(27)時の糸

 

 

~ユノ~

 

 

チーズが焦げる、いい香りが漂ってきた。

 

「ユノ!

火傷するから、そこどいて!」

 

チャンミンの手には、タオルに包んだ焼きあがったグラタン。

 

グツグツと音をたてるマカロニグラタン。

 

一生懸命、俺をもてなそうとしているチャンミン。

 

テーブルに並べられた、2人分には多過ぎるお皿、料理とお酒。

 

何もかもに...感動するんですけど...。

 

 

・

 

 

「えーっとですね」

​

​ダイニングテーブルについたチャンミンは、あらたまった様子で言う。

​

「今日は、ユノへのお礼として用意しました」

​

チャンミンは、グラスにビールを注いでくれる。

​

「ありがとう」

​

磨き込まれたグラスに、チャンミンの性格がうかがえた。

​

「さぁ、食べよう」

​

「そうだね」

​

乾杯のつもりでクラスをチャンミンのものと合わせようとしたが、チャンミンは既にグラスを空けていた。

​

(もしか、乾杯を知らんのか?)

​

「食べてよ、ユノ」

​

「う、うん。

ありがとう」

​

俺も一気に飲み干して、テーブルに並べられた料理を見渡した。

​

(なんというか...圧巻というか...)

​

10種類はあるだろう、チーズの盛り合わせ。

​

巨大なガラスボウルの山盛りのサラダ。

​

直径30センチはあるレアチーズケーキ。

​

積み上げられた、テニスボールサイズのおにぎり。

​

そして、冷たい食べ物ばかりの中、湯気を立てるグラタン。

​

​(一生懸命、準備したんだろうなぁ)

​

「...おかしかった?」

​

チャンミンは、眉を下げて不安そうな表情だ。

​

(我が子の成長を見守る親の気分だよ、全く)

​

「ぜ~んぜん!

いっただきまーす」

​

サーバースプーンで、チーズがとろけるグラタンをすくって、取り皿に盛った。

​

「火傷するから、気を付けて...。

ほらっ、言ったそばから!」

 

「あちちち」

​

「ユノは大食らいだろうから、沢山用意したんだ」

​

「あのなー」

​

「野菜も食べて。

ユノの年こそ、ビタミンを摂らないと」

​

「なんだと!」

​

「おにぎりも。

初めて炊いたから、やわらかいかもしれない」

​

「中身は?

......え...これ全部、塩むすびなの?」

​

「ワインを開けようか?」

​

「いいねー」

​

俺も相当飲み食いしたが、チャンミンもよく食べ、よく飲んでいる。

​

見ていて気持ちがいい食べっぷりだ。

​

「そろそろデザートはどう?

このケーキはレビューがよかったから注文してみたんだ」

​

「ごめん...チャンミン。

...限界...腹がはち切れそう」

​

「意外にユノは、小食なんだ」

 

「んなわけないだろ。

どう見ても、5人前以上はあったぞ」

​

「じゃあ、後で食べよう」

​​

チャンミンはケーキのお皿にラップをかけると、冷蔵庫にしまった。

​

(ニコニコしてて、楽しそう)

​

​楽しそうなチャンミンを見ていると、俺も勿論、楽しい。

 

 

(つづく)

 

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