(10)TIME

 

「非常時だから、許されるハズ」

リストバンドをドアノブ下のプレートに当て、リストバンドとPCをケーブルで繋いだ。

(落ち着け~、落ち着け~)

シヅクは、焦って震える手​にイライラしながら、キーボードを打つ。

「よし!」

最後のキーをタップすると、カチッ、と音がして、プレートに灯ったランプの色がグリーンに変わった。

「開いた!」

​(今からシヅクさんが、助けに行きますよ!)

シズクはドアノブのレバーを押し下げ、部屋の中にするりと入った。

「チャンミーン!」

シヅクは大声で叫ぶ。

玄関から突き当りのリビングの照明はついている。

ソファの陰に、チャンミンが転がっているかも、と恐る恐るのぞく。

(いない!)

​「チャンミーン!」

(隣の部屋か?)

リビングに向かって右手にあるドアが半開きだった。

部屋が暗くて様子がわからないが、どうやら寝室らしい。

「わっ!」

(ベッドの下の、あの長い塊は............チャン・・・ミン?)

(まさか!)

血の気がひくシヅク。

​「チャンミン!」

(どうか息がありますように!)

シヅクは、揺さぶろうと勢いよく手を伸ばした。

「チャンミ.....」

「.........ったく、布団かよっ!」

シヅクは、苛立ちのあまり、つかんだ布団を殴り捨てた。

「チャンミンの馬鹿!」

(チャンミン...頼む!生きてて...!)

心配で心配で、シヅクの胸はハラハラドキドキ、苦しかった。

シヅクの顔は、もはや半泣き状態だった。

「チャンミーン!」

 

(どこで倒れてるんだ、あいつは?)

「かくれんぼしてんじゃねーぞー!」

リビングに戻り、真向いにドアが2つ。

(どちらかが、トイレ)

(トイレで倒れる人って多い、とよく聞く話だよな)

シヅクの頭に、トイレに腰かけたまま、ぐったり壁に寄りかかるチャンミンの姿が浮かぶ。

シズクは、ゆっくりとドアレバーを回し、ドアを引く。

 

「チャ.....」

「......って、いないじゃんか!」

白いタイルがまぶしい、清潔そうなトイレは、無人。

(ったくもー!びっくりさせやがって!

ほっとするやら、ドキドキするやら!)

かけられた黒色のタオルに、

(おっ!センスいいじゃん

って......感心してる場合じゃない)

「チャンミーン!!」

(残るドアはあと一つ...バスルームだ。

出しっぱなしのシャワーのお湯に打たれて、

床に倒れたチャンミン。

若しくは、

バスタブに浸かった状態で、だらりと手をバスタブから出してて...!)

「チャンミーン!」​

​(頼む!無事でいて!)

「生きてるかー⁉」

シヅクは、勢いよくドアを引く...。

「ひぃっ」

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

​シヅクは腹の底から、悲鳴を上げたのだった。

 

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