~埋められた指~
ユノはそそり立った僕のものを、ゆらゆらと揺らした。
ユノの指が僕の先端から離れると、糸が引く。
「挿れたいか?」と僕に問う。
「ああ」と僕は答える。
拒むわけない、僕が待ち望んでいることだから。
「挿れたいって...どこに挿れたいの?」
「...っ」
欲の炎でぎらついた目をしたユノに問われ、僕は言葉を失ってしまうのだ。
僕に厭らしいことをしてくるくらいだから、ユノは男同士の行為に馴れているものだと思っていた。
僕の方も何ら、抵抗はない。
だから僕は、ユノを太ももの上に座らせて「ここに」と言って、彼の尻の割れ目を指でなぞった。
「そっか...チャンミンは挿れたいんだ」
ユノはにたりと笑うと、僕の首に両腕を回した。
僕はユノの顎をつまんで唇を開かせると、舌を伸ばして彼の口内を探った。
口づけながら、ユノのボトムスのボタンを外し、ファスナーを下ろす。
緩んだウエストから片手を滑り込ませて、ユノのすべらかな腰の奥の奥を探った。
「慌てるなって」
今まさにユノの入口に指がかかったとき、僕の手首ははねのけられてしまった。
「俺たち...凄いことになってるよ?」
ユノの視線の先につられて真下を見下ろした時、目に飛び込んできた光景にくらくらしてしまう。
天を向くユノのものと僕のもの。
似たようなシチュエーションは初めてではない。
お互いが初めて同士で、直前で怖気づいてしまった僕のせいで、場が白けてしまったのだ。
同級生の尻を前に、僕のものは急速に萎れてしまった。
僕の膝にまたがるユノ。
前だけを寛げたところから、さらけ出されたユノ自身。
ユノはとても...興奮している...僕以上に。
ユノの尻にまわした僕の手は震えていた。
僕は...うまく出来るのだろうか。
「どうする、チャンミン?
俺たち...こんなだよ?」
ユノは自身のものを揺らして、僕のものをとんとん叩く。
「...っ」
「チャンミンは、挿れたいのか?」
「...うん」
「お前...俺の尻に突っ込みたいわけ?」
こくりと頷く僕に、ユノは唇の片端だけゆがめて、再びにたりと笑った。
妖しくて美しいダークブルーの瞳。
「その前に...俺のも満足させてくれよ?
しごけよ」
そう言って、握らされたユノのもの。
その太さと固さに、僕の喉はごくりと鳴る。
自慰の時のように、手を動かしたんだけど...。
「下手くそ。
そんなんじゃ、いつまでたってもイケないよ」
ユノの言葉に、僕はぎくりとして彼を見上げた。
「ごめん...」
ユノをがっかりさせてしまったと、僕の顔はしょげ返った。
ユノは僕の上から降り、僕の腰をつかんだかと思ったら、今度は僕の方が彼の両腿にまたがっていた。
「こうやるんだよ」
ユノは人差し指をしゃぶって、それにたっぷりと唾液をまとわせた。
この後の展開が読めず、唾液でぬめぬめとした人差し指から目が離せずにいた。
「あっ...!?」
腰にまわされた両手が、僕の両尻を左右に押し広げたんだから、驚いてしまう。
ユノが何をしようとしているのかが分かった。
「なにすっ...!」
「チャンミンにやり方を教えてやるんだよ」
「やっ...駄目だっ...そんなっ...!」
そして容赦なく、僕のそこでグネグネと指先をうごめかすのだ。
「駄目っ、汚い...っから!」
ぞわぞわとその一点から、悪寒のようなものが走る。
「何で僕が...ここをっ...!?」
くすぐったいのと、未知への恐怖と慣れない感触に、僕のものは急速に勢いを失っていく。
挿入するのは僕の方だと決めてかかっていたから、ユノに尻をいじられるなんて予想外の流れで、ついていけないのだ。
「気持ちよくさせてやるよ」
腕をつっぱっても、膝から降りようとしても、どんなに抵抗しても、僕の腰を抱えたユノの力は凄まじいのだ。
びくともしない、とはこういうのを言うのだろう。
僕はもう、観念して、虎ばさみにかかった動物のように、ユノに身を預けることにした。
尻をいじられるなんて、おかしな展開になってしまったけど、ユノは経験豊富に見えるし、彼に任せていればいい、きっと...きっと、いい思いをさせてくれる。
それにしても、尻を触られるなんて...初めてだ。
未だ経験がないのだとしても、挿れるのは僕のはずだったから。
途中何度か唾液を足しながら、入り口を緩めていくユノの指。
差し出されたユノの人差し指を...僕の穴に突っ込んでいた指...僕は何の躊躇もなく咥えた。
「いい子だ」と、ユノはふっと優しい微笑を見せると、僕の唇を塞ぐのだ...まるで穢れた僕の口内を清めるように。
尖らせたユノの舌を、僕は咥えて前後に頭をスライドさせる。
ユノの首筋からあの甘い香りが、ふわっと漂った。
僕はギュッと目をつむり、それを胸いっぱいに吸いこんで、頭の芯がしびれるのに任せた。
ぺちゃぺちゃと湿った音が、車内に満ちる。
時折、車が通り過ぎる。
「...チャンミンのここ...慣れてないね。
自分でいじったこと...ないの?」
僕は勢いよく、首を左右に振る。
緩みかけた穴に、ユノの指先がじりじりと埋められていく。
「...っ...ふ...ああっ...駄目」
尻から広がる感覚に変化が訪れるまでに、大した時間はかからなかった。
いつの間にか僕は、甘い悲鳴をあげているのだ。
ユノの指に合わせて、僕は全身をビクビクと震わせていた。
なんだ...この感覚は...!?
