~チャンミン~
目を開けると、ユノと目が合った。
ユノの真っ黒な瞳に映る僕と目が合う。
(わっ!)
彼のうなじから手を離して、身を引いた。
(僕は...何をしたんだ?)
絶対に、ユノは「馬鹿野郎!」って怒鳴るに違いない。
(もしかしたら、平手打ちを食らうかもしれない)
固唾をのんで、ユノを見守った。
(あれ...?)
口を両手で覆ったユノは、パタンとソファの背もたれに倒れた。
「......」
ユノは、そのまま身動きしない。
「......」
「...ユノ?」
ユノはソファの背もたれに頭をもたせかけて、天井をあおいだ格好のままだ。
「ごめん」
不安になった僕はユノの横に座って謝った。
「ホントに、ごめん」
ユノの瞳がキョロリと動いて、僕と目が合う。
「えっと...そんなつもりはなくて...」
へどもどする僕。
(やっぱり、殴られるかもしれない)
「ユノ...?」
ソファの上に膝立ちをして、ユノを見下ろした。
「チャンミン」
「う、うん!」
(怒ってるよな......ん?)
まだ口を覆ったままのユノの瞳が三日月の形になった。
「チャンミン!」
「うわっ!」
名前が呼ばれた直後、僕の頭はユノの腕にタックルされていた。
「ちょっ...!」
僕の首に巻かれたユノの腕は力強い。
「また、僕を絞め殺すつもりか?」
「......」
髪をぐちゃぐちゃにされた。
「ストップ!」
僕の頭はユノの脇に挟まれているわけで、押し付けられた固い胸を意識してしまう。
(参ったなぁ...)
「ストップだって......って、わっ!」
いきなりパッと解放された僕は、反動でソファから転げ落ちてしまった。
「ったいなぁ!」
「おい、チャンミン君!」
見上げると、ユノは腕を組んで仁王立ちしている。
「なんだよ?」
ふくれて答える。
ユノに振り回されっぱなしの僕。
「ごめん、とはどういうことだよ!」
「えっ?」
「ごめんとはどういうことだよ!」
僕には、ユノの言葉の意味が分からなかった。
「それは...ユノに、悪いことしたなって」
「ほほぅ」
「だから、ごめん」
「悪いことしたって、チャンミン君、何しちゃったの?」
「ぐっ」
(口に出して言えないよ、そんな恥ずかしいこと)
「悪いことって、な~に?」
ユノは小首を傾けて、にっこり笑った。
「教えて、チャンミン?」
「ユノに...その...キ、キスしちゃって...悪かったなって」
ユノはニヤニヤ笑っている。
(ユノはまた、僕をからかっている!)
「ねぇ、チャンミン」
仁王立ちしていたユノは、再び僕の隣に座った。
「後で謝るくらいなら、キスなんてするな!」
「え?
どういう意味?」
(つづく)
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