私は高校教諭、30代独身、腐男子である。
ちなみに私の恋愛対象は女性だ。
腐趣味についてこられる、又はこの嗜好を尊重してくれる女性に限られるため、只今、彼女無しである。
日々刊行されるBLコミック、小説に囲まれ、十分幸せに暮らしているので、彼女が欲しいと思ったことはない。
...というのは嘘で、
私も学生時代は、彼女が居た方がいいのでは?と、焦っていた。
世界は腐に満ちていると気付きはじめた頃、腐ウォッチングという趣味が加わった。
目に映るありとあらゆるものから、BLのかほりを嗅ぎ取るのだ。
私のお眼鏡に叶う対象者は滅多に現れない。
ところが今年度は、久方ぶりの大ヒット。
バッドの芯が捉えたボール。
かきーーーん!!
珠と棒。
とんでもない逸材と出会ってしまった。
攻め(設定)のユノ。
ウケ(設定)のチャンミン。
見目麗しい彼らのおかげで、近々腐王(ぶぅうぉ)にレベルアップできそうだ。
・
小テストの時間。
教室は、カリカリと鉛筆が紙を引っかく音のみ。
私は教卓に頬杖をついて、もの思いにふけっていた。
ユノ×チャンミンの初体験はいつだろうか?と、考えていた。
(設定として)
高校1年生は...早い。
高校3年生...遅い。
やはり、高校2年生...それも、夏休み!
...と思いかけたが、即却下。
高校2年生の夏休みとは、男女カップルの第定番。
ユノ×チャンミンが、典型的な流れで脱童貞、脱処女してもらったら、腐夢がない。
放課後の教室も萌えるが、初心者にはややハードルが高い。
中間テストの前日、試験勉強をどちらかの部屋でやることになった日がよかろう。
「ここの問題分からない」
「え?
どこ?」
「ここ」
「あ~、それはね」
ユノのノートを、チャンミンは覗き込み、ユノのうなじにチャンミンの吐息がふきかかる。
驚いたユノは振り返り、二人の唇はぶつかりそうになり...ぶつかった!!
抱き合うまでは、どちらが上になるのか二人はあやふやだった。
チャンミンをからかいたくて仕方がないユノは、尻を突き出して煽るのだ。
ユノに応えようと、チャンミンはズボンをおろし下着からぽろん、と出した。
ねじ込もうとするチャンミンを、ユノは
「ばーか。
お前は俺に抱かれるんだよ」
と、チャンミンを下に組み敷いて...。
...うむ。
ユノの台詞がキザ過ぎる。
「抱く」の言葉がくさい。
高校生が言う台詞じゃない。
「抱いてやるよ」
「抱きつぶしてやるよ」
ではなく、
「ヤろうぜ」
「ヤりまくろうぜ」がリアルだな。
・
そろそろ、仕事に戻ろうかと現実世界に戻った。
「ん?」
ユノが隣のチャンミンの方を見ている。
すると、チャンミンも「ふふっ」と笑みのお返し。
「昨夜は気持ちよかったな」
「うん」
「好きだよ」
「僕も」
視線で会話をしているホミンの二人。
萌える...。
チャンミンはテスト用紙をユノに見えるよう、机の端に寄せている。
『休み時間、コンピューター室で』
と、メモ書きがされているのだろう(妄想)
ユノはこくり、と頷いている。
答えを見せているようにしか見えないが、
カンニングにしているようにしか見えないが、
これはカンニングじゃない!
二人の愛のセレナーデ。
邪魔をしたらいけない!!
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