「...ひゃ...あ...あ、あ、あ、あ、あ...」
苦痛に近いんだけど、痛いわけじゃない。
ユノの冷たい指が、僕の中へ逆流していく。
「...んぐっ...ダメっ...奥...もうダメ」
「大して挿ってないぞ?
これくらい...ビビるなよ」
「違っ...怖くはっ...ない...!」
「これは?」
直後、目の奥が真っ白になって、僕の身体は激しく跳ねる。
「あああっ...ん!」
直に触れたらいけない場所を...例えば、喉の奥を、内臓を触られたような。
「...チャンミン。
素質があるなぁ。
ホントにここを使ったことないの?」
「...ないよっ...」
なんだ、この感じ...。
立っていた地面の蓋が開いて、足からすとんと穴に落ちる感じ。
そして僕は、温かくて甘い蜜の井戸にどぼんと沈むのだ。
この時には僕の全身から力が抜け、完全にユノにゆだねていた。
ユノは服を着たままだったけど、僕の熱い頬が彼の冷たい肌に冷やされて気持ちがよかった。
「ほら...2本目。
いやらしいなぁチャンミンのここは。
挿れられるためにあるようなものだ。
ゆるゆるだぞ...これは?」
「...っは...」
「いい反応だ。
これなら、もう少し慣れせば俺とセックスができるぞ?」
「え...?」
ユノの発言に驚いて、身を起こしてしまった。
『セックス』のワードに激しく反応してしまったのだ。
望んでいたことなのに、立場が逆になっていた。
昨夜の僕は、僕に貫かれるユノを妄想して抜いていたのに...。
「チャンミン。
俺のとこに、挿れたいか?」
僕の気持ちを見透かしているユノ。
「ううん」
「じゃあ...挿れられたいか?」
数秒、逡巡した後、僕はこくりと頷いた。
「よし、いい子だ」
ユノは僕の頬をつるりと撫ぜた。
「チャンミン、自分とこ見てみろ」
確かに...ゆるく勃ち上がった僕のもの。
「ちゃんと感じてて、いい子だ。
イカせてやるよ」
顎までつたった僕の唾液をユノは舌で舐めとると、僕の唇を隙間なく覆った。
間近に迫ったユノの紺碧色の瞳と目が合う。
「...んっ!」
ユノの左手は僕の尻に、右手は僕のものをしごいている。
同時に攻められて、僕の下半身丸ごとどこかへ行ってしまいそう。
首を振ってユノのキスから逃れた。
素早く、複雑にうごめくユノの手の中で、僕のものは硬度を増していく。
と同時に僕の穴の中でも、指の腹で腸壁のある個所がとんとんと刺激されている。
「駄目だよっ...
出ちゃうから」
レザーシートを汚してしまう。
出したらいけない、出したらいけない、出したらいけない、出したらいけない!
「駄目だって...ユノっ!
離して!」
「いい子だ」
「...あっ...あぁぁぁ!」
かすれた悲鳴と共に、僕は射精した。
2日の間に、よくもこう出せるものだと呆れるくらい、放出しきるまで何度も痙攣を繰り返した。
ユノの肩に頭をもたせかけ、僕は息も絶え絶えだった。
「チャンミン...お前もしかして...童貞だろ?」
ずばり聞かれて、一瞬の間をおいて、僕は頷いた。
「どうして、分かった?」
「チャンミンの身体は、素直過ぎるからね」
にやりと笑ったユノの唇の、そこだけが紅色で、美味しそうだと思った。
・
「チャンミンはいつまでここにいる?」
今になって、自分は帰省中の身で、4日後には寮に戻らなくてはならないことを思い出した。
ユノと会えるのはあと4日。
「4日もあるんだ。
ふふふ。
たくさん愛し合おう」
ユノは僕の額にキスをした。
僕はユノを深く抱きしめた。
(つづく)