~チャンミン~
悲鳴は同時だった。
「いやぁぁぁぁぁぁ!!」
「うわっ!」
僕は自分でも驚くほどの大声を出していた。
こんな大声を出したのは、生まれて初めてかもしれない。
目をまん丸にして、尻もちをついているのは...シズクじゃないか!
シヅクの視線が、僕の顔からゆっくり下りていく。
僕はハッと気づいた。
「わっ!」
大急ぎで僕は、タオルで下を隠す。
シヅクは僕に視線をロックオンしたまま、固まっている。
(見えた...よな?)
なんて間抜けな姿してるんだ、僕は。
尻もちをついた姿勢から、ゆっくりと立ち上がった。
(は、恥ずかしい...!)
ぐんぐんと全身が熱くなってきたのが分かる。
「あっちへ行って...」と言いかけたその時、
ドスンと、僕に突進してぶつかる衝撃。
「!」
シヅクが僕に体当たりするかのように、抱きついてきた。
シヅクは僕の首を絞めんばかりに、腕を強く巻き付けている。
「えっ...」
濡れた僕の体に、シヅクの乾いた洋服が押しつけられているのがわかる。
「あの...」
(困った、困ったぞ...)
さらにぎゅうっと、シヅクの腕の力が増す。
「く...」
息ができない...。
「く、苦しい...」
僕のものを隠していたタオルがポトリと落ちる。
「......」
シヅクは黙ったまま、僕にかじりついたままだ。
「ぼ...」
たまらなくなって、シヅクの両肩を持って、彼女を引きはがした。
「ぼ、僕を締め殺す気か!?」
(え...?)
驚いた。
僕に両肩をつかまれたままの、30センチの距離のシヅクが、泣いていた。
泣きながら、僕を睨んでいる。
「ば、馬鹿者―!」
シヅクが大きな声を出すから、驚いて僕は彼女の肩をつかんだ手を離してしまった。
シズクの充血した目から、ボロボロと大粒の涙が落ちてきた。
「シヅクさんに心配かけさせやがって...」
「めちゃくちゃ、心配したんだぞー!」
「っ!」
今度は、シヅクは僕の胸にしがみついてきた。
(えっ.....?)
「うわーーん」
大泣きしだした。
「ホントに、心配したんだぞ!」
「もう、死んじゃったかと思ったんだぞ!」
「は?」
(僕が、死ぬ...?)
「えっ...と、僕はただ、シャワーを浴びていて」
シヅクが何を言っているのか、さっぱり理解できなかった。
(どこでどう繋がると、僕が死んじゃうことになるんだ?)
シヅクの熱い涙が、僕の胸を濡らしている感触がよくわかる。
次から次へと、流れている。
(一体全体、この状況はなんなんだ?)
「お見舞いに来たのに、チャンミンは出てこないから、
倒れたままなんじゃないかと思って。
昨日、具合が悪かったし。
だから、うちの中探し回ったのに...。
チャンミン、どこにもいないし。
風呂場で死んでるんじゃないかと思って」
(そういうことか...)
ずずーっと鼻をすする音。
きっと僕の胸は、シヅクの涙と鼻水でベタベタだ。
僕の口元に、シズクのショートヘアのてっぺんがさわさわと触れている。
また、シトラスの香りがした。
(参ったなぁ...)
なんだか...もう...たまらない気持ちになった。
[maxbutton id=”1″ ]