(29)TIME

 

 

チャンミンはシヅクの腕をつかんで、リビングまで引っ張っていく。

 

​「チャ、チャンミン?」

(話があるって...愛の告白か!?)

​(いきなり過ぎんか?)

シヅクをソファに座らせると、チャンミンはシヅクと向き合った。

(真面目な顔して...「好きです」とか言い出すんか?)

「シヅク!」

シヅクの胸は高まる。

「どうやって家に入ったんだよ?」

​(あれ?)

「それは~...アハハ、チャンミンは知らなくていいことだよ」

「そういうわけにはいかない!」

「...つまりだな、あんたんちのセキュリティの甘さが原因だ」

チャンミンは、目を細めている。

(ヤバッ、チャンミン、怒ってる?)

「......」

(チャンミンが怒ってるとこ初めてかも...)

「あれくらい、私の手にかかれば、赤子の手を捻るかのよう...」

チャンミンがぼそりとつぶやく。

「不法侵入」

「...だよね」

「犯罪!」

「うん、その通り」

「お願いだから、『普通に』入ってきてよ」

「ごめんなさい」

素直に謝るシヅクに、チャンミンもこれ以上キツく言えなくなった。

しゅんと肩を落としたシヅクのピアスが、きらりと光る。

(めちゃくちゃ言い訳するかと思ってたのに...)

チャンミンは声のトーンを落とす。

「...謝ってくれたから、気が済んだからさ、

さぁ、仕切り直そう...って、えっ?」

シヅクが両手で顔を覆っている。

(泣いてる?)

「もう怒ってないから、ね、シヅク、ごめん」

「......」

シヅクは顔を覆ったまま、無言だ。

チャンミンは、すっかり動揺してしまって、ソファまですり寄って、シヅクの膝に手を置く。

「ごめん、シヅク!」

「......」

ソファに座るシヅクを見上げる。

「機嫌を直して、ほら、もう怒っていないから、な?」

「......」

シヅクの口角が、上がってきた。

「クククク...」

「え?」

「アハハハハハ!」

堪えきれず笑い出したシヅクに、チャンミンの口はポカンと開いたまま。

シヅクが自分をからかっていることに、気づくチャンミン。

「ちょっ、ひどいよ、シヅク!」

ふくれるチャンミンに、シヅクはチャンミンの肩をポンポン叩いた。

「シヅクさん、何のこれきし、簡単には泣かないんだな」

シヅクは、再び機嫌を悪くしたチャンミンを覗き込む。

「機嫌を直して、チャンミン、ね」

自分の言動に、すぐさま反応するチャンミンを可愛らしく思えて、シヅクは思わずチャンミンの頭をなぜていた。

「さぁ、一緒にご飯を食べようか。

腹が減ってるから機嫌が悪いんだね、僕ちんは?」

「子供扱いするな」

シヅクの手を払って立ち上がったチャンミンだったが、耳まで真っ赤だった。

シヅクに触れられて、ゾクゾクしていた、全身。

(だから、シヅクのスキンシップに弱いんだって!)

キッチンに向かいながら、チャンミンは、感情をあらわにした自分に驚いていた。

感情が、自分の胸内に激しく渦巻いていた。

​胸の鼓動が早い。

(シヅクといると、新しい僕が次から次へと、発見される)

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