(10)腐男子です

 

 

私は高校教諭、30代独身、腐男子である。

 

ちなみに私の恋愛対象は女性だ。

 

腐趣味についてこられる、又はこの嗜好を尊重してくれる女性に限られるため、只今、彼女無しである。

 

日々刊行されるBLコミック、小説に囲まれ、十分幸せに暮らしているので、彼女が欲しいと思ったことはない。

 

...というのは嘘で、

 

私も学生時代は、彼女が居た方がいいのでは?と、焦っていた。

 

世界は腐に満ちていると気付きはじめた頃、腐ウォッチングという趣味が加わった。

 

目に映るありとあらゆるものから、BLのかほりを嗅ぎ取るのだ。

 

私のお眼鏡に叶う対象者は滅多に現れない。

 

ところが今年度は、久方ぶりの大ヒット。

 

バッドの芯が捉えたボール。

 

かきーーーん!!

 

珠と棒。

 

とんでもない逸材と出会ってしまった。

 

攻め(設定)のユノ。

 

ウケ(設定)のチャンミン。

 

見目麗しい彼らのおかげで、近々腐王(ぶぅうぉ)にレベルアップできそうだ。

 

 

小テストの時間。

 

教室は、カリカリと鉛筆が紙を引っかく音のみ。

 

私は教卓に頬杖をついて、もの思いにふけっていた。

 

ユノ×チャンミンの初体験はいつだろうか?と、考えていた。

(設定として)

 

高校1年生は...早い。

 

高校3年生...遅い。

 

やはり、高校2年生...それも、夏休み!

 

...と思いかけたが、即却下。

 

高校2年生の夏休みとは、男女カップルの第定番。

 

ユノ×チャンミンが、典型的な流れで脱童貞、脱処女してもらったら、腐夢がない。

 

放課後の教室も萌えるが、初心者にはややハードルが高い。

 

中間テストの前日、試験勉強をどちらかの部屋でやることになった日がよかろう。

 

「ここの問題分からない」

 

「え?

どこ?」

 

「ここ」

 

「あ~、それはね」

 

ユノのノートを、チャンミンは覗き込み、ユノのうなじにチャンミンの吐息がふきかかる。

 

驚いたユノは振り返り、二人の唇はぶつかりそうになり...ぶつかった!!

 

抱き合うまでは、どちらが上になるのか二人はあやふやだった。

 

チャンミンをからかいたくて仕方がないユノは、尻を突き出して煽るのだ。

 

ユノに応えようと、チャンミンはズボンをおろし下着からぽろん、と出した。

 

ねじ込もうとするチャンミンを、ユノは

 

「ばーか。

お前は俺に抱かれるんだよ」

 

と、チャンミンを下に組み敷いて...。

 

...うむ。

 

ユノの台詞がキザ過ぎる。

 

「抱く」の言葉がくさい。

 

高校生が言う台詞じゃない。

 

「抱いてやるよ」

「抱きつぶしてやるよ」

 

ではなく、

 

「ヤろうぜ」

「ヤりまくろうぜ」がリアルだな。

 

 

そろそろ、仕事に戻ろうかと現実世界に戻った。

 

「ん?」

 

ユノが隣のチャンミンの方を見ている。

 

すると、チャンミンも「ふふっ」と笑みのお返し。

 

「昨夜は気持ちよかったな」

 

「うん」

 

「好きだよ」

 

「僕も」

 

視線で会話をしているホミンの二人。

 

萌える...。

 

チャンミンはテスト用紙をユノに見えるよう、机の端に寄せている。

 

『休み時間、コンピューター室で』

 

と、メモ書きがされているのだろう(妄想)

 

ユノはこくり、と頷いている。

 

答えを見せているようにしか見えないが、

カンニングにしているようにしか見えないが、

これはカンニングじゃない!

 

二人の愛のセレナーデ。

 

邪魔をしたらいけない!!

 

 

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