~チャンミン~
「俺もいっただきまーす」
ユノは、もう一つの袋から続々と食べ物を取り出し始めた。
「えっ...これ全部ユノが食べるの?」
ユノの体型を見、ずらり並んだ食べ物を見、絶句してしまった。
「馬鹿もん!
んな訳ないだろ!
いろんな種類があって迷ったから、全種類買ってみたまでのことよ」
最後に缶入りのカクテルが出てきた。
「おっと、お前は飲んじゃいかんよ、風邪なんだから」
ユノは手を伸ばす僕の手を、ピシャリと叩いた。
「痛いよ、ユノ」
僕はがっかりして、ストロベリーヨーグルトを選ぶ。
仕方なさそうにヨーグルトを食べる僕を見て、
「余った分は、明日のチャンミンの朝食だ」
「えー、残り物...」
「ままま、拗ねなさんな。
あー、うまい!」
ユノは唐揚げをかじって、カクテルで流し込んでと、美味しそうに消費していく。
知らず知らず、ごくごくと飲むユノの白い喉から目が離せない。
「チャンミン」
ユノが僕から目をそらし、ヨーグルトをすくう僕のスプーンを見つめている。
「はい」
「さっきはごめんね。
その~、ブツを見ちゃって」
「うっ」
僕は30分前のハプニングを思い出して、一瞬でカーっと顔が熱くなる。
今度は、真面目な表情で僕を見た。
「でも、見てないからな!」
「最初に『見た』って言ったじゃないか」
(こっぱずかしい姿を見られて...あぁ、あの時を消し去りたい)
「だーかーらー、見たけど、見なかったことにしてやる、ってことよ」
(どうして、ユノはケロッと涼しい顔でいられるんだよ?)
ユノはカクテルを飲み終えて、ゼリー飲料のキャップを開けている。
「俺に記録されたメモリを消去してやった、って意味だよ」
「意味わかんないよ」
「照れるな照れるな。
可愛いやつだなぁ、チャンミン」
ユノはニヤニヤ笑っている。
「女の前で裸になるのなんて、何度もあるくせ...」
と言いかけて、ユノはパッと手で口を押さえた。
「おっ、もうこんな時間だ!」
ユノはリストバンドを見て、勢いよく立ち上がると、
「そろそろ帰るね。
ちゃんと薬飲んで、おりこうさんしてるんだぞ」
バッグを持って玄関の方へスタスタ行ってしまう。
その間、僕は何も言えず、(多分)真っ赤な顔をして、床に座ったままだった。
「チャンミン」
玄関へ向かう廊下の角から、ユノは顔を出した。
「何?」
「データがうまく消去できなくて、思い出すこともあるかも、ぐふふ」
「ちょっ、ユノ!」
わっはっはと笑いながら、「おやすみぃ」と言い残してユノは帰ってしまった。
(なんだよ、からかって)
僕は頭を抱えて、髪をぐちゃぐちゃ混ぜる。
「はぁ...」
まったく、ため息ばかりついてる一日だった。
ハプニング続きで、頭がついていけないよ。
はたと、大事なことを3つ思い出した。
その1
ユノにお礼を言うこと。
その2
ユノはどうやって、僕の部屋に入れたのか追及すること。
その3
ユノから借りたマフラーを返すこと。
(つづく)
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