うげっ!」

 

席を立つのを妨げようと、チャンミンがユノのネクタイを掴んだのだ。

 

「ユノはここにいて。

ここにいて...ね?」

 

チャンミンの可愛い眼でねだられたら、ユノはそれを断ることができない。

 

(ユノはチャンミンに甘々なのだ)

 

ユノはふっと微笑むと、「分かった。側についているよ」と、浮かせた腰を椅子に下ろした。

 

「ここにいて。

お願い」

 

ベルトとボタンを外すと、チャンミンのグレー色のスラックスがぱさっと床に落ちた。

 

むん、と甘い香りがユノの鼻を襲った。

 

「ぐっ!!!」

 

ユノは鼻を覆った。

 

脳みそに何かが直撃した。

 

ガツン、と。

 

視界がぐらり、と揺れた。

 

(何だ...!?)

 

ユノの股間のあたりにウズウズと、力がみなぎり始めた。

 

下着が窮屈になってきた。

 

(これは...!

勃つ!

マジかよ!

ここで勃つのか!)

 

チャンミンの股間はこれまで目にしたことはあった。

 

チャンミンが心配なあまり、邪な欲情無しに彼の生理の手当てもできたのに。

 

(そそる...)

 

上半身はブレザーまで着込んだままで下半身はむき出しの裸...マヌケと言っていい格好。

 

にもかかわらず、ユノは反応してしまったのだ。

 

 

(つづく)

 

[maxbutton id=”23″ ]