(54)オトコの娘LOVEストーリー

 

~ユノ~

 

「最低!

あなたはクズよ!

最低!

浮気者!」

 

リアの振り回す腕が、俺の顔や頭を打ち付ける。

 

「まるで私だけが悪いみたいに責めるなんて卑怯者!

好きな女がいるのなら、はっきりそう言えばいいじゃないの!」

 

リアの言う通りだったから、俺は叩かれるままでいたけれど、さすがに...痛い。

リアの手首を持って動きを封じたら、彼女は崩れるように床に座り込んでしまった。

 

「どんな子?

私の知っている子?」

 

俺はリアの質問に答えず、彼女の手を引っ張って立ち上がらせようとした。

と突然、リアが俺の首にかじりついてきた。

リアの肩を抱くべきか、彼女の腕を振りほどくべきか悩んでいた。

「好きな女がいるんでしょ?」の台詞で、視界が開けたような気がしたんだ。

リアには悪いけれど。

リアとの関係を清算しようと決意した理由。

リアとの生活がむなしくて、彼女への興味が薄れてしまったのは常日頃感じていたことで、「別れた方がいいのでは?」の気持ちは湧いては打ち消していた。

気持ちを打ち消していた理由は、変化を恐れていたこと。

過去に交際してきた女性たちとの間で経験した、辛かった時期を思い起こす。

関係を清算する際に発生する事柄...。

例えば...別れ話中のすったもんだ、引っ越し手続きと持ち物の線引き、友人たちへの説明...そして、心を襲う寂しく悲しい想い。

リアの反応が怖かった。

そんな中、優柔不断な俺の前に“あの子”が現れた。

その日の夜に、俺はリアとの別れを決意した。

好きな人ができたから、リアと別れようと決意したんだった。

俺の気持ちが、ここで初めて明確になったのだった。

 

「別れる前に、ひとつだけお願いを聞いてくれる?」

「ああ」

 

リアと別れられるのなら、何でもしてやろうと思った。

最後のお願いを叶えてやろうと思った。

この時の俺のずるい考えが、その後の物事を複雑にしてしまったのだ。

 

(つづく)