フィニッシュを迎えた密会カップルが、下半身の片付けと身だしなみを整え終えるのを、俺たちはじっと待ち続けた。
幸い彼らは、照明をつけずにコトを済ませてくれた。
照明を点けたら即、俺たちの存在は大バレだ。
途中、「もう駄目だ」と観念したのは、 床の間に置かれたティッシュペーパーを取りに、男が部屋を横切った時だった。
こんもり膨らんだ俺たちにけつまずいたのだ(つまずいて当然だ)
(もはやコントの世界)
フィニッシュを迎えたばかりで意識ふわふわ、足元がおぼつかなかった。
加えて、早くこの部屋を出なければと焦りから、そこだけこんもり膨らんだ布団の不自然さに気づかずにいてくれた。
ドアが閉まる音から1分待ち、彼らが戻ってこないことを確認してから、俺は布団を蹴っ飛ばした。
「危なかった~!」
隣の布団に大の字になると、冷えた布団が気持ちよかった。
俺は立ち上がり部屋の照明を付け、乱れに乱れた浴衣を整えた。
俺のアソコについては、けつまずかれた時の驚きでしゅん、となってしまっていた。
「チャンミン?
起きろよ、くじ引きが待ってる」
チャンミンの肩を揺すったが、彼はうつぶせ寝のままでいるじゃないか。
「...ユンホさんは先に行っててください。
遅れて向かいますから」
布団に顔を伏せたまま、もごもごつぶやいている。
「?」
「ユンホさんが悪いんです...。
ユンホさんの責任です」
「何が?」
チャンミンの言葉は意味不明、会場では実行委員が待っている、俺は彼の帯をつかんで引き上げようとした。
「やだ、やだやだ!」
渾身の力で引き剥がされるまいと、抵抗するチャンミンだった。
「起きろ!
行くぞ!」
「ユンホさんの鈍感!」
チャンミンはむくりと起き上がると、近くの枕を抱きしめた。
「何が!?」
「ユンホさんが悪いんです!」
ぷうっと頬を膨らませ、ぷいっとそっぽを向いている(か、可愛い...)
「同じオトコでしょう?
分かんないかなぁ~?」
「?」
「そ~んなんじゃモテませんよ。
歴代の彼女たちから、『ユンホったら鈍感!』って」
(ふふん)
チャンミンが何を言ってるのさっぱりだけど、過去の恋愛事情を探る手にはのらない。(嫉妬したチャンミンのご機嫌とりは大変なのだ)
「『たち』って程、いないよ」
「ホントですかぁ?」
「ホントホント。
片手もいないよ」
チャンミンは目を糸のように細め、疑わし気に俺を見ている。
「話が反れてるぞ。
ここから動きたくないのなら、先に行ってるぞ。
くじ引きの棒を貸せ。
俺が代わりに進行しといてやるよ」
チャンミンに向かって、手をひらひらさせたら、パチン、と叩かれた。
「ユンホさんはどうして大人しくなってるんですか!」
「?」
「逞しい腕と胸で抱きしめられたりなんかしたら...。
ユンホさんの男根を押し付けられたりなんかしたら...」
(だ、男根!)
ふすまがガタっと開く音がした。
誰か来たと振り向いたその瞬間、
「勃起しちゃって大変なことになってるんですよ!」
「チャンミン、しーーーー!」
部屋の間口に立っていたのは、同室のヲタク君の一人だった。
「......」
彼は固まった俺たちを一切無視して、バッグからコミック本を出すと小脇に抱え、部屋を出て行ってしまった。
(つづく)
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