ー15年前の3月某日ー
ユノの部屋から帰ってきて、今これを書いている。
頭の中がぐちゃぐちゃだから、ひとつひとつ振り返りながら整理していこう。
【気持ちを落ち着かせるために】
・深呼吸を3回する。
・お風呂に入る。
・ハーブティーを淹れて飲む。
(妹が置いていった)
・
【一昨日に遡る】
ユノの部屋、想像に反してすっきりと片付いていた。
避難する予定だったCCグッズは無し。
(箱ひとつに収まる量まで、思い切って捨てたおかげだ。
ゴミ袋に詰まったそれらは、ゴミ収集日までベランダに置いておく)
・
早速、酒盛りを開始。
レンタルしてきたDVDを観ながら、飲み食いする。
(映画『ラブアクチュアリー』
登場人物19人の恋愛が同時に展開していくもの。
ぱあっと気持ちが明るくなるような、くすっと笑えるような、そんな映画を観たかった)
(※僕は恋バナがとても好き)
笑っているのに目が笑っていないユノが気になった。
・
以前、「元気がないね、どうしたの?」の質問はかわされ、その後も気になってはいたけれど、追求しなかった。
失恋心を引きずる僕のために、ユノは自身の考えや指摘をストレートにぶつけてくれ、僕はそれを素直に受け取っていた。
僕らは打ち解け合った関係に見えるけど、ここで僕は気づいたのだ。
僕らの距離が近づいたきっかけはCCの結婚で、僕らの話題は自然と僕の失恋ネタになってしまう。
失恋相手がCCだと、ユノに打ち明けた以降、口を開けばCCのことばかりだった。
ユノは僕の話にじっと、耳を傾けてくれた。
僕はユノのことをよく知らない。
ここ数カ月の僕は、「CCの結婚」に支配されていて、身近にいてくれたユノを知ろうとしなかったんだ。
ユノは優しい。
率直な物言いをする彼だけど、ちゃんと相手を見ている。
ユノの恋人は幸せ者だと思う。
・
【ユノから聞いた話】
ユノは恋人とうまくいっていないのだとか。
僕がどん底にいた11月頃から、ぎくしゃくとしていたのだとか。
恋人から「別れたい」と告げられ、ユノは「別れたくない」と譲らなかったのだとか。
食い下がった結果、恋人は別れ話を撤回してくれたのだとか。
それ以降ユノは、「いい彼氏」になろうと、恋人に心を尽くした。
高価なクリスマスプレゼントを贈ったのも、そのためだ。
僕は全然、知らなかった。
教えてもらわなかったのではなく、僕が質問しなかっただけ。
・
僕「僕を部屋にあげたりなんかしていいの?
ヤキモチを妬かないかな?
そっか!
ヤキモチ妬いて、ユノを獲られるものか、って焦ったりしてね」
ユノ「彼にヤキモチを妬かせるために、チャンミンを利用してるってことか」
この時のユノの言葉で、恋人が男だとはっきりした。
僕「ユノには助けられてばかりだから、次は僕の番だよ。
僕のことをいくらでも使ってくれていいから」
・
いつ別れ話を蒸し返されるか、ユノは恐れを抱いている。
ユノ「怯えるようになったら、その恋愛は終わりだと言ったことがあったよね?」
僕の場合も似たようなものだ。
CCの結婚相手や結婚生活についての情報が耳に入ることを恐れている。
それを知った時の苦しみも想像できるし、何よりも、CCから離れる理由の決定打になってしまいそうで怖かった。
ユノ「あれは、俺自身について言っていたようなものなんだ」
ユノのためになるのはどちらなんだろう。
応援してあげるべきなのか、
ビクビク怯えて、恋人が何を言い出すのか、顔色を窺うような恋は、あまりいいものだと思えない。
ユノ「いい加減疲れてきた。
でも、別れたくないんだよなあ」
ユノだったらどうしてたかな?と思い返してみた。
失意にくれる僕に、ユノは第3者の視点で考えを述べてくれたり、指摘をしてくれた。
そこには押しつけがましさはなく、判断はあくまで僕にゆだねられていた。
僕はどうしてあげたいんだろう。
・
【23:00頃】
映画を2本観終わり、お風呂を借りた。
入浴を終え部屋に戻ってきた時、ユノは受話器を電話に下ろしたところだった。
ユノはあやふやな表情をしていた。
あまりいい内容の通話じゃなかったようだ。
思わず...とても自然な動きで、僕はユノを抱き締めていた。
ユノも僕に抱きついてきた。
至近距離にユノの顔があった。
思わず...とても自然な流れで、ユノにキスをしていた。
そうせずにはいられなかったんだ。
・
一気に書いて疲れたから、続きは仮眠を取った後にする。
ユノとの関係に大きな変化が訪れた大事な日だ。
ささいなことでも、とりこぼしたくない。
(※僕らが初めて寝たのは、僕の部屋だったとずっと思いこんでいた。
実際はユノの部屋だったのか...)
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