~チャンミン~
僕は、シヅクにキスをしていた。
とっさのことで、
当たり前で、自然な行為だった。
あの時は、そうせずにはいられなかった。
気づいたら、僕の唇をシヅクの唇に重ねていた。
僕の全神経は、シヅクの唇の感触に集中していた。
しっとりと、柔らかい。
僕は目を閉じていたから、シヅクの表情は分からない。
今夜の僕は、シヅクの一挙手一投足に、全神経を傾けていた。
僕の言うこと、やることに、直球で返ってくるシヅクの反応が楽しい。
グラスを持つ細い手首や、短い襟足の髪から伸びる白い首が、僕の胸を締め付ける。
シヅクの目と僕の目が合う度、心臓の鼓動が早くなる。
シヅクが僕に触れると、お腹の底が熱くなる。
ボーイッシュな見かけと乱暴な言葉使いの裏には、彼女の温かい心が隠れている。
「不法侵入」したシヅクに対して、ムカッとしたけど、最初からシヅクを許していた。
怖い顔と言葉に、シヅクがどんな反応を示すのか、見てみたかった。
シヅクの見せる反応全てが、僕をたまらなくさせる。
食事をしながらもずっと、シヅクを見ていた。
彼女に楽しんでもらいたかった。
僕のもてなしのどこかに、「不正解」があったかもしれない。
シヅクなら、大らかに受け止めて、笑いにしてくれる。
シヅクに触れられると、僕の細胞全部が反応する。
くすぐったくて、幸せで、嬉しい、心地よい。
同時に、たまらない気分になる。
僕から、シヅクに触れたい。
シヅクからじゃなく、「僕から」。
シヅクの耳に触れた時、
僕はギリギリだった。
指が震えるのを抑えて、
金具にひっかかった糸を解きながら、
僕より小さい身体や、細い首を間近で見て、
「ああ、シヅクは女のひとなんだ」と、強く意識した。
多分...初めてだ。
僕の過去のことはよくわからないし、考えたくないから、今はそっとしておく。
僕は、とても緊張していた。
焦って、シヅクの耳を傷つけないように、一生懸命だった。
彼女が、絶対に壊したらいけない宝物に見えてきた。
毛糸が外れて解放された、シヅクの赤くなった耳たぶと、
ホッしたシヅクの表情を見たらもう...
我慢できなかった。
気づいたら、シヅクの首を引き寄せて、
彼女にキスしていた。
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