「非常時だから、許されるハズ」
リストバンドをドアノブ下のプレートに当て、リストバンドとPCをケーブルで繋いだ。
(落ち着け~、落ち着け~)
シヅクは、焦って震える手にイライラしながら、キーボードを打つ。
「よし!」
最後のキーをタップすると、カチッ、と音がして、プレートに灯ったランプの色がグリーンに変わった。
「開いた!」
(今からシヅクさんが、助けに行きますよ!)
シズクはドアノブのレバーを押し下げ、部屋の中にするりと入った。
「チャンミーン!」
シヅクは大声で叫ぶ。
玄関から突き当りのリビングの照明はついている。
ソファの陰に、チャンミンが転がっているかも、と恐る恐るのぞく。
(いない!)
「チャンミーン!」
(隣の部屋か?)
リビングに向かって右手にあるドアが半開きだった。
部屋が暗くて様子がわからないが、どうやら寝室らしい。
「わっ!」
(ベッドの下の、あの長い塊は............チャン・・・ミン?)
(まさか!)
血の気がひくシヅク。
「チャンミン!」
(どうか息がありますように!)
シヅクは、揺さぶろうと勢いよく手を伸ばした。
「チャンミ.....」
「.........ったく、布団かよっ!」
シヅクは、苛立ちのあまり、つかんだ布団を殴り捨てた。
「チャンミンの馬鹿!」
(チャンミン...頼む!生きてて...!)
心配で心配で、シヅクの胸はハラハラドキドキ、苦しかった。
シヅクの顔は、もはや半泣き状態だった。
「チャンミーン!」
(どこで倒れてるんだ、あいつは?)
「かくれんぼしてんじゃねーぞー!」
リビングに戻り、真向いにドアが2つ。
(どちらかが、トイレ)
(トイレで倒れる人って多い、とよく聞く話だよな)
シヅクの頭に、トイレに腰かけたまま、ぐったり壁に寄りかかるチャンミンの姿が浮かぶ。
シズクは、ゆっくりとドアレバーを回し、ドアを引く。
「チャ.....」
「......って、いないじゃんか!」
白いタイルがまぶしい、清潔そうなトイレは、無人。
(ったくもー!びっくりさせやがって!
ほっとするやら、ドキドキするやら!)
かけられた黒色のタオルに、
(おっ!センスいいじゃん
って......感心してる場合じゃない)
「チャンミーン!!」
(残るドアはあと一つ...バスルームだ。
出しっぱなしのシャワーのお湯に打たれて、
床に倒れたチャンミン。
若しくは、
バスタブに浸かった状態で、だらりと手をバスタブから出してて...!)
「チャンミーン!」
(頼む!無事でいて!)
「生きてるかー⁉」
シヅクは、勢いよくドアを引く...。
「ひぃっ」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
シヅクは腹の底から、悲鳴を上げたのだった。
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