なぜ、こんな状況になっているんだ?
なぜ俺は、美しすぎるゲイボーイと一緒に風呂に入っているんだ!?
チャンミンは湯船につかり、俺は洗い場で身体を洗っていた。
チャンミンは俺から目を反らさない。
「......」
落ち着かない俺はシャンプーボトルやタイルの柄模様を、さも興味深げに観察しながら、ボディブラシ(柄のついた、外国映画で登場してくるみたいなアレだ)を動かしていた。
今この時、チャンミンの照準が俺の身体のどこにロックオンしているのか...シャンプーの濯ぎ中で目をつむっていても分かるんだからな。
俺のシモの毛が何色なのか、興味津々だったからな。
そういう俺の方だって、チャンミンの身体をちらちらと見てしまった。
肌の色は俺よりも色黒なのに、あそこの色素が薄いところがエロい。
チャンミンもチェリーだと言ってたからなぁ。
(つまり未使用)
男同士の場合、そっち側とあっち側と分かれているらしく、その両方、というタイプもあるのだとか(チャンミン救出に向かう電車の中で、ネット検索で仕入れた情報による。検索窓に羅列された単語に信じられない気分になった)
気取ったレストラン。
レタスとキャベツしか知らない俺にとって、初めて見る色と形の葉っぱのサラダは、緊張を強いられるメニューだった。
彼女は(ひとつ前の恋人)、珍しくもなんともないわといった風に、フォークに刺した葉っぱを口に運んでいる。
俺はと言えば、クセのある香味や苦味のある葉っぱに、「大して美味いものじゃないな」と思った。
食事の後、俺の部屋でDVDを観る予定になっていた。
彼女はきっと、アレするつもりでいるだろう。
俺は...どうさりげなく、エッチをせずに乗り切れるかで頭を占めていた。
ハグやキス、それから、女の子のアソコに触るくらいはできるけれど、俺自身がパンツを脱ぐのはちょっと...。
香味が強く、近所のスーパーでは手に入らず、珍しい葉っぱは...クセがあり過ぎて、そうバクバクと食べられるものじゃない。
...チャンミンみたいだなと思った。
先ほど、俺と入れ替わりでチャンミンが湯船につかった時のことだ。
湯船の縁をまたぐチャンミンの腰つきが、丸みを帯びているように見えてしまうのは、俺の偏見か?
あのタクシー運ちゃん元彼に、組み敷かれているチャンミンの姿まで妄想してしまった。
そっち側になる男は女の子になりたいんだろうか?と真っ先に思ってしまったのも、偏見なんだろうか?
...ふむ、そうだろうな。
~チャンミン~
ユノの身体は素晴らしかった。
洋服を着ていると分かりにくいけれど、裸になるとよくわかる。
盛り上がったお尻や、頑丈そうな腰にバッチバチに打ちつけられたい。
昨夜のレストランで、僕が想像した以上の身体つきだった。
お腹から太ももへと流れる筋、腸腰筋...名付けてエロ筋!
細身な身体なのにくっきり存在するそれに、僕のあそこの奥がウズウズしだした。
前の方もムズムズしてきたから焦った。反応したところを見せたりなんかしたら、ユノの信頼を失いかねない。
...既に失いかけてるかもしれないのが、今の懸念事項だったりするけど...。
たった1日で、僕の生態を立て続けに披露してきたから、そろそろユノのキャパを越えてしまうだろう。
僕は頭を切り替えるために、ユノの童貞主義に切り込んでみることにした。
「...僕、どうも理解できないんだけどさ。
この子だと決めた子となら、童貞を捧げてもいい、と思ってるんでしょ?
どうして?
ホントは何かあったんでしょ?」
「......」
身体を洗うユノの手が止まった。
「多分...俺は、セックスが嫌いなのかもしれない」
「え?」
「経験したこともないのに、嫌いも何もないけどな。
嫌悪してるところがあるかもしれない」
予想外の回答に、僕は驚いた。
(つづく)
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