(36)TIME

 

「ごめんとはどういうことだよ!」

チャンミンには、シヅクの言葉の意味が分からなかった。

​「それは...シヅクに、悪いことしたなって」

「ほほぅ」

「だから、ごめん」

​「悪いことしたって、チャンミン君、何しちゃったの?」

「ぐっ」

(口に出して言えないよ、そんな恥ずかしいこと)

「悪いことって、な~に?」

シヅクは小首を傾けて、にっこり笑った。

「教えて、チャンミン?」

(からかうと、面白いな)

​「シヅクに...その...キ、キスしちゃって...悪かったなって」

シヅクはニヤニヤ笑っている。

(シヅクはまた、僕をからかっている!)

「ねぇ、チャンミン」

仁王立ちしていたシヅクは、再びチャンミンの隣に座った。

「後で謝るくらいなら、キスなんてするな!」

「え?どういう意味?」

​「あのな、私らはいい年した大人なわけ。

キスしたくらいで、いちいち謝るな!

謝るくらいなら、キスするな!

謝るのなら...

うーん、そうだな...」

シヅクはしばし考えた後、

「酔った勢いでヤッちゃった後にしろ!」

一気に話すシヅクを見るチャンミンは、ぽかんとしている。

「...自分でも分からないんだ...つい、したくなって...」

「あー!やめやめ!」

​「うぐっ」

シヅクの片手が伸びて、チャンミンの口を塞いだ。

「いちいち説明せんでもいい!

余計照れるだろうが!」

(シヅクは、どうってことないのか?

僕の胸はまだ、ドキドキしているのに)

「私に謝らなくてもよろし」

シヅクはチャンミンの口を塞いでいた手を、外した。

「シヅクにとって...大したことないんだ?」

「そういう意味じゃないって!」

​シヅクは頭を抱えている。

(だから、やりとりが男女逆なんだってば!)

「あーもー!めんどくさい奴やなぁ!」

 

(!)

シヅクの両手で、チャンミンの頬は挟まれた。

​(近い近い!)

15センチの距離にあるシヅクの顔に、チャンミンののどがゴクリと鳴る。

シヅクも、両手に挟んだチャンミンの熱い頬と、見開いた彼の目を凝視する。

(丸い目しちゃって、可愛いなぁ)

「もう一回する?」

 

「な、何を?」

(とぼけてるのか、本気でわかってないのか...)

「決まっとるだろうが!」

「そ、それは...」

​(あーもー、面倒くさいやつだ!)

シヅクの耳にも、チャンミンが鳴らすのどの音が聞こえる。

(緊張しちゃって、可愛い)

​「嫌か?」

シヅクはさらに、顔をチャンミンに近づける。

​「い、嫌じゃ...ないです」

シヅクの手の中で、チャンミンは首を振る。

「そっか」

「......」

チャンミンは、ギュッと目をつむる。

​(目をつむっちゃって、女子高生か!)

シヅクは、​チュッと音をたてて、チャンミンのおでこにキスをした。

(あれ?)

シヅクの両手から解放され、目を開けたチャンミン。

すがるような目をしたチャンミンに、ほほ笑むシヅク。

​「あんたがリードせんといかんよ、チャンミン」

​「そ、そうだね」

(さらっと言っちゃうんだ)

「次はもっとロマンティックに頼むよ」

​動揺を隠して、シヅクは冗談っぽく言うと、チャンミンは白い歯を見せて笑った。

​「そうするよ」

​「はぁ?」

(はっきり言っちゃうんだ、そこ)

「素直に答えられても、反応に困るんだよ、チャンミン!」

​シヅクの言葉に、きょとんとするチャンミン。

​(可愛らしい顔のくせして、この男...モジモジ君は撤回だ!」

 


「さぁ!」

チャンミンは、勢いよく両膝を叩いた。

​「シヅク、デザートにしよう!」

 

「はい?」

​スタスタとキッチンへ歩いてゆく、裸足のチャンミン。

「いろいろあったから、お腹が空いた」

「もう?」

​(いろいろあったって...何よ。

私の方だって、心がめまぐるしかったよ)

「お腹空いた、ってな、まだ30分しか経ってないぞ?」

シヅクはチャンミンを追って、キッチンへ。

​「私も手伝うよ、コーヒー淹れようか?」

シヅクは、コーヒーサーバーに水を入れようとすると、ひょいとチャンミンから取り上げられた。

「シヅクは皿を持って行って」

チャンミンはシヅクの背中を押して、キッチンから追い出した。

「君のコーヒーは恐ろしくて飲めない」

「何だとー!」

 

[maxbutton id=”1″ ]